家賃を払い続けてマイホームを取得する”譲渡型賃貸住宅”とは
自分の家をもちたいと思ったとき、多くの人が不安に感じるのが住宅ローンのこと。金融機関の審査に通るのか、先々まで返済していけるのか……。だが、住宅ローンを組まなくても、家賃を払い続けていると、最後には自分の持ち家になるという住宅取得の仕組みがあるという。株式会社Minoru(東京都渋谷区)が手がける「家賃が実る家®」だ。どんな仕組みなのか、Minoruの代表取締役・森裕嗣さんに話を聞いた。
「『家賃が実る家®』で提供しているのは新築一戸建て住宅ですが、住み始めるときは賃貸であることが特色です。一定期間、家賃を払い続けると、大家さんから土地と建物が無償で譲渡される“譲渡型賃貸住宅”です」と、森さん。
着目したいのは、大家と入居者のマッチングの方法だ。一般的な賃貸住宅では大家が土地と建物を用意し、家賃を設定して入居者を募集するが、「家賃が実る家®」では異なる。どこにどういう住宅を建てるのかといったプランや、月々の家賃を決めるのは住み手(入居希望者)だ。そうして入居が確定している土地と建物プランに対し、大家を募る。
「当社の審査をクリアした投資家のネットワークがあるので、その中で大家さんを募集します。『この物件なら価値がある』と判断した投資家が、土地代と建築費用を負担して大家さんになります」(森さん。以下同)
賃貸だけど、自分が住みたい家をプランニングできる
賃貸から持ち家になるまでについて、流れに沿ってポイントをまとめた。
<入居するまで>
1) 会員登録
スマホやパソコンから入居希望会員登録(無料)。
2) 住みたい家をWEB上でプランニング
希望するエリアや間取りなどを選択し、家賃の確認。
・エリア
Minoruの事業展開エリアの中から、希望家賃の範囲内で選択できる。事業展開エリアは、沖縄県を除く46都道府県となっており、郵便番号単位で選択できる。
全国約12万4,000の郵便番号のうち、約8万が事業展開エリア(2020年12月時点)。
※上記対象エリアのうち、東京23区内など賃料が非常に高額となるエリアは選択不可としている。
※投資リスクを極力減らすため、事業展開エリアに制御をかけている。
・間取り
80種類のベースプランから選択。駐車場の有無や車の台数も選択できる。
外装や内装のカラーも選択。オプションで食洗器、浴室乾燥機、駐車場の舗装などの設備も選べる。
・家賃
月々の家賃は、10年~28年の間で6コースある入居(賃貸)期間に合わせて設定。毎月支払える家賃であることを確認し、決定する。
3) 入居審査
収入証明など必要書類を提出。
家賃保証会社との賃貸保証契約に加え、連帯保証人が必須。
4) 入居申し込み
申し込み金25万5,000円を支払う。契約時の登記費用のほか、家賃滞納時に代位弁済を受けるための家賃保証登録料に充てられる。
5) 希望エリアの加盟店(建築会社など)が土地を選定
Minoruでは、「家賃が実る家®」をフランチャイズ方式で展開。入居申し込みが入ると、希望エリアの加盟店である建築会社などが土地を探す(Minoruで探す場合もある)。並行して、大家を募集。土地と大家が決まるまでの期間は、2ヶ月程度~1年。
※1年以内に土地や大家が見つからない場合はキャンセル可能、申し込み金が返却される。
6) 土地と大家が確定、建築開始
大家が土地を購入し、加盟店と工事請負契約を結び、着工。
7) 建物完成後に契約、入居
入居者と大家の間で、普通賃貸借契約と譲渡予約契約を締結。賃貸を何年続ければ、その家が入居者のものになるという契約で、仮登記をする。
<入居から持ち家になるまで>
1) 毎月、家賃を支払う
入居期間中、家賃は変動しない。
・家賃の目安
最長の28年コースでは、そのエリアの相場並みの家賃水準になるケースが多いという。
2)賃貸期間終了、土地と建物が自分のものになる
土地と建物の所有権が大家から入居者に移転される。入居者には所有権移転に伴う登録免許税、贈与税、不動産取得税の支払いが発生。また、譲渡を受けた時点から、入居者が固定資産税を支払う。
コロナ禍で入居希望者が急増、賃貸ならではのメリットも
入居希望会員数は、コロナ禍を受けて急増している。
「コロナ禍で先の見通しが立たない状況となり、住宅ローンを抱える不安を感じる方が増えているのでしょう。また、在宅勤務という働き方の普及が進み、テレワークに向く家をもちたいという志向が高まっているのを感じます。コロナ前は月に50~60人程度だった新規登録の数が、2020年3月以降は月100人を超え、2020年11月には約300人の登録がありました。現在、会員数は全国に6,150人(本人認証済み)と順調に増加しており、ニーズの強さを感じております」
どういう人たちが入居を希望しているのだろう。
「家賃の支払い能力はあっても、比較的住宅ローンの審査に通りにくいという非正規の形態で働く方、フリーランス、個人事業主を中心にニーズがあります。芸能人、プロスポーツ選手、年更新契約の研究者や大学教員など、職業はさまざまです。そうした方々にとって、一生、家賃の支払いが続くのではなく、住宅ローンを組まなくてもマイホームが手に入る……これが最大のメリットでしょう。また、フリーランスや個人事業主ですと、家賃の一部は経費として計上できるので、節税しながら家をもてるのもポイントです」
