住宅購入予定の一般消費者にとっても耳寄りな情報が満載

消費税増税後の住宅市場に関して、3人の業界に精通した専門家によるパネルディスカッションが行われた消費税増税後の住宅市場に関して、3人の業界に精通した専門家によるパネルディスカッションが行われた

不動産市場の最新情報を知り尽くす豪華ゲストによる講演やHOME’Sの今後の戦略の共有などが行われた「HOME’S EXPO」が11月7日開催された。そのプログラムのひとつであるパネルディスカッション「消費税増税における住宅購入への影響と、今後の市場展望に関して」をレポートする。本来は不動産・住宅業界関係者向けのものだが、近々に住宅購入予定の一般消費者にとっても耳寄りな情報が満載だった。以下にパネルディスカッションに参加したメンバーを紹介する。

【パネラー】
リニュアル仲介株式会社 代表取締役 西生 建氏
株式会社東京カンテイ 市場調査部 上席主任研究員 中山 登志朗氏
株式会社リブ・コンサルティング 住宅不動産事業本部 不動産・リフォーム事業部 事業部長 小林 大輔氏
【ファシリテーター(司会進行)】
株式会社ネクスト HOME’S総研所長 島原 万丈氏

「景気の上昇」「増税」「空き家問題」「人口減」。今後の住宅市場は?

株式会社ネクスト HOME’S総研所長
島原 万丈氏。1989年株式会社リクルート入社。リクルートグループ内外のクライアント企業のマーケティングリサーチおよびマーケティング戦略のプランニングに携わる。2013年3月リクルート退社。同年7月株式会社ネクストでHOME’S総研所長に就任株式会社ネクスト HOME’S総研所長 島原 万丈氏。1989年株式会社リクルート入社。リクルートグループ内外のクライアント企業のマーケティングリサーチおよびマーケティング戦略のプランニングに携わる。2013年3月リクルート退社。同年7月株式会社ネクストでHOME’S総研所長に就任

はじめにファシリテーターの島原氏から現在の住宅市場環境の解説があった。アベノミクス効果で日本経済は好調。住宅(マンション・戸建て)の着工件数も13カ月連続で伸びている。
「今年度は100万戸を超える見込みです。業界では悲願の水準に届きそうだ! と大変盛り上がっています」(島原氏)

とはいえ、前回97年の消費税増税時は、駆け込み需要の反動減が激しかった。
1996年は前年比プラス11.8%
1997年は前年比マイナス15.6%
1998年は前年比マイナス13.6%
そこで政府は住宅ローン減税やすまい給付金といった反動減対策を行う。

一方で空き家問題は深刻。総住宅数5759万戸のうち、空き家は756万戸となっており、空き家率は13.1%と過去最高になっている(平成20年住宅・土地統計調査より)
対策として国土交通省は中古住宅市場の倍増プロジェクト(20兆円)を掲げている。
「さらに人口も減っていく傾向にあります。このような複雑な状況の中で、今後の住宅市場は形成されていくのです」(島原氏)

今後の住宅市場を左右するのは「低金利」が続くか否か

株式会社東京カンテイ
市場調査部 上席主任研究員
中山 登志朗氏。不動産シンクタンクの市場分析担当責任者として新聞・雑誌・テレビ・ウェブサイトなどに数多くの原稿・コメントを提供株式会社東京カンテイ 市場調査部 上席主任研究員 中山 登志朗氏。不動産シンクタンクの市場分析担当責任者として新聞・雑誌・テレビ・ウェブサイトなどに数多くの原稿・コメントを提供

一人目のパネラーは中山氏(東京カンテイ)。今回の消費税増税のインパクトを、前回増税時(97年)の公示地価の動向や分譲マンション事情との比較などから予想した。

97年との違いは大きく4つ。

1.物件価格が安定している
97年の増税時の公示地価(土地の価格)は下落傾向だった。しかし、最近は2008年のリーマンショック以降横ばい。しかも今年は若干上昇している。
「前回(97年)は、『増税しましたけど物件自体が安くなっているので今の方がお買い得ですよ』と言えました。しかし今回その話は通じません」(中山氏)

2.物件供給量の減少
新築分譲マンションの供給量は首都圏の場合、97年から2000年は10万戸前後。現在は6万戸弱。供給量が減ったのは、世帯数減などで需要も減ったから。その分、都心など条件のいい物件に人気が集中し、売れる物件と売れない物件の二極化が生じている。

