家を売却後はリース契約をし、住み慣れたマイホームに住み続ける

株式会社ハウスドゥの安藤正弘社長。1991年に京都府向日市で創業し、不動産売買仲介業からスタート。「不動産業界を変える」を理念に業績をのばし、現在は不動産売買仲介、リフォーム、新築、中古住宅買い取り、フランチャイズ事業など幅広く手がける。ハウスドゥチェーン加盟店舗数は現在、全国に285店舗(2014年12月末現在)株式会社ハウスドゥの安藤正弘社長。1991年に京都府向日市で創業し、不動産売買仲介業からスタート。「不動産業界を変える」を理念に業績をのばし、現在は不動産売買仲介、リフォーム、新築、中古住宅買い取り、フランチャイズ事業など幅広く手がける。ハウスドゥチェーン加盟店舗数は現在、全国に285店舗(2014年12月末現在)

家を売却すること。すなわち家を手放すのだから、家から出ていくことになる。それが一般的な認識だ。しかし、家を売らなければならない状況になっても、愛着のある家に住み続けたいと願う人は多いと思う。最近、家を売っても引越ししなくてもよく、そのまま住み続けることができる住まい方があるという。どんな方式なのだろうか?

今回そうした新しい住まい方を打ち出した株式会社ハウスドゥ(本社:東京都千代田区)の安藤正弘社長にお話を聞いてみた。

テストマーケティングで予想以上の反響が得られ、本格始動

同社が2013年8月に始めたサービス「ハウス・リースバック」。どういったサービスなのか端的にいうと、持ち家を同社が一括で買い取り、売却した人とはリース契約を結ぶ。売却してもそのまま住み続けることができるというサービスだ。住む期間はあらかじめ設定され、月々のリース料(家賃)の支払いが発生する。

このサービスを始めた経緯について、安藤社長はこう話す。
「あるとき、不動産業界の人たちと話していて、”将来は今、住んでいる家もリースして住む時代になるかもしれないね“という話題で盛り上がったんです。自動車やコピー機などのリースが普及しているので、住宅もリースする仕組みがあってもいいのでは、と。そんなことを話しながら住宅リースを当社のビジネスにできるかもしれないと、興味が湧いてきました。そこで着目したのは高齢者からのニーズです。日本は今、超高齢社会です。高齢者が増え続けていますから、”家はあるけど、今後の生活費に不安がある“というケースも増えていくだろう、ならばその家を当社に売却して生活資金を得ていただき、売却後も当社にリース料を払っていただく形でそのまま家に住み続けることができるようなサービスがあればいいのではと、考えたのです」

「愛着のある家に住み続けながら家を売却できる」を特色として打ち出し、まず、ラジオCMで一般消費者の反応をみるテストマーケティングを試みたところ、1ヵ月でおよそ30件の問い合わせがあったという。「実はそこまで反響があるとは予想していなかったので、“これはいける!”と思いました」と、安藤社長。2013年8月に事業として本格始動させ、今では月に100件~150件の問い合わせがあると話す。

そのなかで実際に契約にいたった件数は、2015年1月末時点までのトータルで61件という。単純計算すると月に3~4件なのだが、「このところは月7件くらいのペースで成約があり、契約件数は着実に増えてきています」と、安藤社長は手応えを感じている。

「ハウス・リースバック」サービスの仕組み(株式会社ハウスドゥ提供)「ハウス・リースバック」サービスの仕組み(株式会社ハウスドゥ提供)