企業の正社員や公務員といった、住宅ローン審査のハードルはそう高くないであろう人たちの入居希望も少なくないという。
「勤務先によっては、賃貸のときは住宅手当や家賃補助が支給されていたのが、住宅を購入すると支給を受けられなくなるケースがあります。家を買って住宅ローンの支払いが発生したのに、手当が打ち切られるのですから、家計には痛手でしょう。一方、『家賃が実る家®』は、賃貸住宅なので家賃補助などをもらい続けることができるというメリットがあります」
不動産投資家(大家)がリスクを回避できる仕組みづくりにも注力
「家賃が実る家®」は、不動産投資家(大家)にもメリットのある仕組みになっている。
「賃貸住宅の経営には、今後、空室がどれだけ発生するのか、それに伴う原状回復のコストがどのくらいかかるのか、さらには経年などによる家賃下落の可能性も懸念されます。そんな不安材料を取り除いたのが、『家賃が実る家®』です。賃貸の契約期間中は、家賃は変動しません。例えば入居期間20年で月々の家賃は20万円と決まれば、それが20年間、安定して続きます。また、入居者は家賃を払い続けて自分の持ち家にするというマインドの方々なので、住み続けます。空室は基本的には発生しません。大家さんによる建物の修繕対応も入居15年で済み、16年目からは入居者が負担します」
そうした利点が評価され、Minoruの投資家ネットワークの登録者数はこの1年で2倍強に増え、現在406人(2021年1月現在)。
ただ、入居者が途中で退去するリスクはゼロではなく、リスクヘッジの戦略も立てている。
「途中退去があった場合は、中古住宅として売却しますが、それを見越して事業展開エリアを選定しています。過去3年の中古住宅流通量や将来の人口推計などを分析し、中古住宅の需要が見込め、大家さんの利益確保が可能なエリアを選んでいます。もちろん、建物に関しても、例えば、地震の際に建物の揺れを軽減する制震ダンパーを標準仕様にしたり、60年保証を付けるなど品質強化にも注力しています」
また、入居者にはデメリットだが、5年以内の退去には最大で家賃20ヶ月分の違約金が発生する。さらには入居する世帯主に万が一のことが発生した場合に備え、住宅ローンの団体信用生命保険に相当するオリジナルの生命保険もあるという(加入は任意)。
地方創生、企業の福利厚生、復興支援などさまざまに展開
株式会社Minoru代表取締役の森裕嗣さん。とび職など建設工事現場を経験した後、大学入学資格検定を取得し、24歳で大学に入学。経営学を学んで卒業後、不動産デベロッパー会社に勤務し、都内で不動産会社を設立。2006年、結婚を機に秋田県へ移住し、不動産会社(現・リネシス株式会社)を設立。2019年9月、「家賃が実る家®」専業の株式会社Minoruを設立し、東京都渋谷区に拠点を置く。このような「家賃が実る家®」は、どのようにして誕生したのか?
「15年前、私は東京で不動産会社を経営していましたが、結婚を機に妻の実家である秋田県大仙市に移住し、不動産会社を立ち上げました。しかし、当時の秋田県は人口減少、少子高齢化が急速に進んでいて、地価の下落、賃貸物件の家賃の下落、空き店舗や空室が増えるばかりという状況に直面したのです。まちと不動産マーケットの存続の危機だと思いました。課題解決には定住者を増やし、人口流出を食い止めなければなりません。模索する中で思いいたったのは、『賃貸ではなく、自分の家をもつことが定住につながるはずだ』ということ。しかし、家を購入する方法は住宅ローンしかなく、住宅ローンの審査に通らないためにマイホームをもつ夢を諦めている人が大勢います。そんな現状を変えたくて着想したのが、賃貸として住みながら持ち家にするというものでした」
システム開発や法律などの専門家から協力を得ながら、試行錯誤を重ねること、約3年。事業の土台となるシステムができたところでWEB広告を出し、一般消費者の反応をみるテストマーケティングを試みた。1ヶ月で200件を超える問合せがあり、秋田県で事業化に踏み切った。
最初の入居は2017年春、シングルマザーだった。
「入居したときにすごく喜ばれて、私もうれしかったです」
2019年1月、全国に事業を拡大し、2020年12月までの実績は入居が11棟、建物着工中が1棟、着工準備中が3棟。
「家賃が実る家®」の仕組みを使い、地方自治体、企業との連携も始まっている。その自治体で一定期間以上働き、居住すると住宅が譲渡される「マイホームがもらえる自治体®」、社宅として15年働きながら住むとその家をもらえる「マイホームがもらえる会社®」などの取り組みだ。また、宮城県大郷町では、2019年の台風19号で被災した世帯に向け、復興支援型の譲渡型賃貸住宅事業が進行中という。
「自分の家をもつと、頑張って働こうという生きる気力につながると思います。より多くの人に利用していただけるよう、今後は中古住宅バージョンにも事業を広げていきます」と語ってくれた森さん。
住宅取得の新しい選択肢として、どのような実りある事業になっていくのか、期待が寄せられる。
☆取材協力
株式会社Minoru
https://minoru-inc.jp/
■参考
https://minoru-ie.jp/
https://youtu.be/B8S27OWTF6g
公開日:






