徳川家康生誕の地として知られる愛知県岡崎市
愛知県岡崎市。現在の人口は38万人を超え、名古屋市、豊田市に次いで愛知県内で3番目に人口が多い市である。豊田市と隣接していることもありトヨタ自動車関連企業も多い同市は、名古屋市や豊田市のベッドタウンとして発展を遂げてきた。
2023年に放送されるNHK大河ドラマは徳川家康が主人公の「どうする家康」に決まったが、徳川家康生誕の地として知られる岡崎市には、徳川家ゆかりの場所が数多くある。今後これまで以上に岡崎市に多くの人が訪れることになるだろう。
そんな岡崎市が2018年に掲げたのが、公民連携のまちづくり「QURUWA(くるわ)戦略」だ。QURUWA戦略とは、矢作川最大の支流である乙川(おとがわ)の、特に岡崎城のそばを流れるエリアを「乙川リバーフロント地区」とし、このエリア内の豊富な公共空間を活用して、まちの活性化や好循環を図るという戦略である。少し紹介していこう。
岡崎のまちなかを囲む「QURUWA」
岡崎市の中心部を流れる乙川河川敷や中央緑道、籠田公園、名鉄東岡崎駅などを結ぶと「Q」の字が現れる。かつての岡崎城跡の「総曲輪(そうぐるわ)」の一部と重なることから、これら公共空間各拠点を結ぶ約3キロが「QURUWA」と命名された。
QURUWA戦略では、回遊動線となる道路や広場といったハード面の整備が進み、同時にソフト事業も進行。さまざまなイベントなどが開催されている。公民一体となって、岡崎市のまちなかが着々と変化しているのだ。
そんななか名古屋鉄道(以下、名鉄)は、名鉄「東岡崎」駅の再開発計画を発表。次は「Q」の”尻尾の部分”が大きく変貌するのだ。
名鉄 東岡崎駅再開発。コンセプトは「ジャズ」
岡崎市の玄関口である名鉄 東岡崎駅。一日平均約4万人が利用する、名鉄線における西三河地区最大のターミナル駅である。
地元の人には「ヒガオカ」と呼ばれる東岡崎駅の再開発コンセプトは「SWING HIGAOKA(スイング・ヒガオカ)」。スイングとはジャズを演奏するうえで欠かせない特徴的なリズムのことだ。しかしなぜ「ジャズ」なのか。詳しいお話を、名鉄都市開発株式会社 開発事業本部 沿線開発部 沿線開発グループの柴田和亮さんに伺った。
「ジャズをキーワードにまちおこしをしている自治体は、栃木県宇都宮市や大阪府枚方市などいくつかあります。岡崎市も貴重なジャズコレクションが所蔵されていたり、ジャズイベントが開催されたりするなど、さまざまなジャズに関する取り組みが行われており、市民の認知度は高いです。しかし市外の方への知名度は残念ながらそれほど高くないようです」と柴田さん。
では岡崎市はなぜ、クラシックでもなく演歌でもなくポップスでもなく「ジャズの街」なのか。
それは岡崎市出身の外科医で、長年にわたりジャズミュージシャンを支援し、日本ジャズ界に多大な影響を与えてきた故・内田修氏の功績によるものだという。
「Dr.Jazz(ドクター・ジャズ)」と呼ばれた内田氏は、ジャズサクソフォーン奏者の渡辺貞夫氏やジャズトランペット奏者の日野皓正氏をはじめとする日本のジャズミュージシャンを支え続け、ケイコ・リー氏や綾戸智絵氏、寺井尚子氏を世に送り出した人物。
そんな内田氏が岡崎出身だからこそ、岡崎市には多くの世界的ジャズミュージシャンが訪れ、演奏し、市民はその音に触れることができた。
また内田氏は自身が集めた膨大なジャズレコードの数々や雑誌、オーディオ機器など、世界的に類を見ない貴重なコレクションを、1993年に岡崎市へ寄贈。2008年には岡崎市図書館交流プラザ内に「内田修ジャズコレクション展示室」が開設され、現在はコレクションの一部を市民が気軽に見ることができるよう展示されている。
これが「JAZZの街 岡崎」といわれる所以(ゆえん)である。
住宅地が広がる南口はどう変わる?
東岡崎駅には南口と北口がある。
南口は住宅地が広がるエリア、一方の北口は岡崎城や乙川などを有する、先述のQURUWA戦略を進める中心市街地エリア。再開発では南口・北口双方にビルを建設するという。
「ジャズを直接的にPRするというよりは、ジャズの持つリズムやポップなイメージ、躍動的な空間をつくっていきたいと考えています」と柴田さん。それぞれのエリアの特徴を踏まえて差別化を図っていくのだとか。
「南口には、2023年度中に地上3階建てのビルが竣工予定です。県内有数の進学校である岡崎高校や自然科学研究機構の研究センター、家康の産土神として有名な六所神社などもある南口は、居住エリアとしても人気の高い閑静な住宅街。そんな南口に建設する駅ビルには、生活利便性の高い食品等の店舗やサービス、飲食店を誘致する計画です」
まだ具体的なテナントは決まっていないそうだが、特に地元の人の日常に寄りそう駅ビルとなりそうだ。
岡崎の中心市街地側、北口はどう変わる?
北口には地上8階建ての駅ビルが、2029年度内に竣工予定。商業施設をはじめ、オフィスや公共施設も入居する複合施設を整備する。
「北口の竣工はまだ少し先。具体的なことはこれからですが、北口は来街者のための起点となります。観光名産品や観光をPRする場所を置くのに加え、バスターミナルを配置するため、乗換客へ配慮したテイクアウト店があっても面白いですよね。目的地でもあり、岡崎市内を巡る起点にもなる駅ビル。とはいえ観光客向けの店舗だけではなく、市民のシビックプライドがより育まれるような場所になったらと考えています」と柴田さん。
柴田さんはこう話す。「ジャズは明るく躍動的でポジティブなワード。スイングには『先導する・躍動する』といった意味もあります。われわれはQURUWA戦略で積極的にまちづくりをされている岡崎市と一緒になって市を盛り上げていきたいと考えています。駅前がよければいいのではなく、勢いのある岡崎市のまちづくり戦略にのっとり、われわれも駅が起点となる躍動的な施設をつくることができたら……そんな思いを込め『SWING HIGAOKA』というコンセプトを掲げ、再開発に取り組んでいます。市民の皆さんが誇りを持ち大事にしてきたもの……自然や歴史など市民が守るシビックプライドにマッチしたものにしたいです」
お話を伺うなかで、柴田さんからは「躍動感」という言葉が何度も発せられた。ジャズのもつ躍動感、岡崎市の取り組む躍動的なQURUWA戦略、南口と北口を躍動的に回遊する人流、ワクワクするようなポジティブさそのものが東岡崎駅の再開発のイメージだろう。
ジャズをキーワードにすることで、「JAZZの街 岡崎」の知名度が上がることにも期待したい。
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