まずは住宅のエネルギー消費量から

住宅の最近の話題は、なんと言ってもスマートハウスである。地球環境のためにも、高断熱・高気密の住宅を進めようとしている。
でも、それって本当にどれだけ効果があることなんだろうか?
もしかしたら高断熱・高気密で地球環境に貢献するというのは、幻想かもしれない。もちろん環境を意識することは、今の時代に大切であることは承知の上である。
ちょっとだけ、冷静に分析してみようと思った。

最初のデータは、日本全体のエネルギー消費の比率をCO2の排出量で見る。産業によるものが80%あり、一般家庭からが残りの20%とある。5分の1が家庭からと考えると、結構大きなものであるから、当然対処を考えておく必要がある。

ところが、驚くのは家庭の消費のうち、6%が自家用車であるということだ。家はなくなるわけにはいかないが、車を減らすことはできる。また、燃費が倍の車を選べば、全体では3%もの貢献になる。はっきり言って、住宅の問題に取り組むよりも話しは早そうだ。

単純な引き算をして、住宅が影響しているのは全体の中の14%となる。

消費エネルギーは、家庭が20%。そのうち自家用車が6%もある消費エネルギーは、家庭が20%。そのうち自家用車が6%もある

どれだけ、冷暖房が影響するか?

では住宅の中での、消費エネルギーはどうなっているのか。大きくは3つの要素に分けられる。冷暖房と給湯と照明・家電などの消費である。この中の冷暖房は、ちょっと贅沢に感じて、たくさん消費しているようなイメージがある。
が、実はそんなことはない。

日本の一般的な家庭のデータでは、給湯に40%、照明・家電に35%、冷暖房の消費は残りの25%となっている。つまり、冷暖房が一番消費としては少ない。もちろんこれらの比率は、地域によっても違いがある。寒い地域では暖房の比率が上がり、さらに入浴の習慣がない海外では給湯の比率が下がる。北欧では暖房に80%のエネルギーを消費している国もある。平均的な日本は過ごしやすい温暖な国だということだ。

これを全体の割合で計算してみる。住宅分の14%に対する25%は、3.5%。車の燃費が倍になることと、住宅でまったく冷暖房をつかわないことが、日本では似たような効果ということだ。燃費が倍の車は現実的に出てきているが、住宅の熱性能を高め消費エネルギーをコントロールしてもゼロにはできない。

日本のエネルギー消費で1番が給湯である。これはやはり入浴の習慣があるからであろう。風呂に入った後の湯は捨てるだけであり、それは熱のエネルギーを捨てているのと同じだ。

日本では給湯が家庭エネルギーの40%。思わぬエネルギーを毎日捨てている日本では給湯が家庭エネルギーの40%。思わぬエネルギーを毎日捨てている

日本の家電の技術力はすごい!

照明も日本の家庭では、天井に大きな照明器具がつき、夜中でもコウコウと明るくする家が多い。欧米のようにスタンドや補助ライトを使う習慣もない。さらに、家電製品が多いのも日本の家庭の特徴である。しかもそれらの多くは、リモコンで動き待機電力を消費している。
だからこそ、冷暖房のエネルギーよりも、給湯や照明・家電にエネルギーを使っているのだ。これらの生活習慣を変えない限りは、大きな削減はできないということになる。

ところが、日本人はいわゆる環境技術力を得意にしている。
たとえば給湯はヒートポンプ式の給湯器を使うと、3~4倍の効率でお湯が沸かせるようになる。単純に言えば、ガスなどの燃焼を使って熱っするのではなく、圧力差を利用して大気中の熱を集めてお湯を沸かす。
照明もLEDが浸透しはじめ、同様に家電製品も競うようにして消費電力を下げている。以前に比べたら格段の差である。給湯と照明・家電を合わせて住宅全体の75%を占める、この部分を半減させることが一番の環境貢献である。
この対策には、多くの有能な日本の家電メーカーが集まって取り組んでいる。しかも、これらは新築住宅だけではない。既存住宅でも、給湯器を変え、家電製品を変え、照明器具を変えれば達成できることだ。住宅よりも寿命が短いこれらの製品は、数年もすれば切り替わるであろう。

結局、家庭の省エネルギー化は、電機メーカーが背負っている結局、家庭の省エネルギー化は、電機メーカーが背負っている

スマートハウスは大したことはない!

断熱材で熱を伝えないために使われている空気を、無理に温め冷やしているのが今の冷暖房。本当に正しいのだろうか?断熱材で熱を伝えないために使われている空気を、無理に温め冷やしているのが今の冷暖房。本当に正しいのだろうか?

一方、高断熱・高気密のスマートハウスはどうだろうか。省エネルギー性能を高らかに謳っているが、家電に比べたら高いコストがかかる。それでいて半減させるのは、とても現実的ではない。昔の民家のようなすきま風だらけの家や、断熱材もろくに入っていない家と比較しているのではない。あくまでも似たりよったりの新築住宅での比較である。その上、きわめて少ない一部の新築分しか環境には貢献しない。
しかも家そのものの性能よりも、家電と同じように冷暖房機器を開発することでも効果が発揮される。実際に省エネ大賞のエアコンが広告され、販売されている。省エネ効果の半分は、この機器に起因するものではないのか?

これらを総合すると、高断熱・高気密のスマートハウスは、家庭部門の最も効果が薄いところに、高いコストをかけて推進していることになる。費用対効果で考えれば、効果が高くコストが安いところから実施するのが鉄則である。国もさらに推進しようとしているが、高断熱・高気密の優先順位は最も低いと言わざるを得ない。住宅メーカーがやっきになって、まるで先端事業のようにして進めるようなことでもないのだ。

冷静に分析すると、このような結果となる。

メーカーのスマートハウスのイメージには、もう飽きた!

ただし、たとえわずかであっても、小さな努力を積み重ねることが美徳であることは間違いはない。特に環境問題というのは、そういうものである。
そして美意識をもって生きている人が、日本人に多いことも誇りに感じる。冷静な分析よりも、少しでも自分が環境に貢献しようと決意して、省エネ住宅を建てる人には敬意を表する。また、太陽光発電は、住宅の性能以前の問題であり、エネルギーを創るのであるから検討の価値はある。たとえわずかであっても、原発を含めた日本のエネルギー問題への一助になる。

しかし、時流だからと言って、環境云々とかエコ云々と喧伝する住宅メーカーはカッコ悪いのではないだろうか。太陽光発電だって、開発しているのは電気メーカーである。その上、どこの建設会社でもやろうと思えばできることがほとんどだ。まるで手柄だけを自分のものにしようとする、どこかのドラマの嫌な上司みたいだ。

そろそろ「スマートハウス」のかけ言葉は聞き飽きた。冷静な消費者には、もうすでに、商売のネタにはならない。それしかテーマを思いつかない時代遅れの企業のように見える。
ささいな性能の差を誇張するよりも、住まいづくりには取り組まなければならないことがもっとありそうだ。

住宅メーカーだからこそできる、「おうちのはなし」をもっとして欲しい住宅メーカーだからこそできる、「おうちのはなし」をもっとして欲しい

2013年 10月03日 09時57分