デベロッパーは消費税を預かるだけ

消費増税直前となったこの時期は、駆け込み需要が発生する可能性が再び高まっていると言えるだろう消費増税直前となったこの時期は、駆け込み需要が発生する可能性が再び高まっていると言えるだろう

年が改まり、正月気分もあっという間に抜けて4月1日の消費税率の引き上げまで残すところ約2ヵ月となった。
巷間言われる駆け込み需要は、昨年9月末の経過措置期限を迎えた段階で一区切りついた印象もあるが、住宅地価および資材価格、住宅ローン金利の“トリプル高”が今後現実のものとなると言われる中、マンションや戸建の販売価格も上昇することがほぼ確実視されており、さらに増税分だけ支払総額は上昇するから、消費増税直前となったこの時期は、駆け込み需要が発生する可能性が(同時に4月以降の反動による需要後退の可能性も)再び高まっていると言えるだろう。

忘れてならないのは、消費税分マンション価格なり住宅価格が上昇しても、その増税分は国庫に納められるものなので、マンションデベロッパーやハウスメーカーの「売上」ではないということだ。したがって、様々コストが上昇するので最終価格が上昇することがあっても、供給サイドは消費税はあくまで「外税」という感覚であって、我々消費者が共有する、総額が上昇する=「内税」という感覚は共有していない。
消費増税よりも地価や資材価格の高騰のほうがよほど頭の痛い問題のはずだ。

駆け込み需要は生活防衛需要である

いずれにせよ、消費増税期に発生する駆け込み需要には、消費者=購入予定者の“少しでも安く不動産を購入したい”という心理が背景にある。
不動産に限らず、結婚式の日取りや車の買い替えなどにも明らかな駆け込み需要が発生しているし、3月31日には鉄道やバスの定期券売場に長蛇の列ができることだろう。消費増税は生活のコストを3%(以上)確実に引き上げるものだから、消費者が少しでも安くと考えるのは当然のことなのである。

つまり、駆け込み需要は生活防衛のための需要でもあるのだが、この点を軽視すると、単に駆け込み需要後の反動で売れ行きが一時的に悪くなるだけ、とのインプレッションを持ってしまい、今後の不動産に対する潜在的な需要を読み誤ることになり兼ねない。
地価や資材価格が上昇すれば、それを根拠に当然のごとく供給サイドは物件価格を上げるが、実際に2013年後半から目に見えて上昇し始めている新築マンション価格について、購入予定者が価格レンジの変化に「どこまで&いつまで追従可能か」という命題に対する回答は用意されていない。

2007年に発生した“ミニバブル”期には何が起きたか

一つの参考になるのが、2007年に“新価格”“新・新価格”と評された新築マンション価格の急騰期における販売状況だ。
2007年のミニバブル期はファンドバブルとも言われるように、海外からの投資マネーが短期間に国内の不動産に流入し、価値以下で販売されている物件を購入しては売り抜けるという、不動産が保有していた価値を逆手に取る方法で収益を上げ、利用価値が高いはずの都心一等地の不動産価格が高騰したのだが、この地価の上昇に合わせてマンション価格も2006年から10%を超える上昇率を記録した。
この急激な価格上昇によって、マンション購入のハードルが上がった一般の給与所得者層は、立地条件を郊外方面へと譲ることで購入可能な物件を探す・・・という行動につながるというシナリオが供給サイドのコンセンサスとなり、その目論見通りに郊外にマンションを次々に建設したのだが、折悪しくサブプライムローン問題に端を発する経済環境の先行き不透明感によって、マンションの価格上昇も短期間で終焉を迎え、結果的に新興デベロッパーなどの相次ぐ企業倒産に至ったのは記憶に新しい。

現在でも、地価の上昇を見越して郊外エリアでのマンション開発を計画するデベロッパーがあるが、ニーズが郊外方面まで拡散するには景気拡大が継続することが大前提で、残念ながら現段階でそれを確信するに至る材料はないと言わざるを得ない。

購入者の財布の紐を緩めるには、懐を温めるしかない

経団連が、今年の春季労使交渉での賃金水準を底上げするベースアップを個別企業の判断に委ねて容認すると公表したことは、一つの明るい兆しと捉えることができるが、詰まるところ、マンション市場が短期間で再びシュリンクするか、持続的な拡大期を迎えるかは、偏に国民所得の拡大に掛かっていると言えるだろう。
国民一人あたりの総所得を年3%超伸ばし、10年後には150万円以上増やすという安倍政権の目標(※)が絵空事に終わらず、マンションの購入希望者が安心して財布の紐を緩められるように、今後も消費増税期の経済環境の変化を見守っていく必要がある。

購入者と供給サイドのギャップ、それは不動産価格を巡る認識のギャップである。アベノミクスで景気が良くなるから財布の紐を緩めて良いと考えている消費者は決して多くない。

※ 国民総所得は国民および企業が年間に国内外で生み出す付加価値(=収益)の総額で、これを人口で割り戻すと一人あたりの総所得になる。国民総所得には企業収益も含まれているので、「世帯」の年収が年3%、10年で150万円増えることにはならない。

2014年 02月03日 16時38分