住宅瑕疵担保履行法が、本当の姿を教えてくれる

身近なところで、住宅の建設現場があったら、それはどのメーカーの現場だろうか?
本当に冷静に見て回れば、実は見知らぬ企業であることが、意外に多いはずだ。

これまでにもいろいろなデータがあるが、2009年に住宅瑕疵担保履行法が制定され、発表されたデータを分析すると本当の姿が見えてくる。たとえば実際に瑕疵担保履行法で、年2回の基準日に資金確保の措置状況を届け出ている企業は4万社ある。しかし、実はこのうち1万社は実績が0戸である。つまり、約3万社が住宅総数81万戸を建てた。

この内訳も、公表されている。1000戸以上建てている企業が全体の41.9%を建て、100戸~1000戸建てている企業が18.6%を建てている。これらを合わせると60%となり、100戸以上の比較的大きな企業が多くを建てていることになる。そして10戸以下の住宅建設企業は16.1%しか建てていないと報道される。このデータを、下の表にまとめた。
が、このデータは、もっと深く読まなければ本当の姿は見えない。
というのは、住宅供給の中には持ち家の他に、建売やマンションなどの分譲住宅や、アパートなどの賃貸住宅が含まれている。そして純粋な持家は、この中の31万戸しかない。お客様の要望を聞いて建てる注文住宅は、この31万戸の中で分析しなければならない。

企業規模   1~10戸  10~100戸 100~1000戸   1000戸~
シェア  16.1%  23.5%  18.6%  41.9%
戸数  13万戸  19万戸  15万戸 34万戸

当たり前すぎる数字で確認してみる

全国に約3万社ある住宅建設企業は、この企業規模の中に分けられている。

そのおおよその数も分かっている。1000戸以上の企業が30社弱、100戸以上が300社弱、10戸以上が3000社弱である。残りの27000社強が10戸以下の住宅を建設していることになる。全国の住宅建設企業の90%である27000社強が集まっても、16%、約13万戸の家しか建てていないと書かれることになる。

しかし、それはあたりまえの分析だ。

単純に戸数を企業数で割ってみれば、平均の戸数が出て確認できる。これも下の表にしてみた。10戸以下の企業の平均は、5戸ということになり、それぞれ企業規模で見ても当たり前すぎる数字になる。そもそも企業規模と称して、戸数で分けたのだから当然のことだ。
でも、それだけにこの数字の信ぴょう性は高い。今の住宅業界の姿が、的確に表現されているのだ。そして驚かなければならないのは、27000社もの企業が生き残っていることである。1000戸以上を手がける企業の歴史は半世紀ほどであるが、半世紀をかけてもシェアを取れなかったと考えてもよい。それどころか、さらに分析すれば実は実像は逆転してくる。

 企業規模   1~10戸   10~100戸  100~1000戸   1000戸~
 企業数  27000社強  3000社弱  300社弱 30社弱
 戸数  13万戸  19万戸  15万戸 34万戸
 平均戸数  4.8戸  65戸 500戸 1万2000戸

注文住宅を建てているのは地元の企業

そのことを理解するには、平均5戸を建てている全国27000社の活動を想像してみれば推測できる。

たとえば年間5戸の企業が、マンションを建てているだろうか。もし建てていれば、年間5戸であるはずがない。同じようにアパート建設を手がけていれば、1棟建てて4戸~8戸は普通である。2棟も建てれば、年間10戸を超えた企業規模になる。

それでは分譲住宅をしかけているだろうか。売れるまで先行してコストがかかる分譲住宅は、年間5戸の企業規模の経営では至難である。まったくありえないとは言えないにしても、全体の中では微々たるものであろう。つまり、1~10戸の企業が手掛けている13万戸は、ほとんどが注文住宅だということだ。

逆に1000戸以上の住宅を供給をする企業の中には、大手のマンションメーカーが入る。さらに賃貸住宅を供給しているメーカーもある。これらのマンションメーカーと賃貸住宅メーカーが、どれだけの注文住宅を手がけていると考えられるだろうか。同じように、まったくありえないとは言えないにしても、全体の中では微々たるものである。

また10~100戸の住宅建設企業が建てている住宅でも、注文住宅の比率が高いと考えられる。逆に100戸以上の企業規模に入るパワービルダーの住宅は、多くが分譲である。
この先は、推測するしかない。仮に10戸以下の企業が手掛ける13万戸のうち、12万戸を注文住宅と考えて見よう。すると、注文住宅の総数は31万戸であるから、約40%が10戸以下の企業が手掛けていることになる。全体の住宅供給の40%は1000戸以上の企業であることと、まったくの逆の話しになる。仮に10戸~100戸の企業も約半分が注文住宅であると考えれば、全体19万戸のうち約10万戸が注文住宅となる。両者を合わせた22万戸は、全体31万戸の70%を超えることになるのだ。

これですっかり、話しは逆転した。

注文住宅の市場は、大手住宅メーカーは半世紀をかけても地元の企業が建てている住宅を凌駕することはできなかった。そして大手メーカーの注文住宅数にあっという間に追いつく新しい企業も生まれている。まだ、自動車や家電や酒類のように、大手だからと言って信頼され、業界をリードできているものではないのだ。

企業規模  1戸~10戸 10戸~100戸 100戸~1000戸 1000戸~   合計
 戸数  13万戸  19万戸  15万戸 34万戸 81万戸
 注文住宅数  12万戸 10万戸  9万戸 31万戸
 

住まいの「本当」と「今」を伝えること

一方、賃貸住宅は、その意味では成熟した業界になった。日本の年間住宅供給数は、持ち家よりも賃貸住宅の方が上回る年の方が多い。すでに世帯数よりも1割以上も住戸数が余る状況になっても、まだ賃貸住宅の方が多い。建てる動機も、建てる手法も全く違う賃貸住宅の業界と、注文住宅を一緒にしたデータを見て判断することはあぶないことである。

もういちど、確認する。

ぶっちゃけ、自分の要望を語り注文住宅を建てている人は、大手メーカーに頼んでいるのではない。地元の建設企業を選んでいる。
アパートなどの賃貸住宅なら、大手メーカーを選んでいる。
そしてこれから先、注文住宅市場があるかぎり、この構図は変わるようにも思えない。
しかし残念ながら地元の建設企業は、広告をして知らせることも、このような説明をすることも不得手である。これからの住宅市場に大切なのは、施主も含めて住宅の正しい話しを広め、全体でモノと情報の質を向上させることである。だからこそ「おうちのはなし」の創刊号で取り上げたこの話題を、皮切りとして書いてみた。
広告という自慢話よりも、住まいの「本当」と「今」を伝えることは、そのためにも大事なことである。
HOME'Sさんの新しい取組みに、賛同する。

2013年 09月12日 11時30分