まずは、わかっていることから
とりあえず、すでに答えは出ている。
消費税は上がり、新しいローン減税が実施される。
いろいろと比較され、さまざまな要件で計算されているが、とにかく解りにくい。
工事金額、住宅の性能、年収、家族数、納税額、ローン金額、金利、返済期間、給付額など条件も複雑である。高額所得者の方が得するとか、低所得者にも配慮されているとか言われている。
しかし、最終的には消費税とローン減税額の2つの話しである。
井沢元彦氏の『逆説の日本史』ではないが、答えが出ていることから、逆算すると少しだけ解りやすくなる。
建設給付金 ÷ 消費税
消費税は単純で、5%が8%になる。同じ金額であれば、その差額は3%だ。
そして2014年度から低所得者への住宅取得支援として、最大30万円の給付金が出る。
まずは、給付金額を消費税率の差で割ってみれば、単純な答えが出る。
30万円 ÷ 3% = 1,000万円
1000万円以上の住宅では、消費税アップ分の方が高くなる。普通に考えたら住宅の建設費は1000万円では収まらない。つまり、給付金を想定する低所得者は3月までに建てるのが得をする。
そもそもローン減税や給付金は、消費税アップ分後の住宅建設の低下を、少しでも緩和させるための政策だから当然のことだ。
ただし、1000万円以下の住宅を広告している企業もある。本当に消費税対象分すべて込みでできるなら、2014年度に広告した方が良く、受け止められるかもしれない。
ローン減税 ÷ 消費税
ローン減税も、現行の枠が広がるだけだ。
建てる家が、長期優良住宅であれば最大300万円が最大500万円になり、200万円多く戻ってくる。一般住宅でも、結局200万円の差は変わらない。
消費税率差:3%
最大ローン減税額差:200万円
このことから2番目の結論が出る。
200万円 ÷ 3% = 6,667万円
この金額を超えると、どんなにローン減税で取り返しても消費税の3%分が200万円以上になってしまう。自己資金を入れておよそ1億円の住宅建設費を支払えるのは、当然、高額所得者だ。お金持ちは、3月までに建てなければ得はない。しかし、そもそも、この層がローンを利用するとも思えない。
では新制度から得をするローン金額とはいくらか?
ローン控除は現行でも最大300万円だ。最大の控除を受けるためには、35年返済・金利2%で計算して、およそ3840万円のローン金額となる。同様に最大500万円の控除を受けるには、6400万円のローンを組まなければならない。
3840万円以下のローン金額であれば現行と変わらず、最大6400万円までローン控除が有利になる。
この消費税とローン控除の関係を表にしてみた。
建設費だけでローン減税で得する人はほとんどいない。
その前に実は、フラット35の平均借入額はこれよりもずっと低い。つまり、すでに対象者は極端に絞られている。
消費税額 ∝ (ローン金額 - 土地金額)
それでも、消費増税後が得をするケースがないわけではない。少し複雑になるが考えてみる。
結局、ローン減税の対象であるローン金額が増えて、消費税の対象である建築金額が少ないほど良い。つまり、土地金額と建物金額のバランスで決まってくるということだ。そこで、自己資金をゼロとして消費増税分をかんがえると、次のようになる。
消費増税額 =(ローン金額 - 土地金額)× 3%
上のグラフの消費税の直線が、土地代金分だけ右にずれてゆくイメージだ。すると、ローン減税が高くなる分が見えてくる。
この考え方で、横軸に土地金額、縦軸に建築金額とすれば、下の図のようなものができあがる。
土地取得費 + 住宅建設費
この表の中で、予定する土地取得費と住宅建設費の交点を見る。
その交点が赤であれば消費税の方が高くなり、青であればローン減税の方が高くなる。つまり、赤なら2013年度中に建てた方が良く、青なら2014年度にしても良い。
こうしてグラフにしてみると、意外とローン減税によって得する場合もあるように見えるが、対象者は多くない。
この表では自己資金入れていないが、自己資金は消費税と関係ない土地価格に充当されると考える。つまり自己資金分は、土地代金を下げる左方向に交点をずらして見る。自己資金を入れるほど、2013年度中という判断になる。
重ねて書くが、そもそもローン減税や給付金は、消費税アップ後の住宅市場の低下を、少しでも緩和させるための政策である。この結論は、当然である。
2013年 10月25日 10時26分