3.増税幅の拡大
97年の増税幅は3%から5%の2%。今回は5%から2014年4月の8%で3%、2015年10月の10%で合計5%。当然今回の方がインパクトが大きい。そのため上記の二極化がより大きくなるはず。

4.金利の違い
97年は変動金利で5%前後、現在は優遇金利なら相場で0.77%。

「住宅市場もっとも影響を与えるのは金利です。現状は1%以下と今までの常識ではありえない数字です。ですから『物件価格は増税で上がりましたが、金利が低いので買えますよね』という話ができます。低金利のうちは買い時というのは間違いないでしょう」(中山氏)

プロとしてこれからの住宅・不動産市場で生き残るには

リニュアル仲介株式会社
代表取締役
西生 建氏。1988年株式会社リクルートにて住宅情報事業部に所属。1996年エイム株式会社設立に携わる。同社において2009年2月に「リニュアル仲介ネットワーク」を立ち上げ、2011年11月にリニュアル仲介事業を分社化リニュアル仲介株式会社 代表取締役 西生 建氏。1988年株式会社リクルートにて住宅情報事業部に所属。1996年エイム株式会社設立に携わる。同社において2009年2月に「リニュアル仲介ネットワーク」を立ち上げ、2011年11月にリニュアル仲介事業を分社化

次のパネラーは西生氏(リニュアル仲介)。一般の売主から買主の橋渡しとなる仲介業を営む立場から、今後生き残る不動産会社像を語った。

人口が減る一方で空き家が増える中、国土交通省は国家プロジェクトによって中古・リフォーム市場を倍増(20兆円)するといっている。
「私たち不動産のプロにとってこんなありがたいプロジェクトはありません。中古住宅の価値が下がることは資産のデフレということです。資産のデフレは国力の低下に直結します。これを防止することが我々の仕事です」(西生氏)

そのために行うべきことは、「リフォーム」「インスペクション」「耐震補強」「瑕疵保険」の紹介など業務範囲を広げて中古住宅の資産価値を上げることだと語った。

さらに今後生き残る不動産会社の条件として西生氏は、
「中古住宅が余る中、『家は一生の買い物』と言っていてはいけません。生活の変化によって何度でも住み替えていただく。そのためには、なによりも資産価値の下がりにくい(立地の良い)住まいを提案することが重要です」
と力強く述べた。

不動産業界が短期的・長期的に着手すべきこと

株式会社リブ・コンサルティング
住宅不動産事業本部 不動産・リフォーム事業部 事業部長
小林 大輔氏。国際公認経営コンサルティング協議会認定マスター・マネジメント・コンサルタント。
社員数10人の工務店から、上場している会社まで支援対象は幅広く、業績成果にコミットしたコンサルティングスタイルは、経営者から一般社員まで高い支持を集めている株式会社リブ・コンサルティング 住宅不動産事業本部 不動産・リフォーム事業部 事業部長 小林 大輔氏。国際公認経営コンサルティング協議会認定マスター・マネジメント・コンサルタント。 社員数10人の工務店から、上場している会社まで支援対象は幅広く、業績成果にコミットしたコンサルティングスタイルは、経営者から一般社員まで高い支持を集めている

最後のパネラー小林氏(リブ・コンサルティング)は、最近の大手不動産会社の戦略をもとに、今後の不動産業界において着手すべきことを提言した。

仲介大手の取引件数が大幅に伸びている。特に三井不動産販売と住友不動産販売は年間1000件以上の増。
また、大手ハウスメーカーも既存客に対する営業で、中古住宅市場の囲い込みを開始。
さらに大手パワービルダーは、今まで分譲住宅を建てるのみで、販売は中小の他社に任せていたが、値引き競争から脱却するために会社統合などを行い、自社で販売部隊を持とうとしている。
つまり不動産市場は大手の寡占化が進んでいる。

「このような中で、今まで新築物件を中心に取り扱っていた中小の不動産・住宅会社が今後どこに目を向けていけばいいかというと、ひとつキーワードになるのが“買い手目線の商品開発”になると思います」(小林氏)
具体的には中古住宅、リフォーム、保険など不動産派生事業への業務拡大だ。

このような話を受け島原氏は
「長い目で見て住宅市場は中古が中心になるのでしょうか」
とパネラーに質問した。それに対し中山氏は、
「新築市場は2015年10月の増税以降冬眠状態に入るはずです。その後は中古住宅が動き出すと思います」
と回答した。

プロのこのような意見から増税後の住宅は、
・低金利が続くうちは「買い」
・中古住宅にも注目
といったことが言えそうだ。

2013年 11月21日 10時36分