年間リース料は買い取り価格の10%くらいの設定

具体的にはどのようなサービスなのか、以下にまとめてみた。

<「ハウス・リースバック」サービスの対象・主な条件>
●対象となる物件
土地付き一戸建て、マンション。地域や築年数は限定していないが、リース契約終了後にハウスドゥが売却することになるため、不動産市場である程度の流動性を見込める物件、つまり将来的に売れる見込みがある物件が対象となる。ただし、建ぺい率オーバーや容積率違反などの違反物件の場合には原則、対象からはずれる。
●利用希望者が住宅ローンを抱えている場合
サービスを利用できるかどうかは、住宅ローンの残債の額によってハウスドゥとの相談となる。
●ハウスドゥの買い取り価格
市場価格の7割ぐらいが目安。買い取り価格の最低ラインは500万円程度とのこと。
※ハウスドゥへの売却は、売買仲介ではないので、媒介手数料は発生しない。
●リース料(家賃)
年間リース料は買い取り価格の10%くらいが目安。例えば、ハウスドゥが3,000万円で買い取ったとしたら、1年間のリース料は300万円、月額に換算すると25万円ということになる。
●契約期間
3年契約で更新するシステム。リース料を支払う限り、無期限で住み続けることができる。
契約更新時には更新料は発生しないが、不動産市況や金利状況などを踏まえつつ、リース料の見直しをする。
●再売買について
いったん売却した住宅を、リース契約期間終了後にハウスドゥとの間で再売買を行い、買い戻すことも可能。再売買価格はハウスドゥの買い取り価格を基準に、その10%~20%くらいの額を加算するものとしている。ちなみに現時点までに再売買を行なったケースはない。

リース料の支払いが負担にならないようなシステムもある

このサービスを利用しやすい仕組みをつくっていきたいという安藤社長。「ご契約後、家を改装したいというご希望にも対応させていただきます。工事費用は当社が負担するか、お客様が負担するのかは、再売買の予定があるのかどうかにもよりますが、ケースバイケースで話し合いをさせていただきたいと思います」このサービスを利用しやすい仕組みをつくっていきたいという安藤社長。「ご契約後、家を改装したいというご希望にも対応させていただきます。工事費用は当社が負担するか、お客様が負担するのかは、再売買の予定があるのかどうかにもよりますが、ケースバイケースで話し合いをさせていただきたいと思います」

このような利用条件があるのだが、まとまったお金が必要になったとき、自宅に住み続けながら家を売り、資金調達ができるのが大きなメリットだ。その一方でリース料の支払いが発生し、そこに住み続ける限り、リース料の支払いはずっと続いていくことになる点には留意しなければならない。買い取り価格が高ければ高いほどリース料も高くなり、家計の負担になる可能性もあるだろう。リース料の支払いができなくなれば、住み慣れた家から退去しなければならなくなる。

「開始してまだ1年半のサービスです。この先、リース料のお支払いに困るというケースが出てくるのかどうかはわかりませんが、当社としてはお客様に末永く住んでいただきたいので、リース料などはお客様とご相談していきたいと考えています」と、安藤社長。基本的にはハウスドゥが買い取ったら、現金一括で買い取り代金を支払うシステムだが、ユーザーの希望に応じて買い取り代金を分割で支払うことで月々のリース料の負担を軽減する方法も可能だという。

「例えば、当社が3,000万円でご自宅を買い取ったとします。それに対して売却したお客様から“一度に3,000万円をいただかなくてもいいです。まず1,000万円いただきたい”というご要望があったとします。そうしたら2,000万円を保証金として当社にいただき、1,000万円をお客様にお渡しします。そうしたケースでは1,000万円を基準にリース料を算定させていただきますので、リース料は1,000万円に対するおよそ10%。そうすると、月額にして8万5,000円程度のリース料で済むわけです。保証金で入れていただいた2,000万円についても、分割でのお渡しも可能ですので、お渡しする時期や方法などお客様とご相談させていただければと思っています」。

豊かな老後生活を支えるサービスにしていきたい

家には思い出が詰まっている。そんな家から離れることなく、これまで通り住み続けながら生活資金を得られるサービス。住まい方の選択肢として普及していくか?家には思い出が詰まっている。そんな家から離れることなく、これまで通り住み続けながら生活資金を得られるサービス。住まい方の選択肢として普及していくか?

では、「ハウス・リースバック」サービスを利用しているのはどんなケースなのだろうか。前述のように、対象となる物件が「不動産市場である程度の流動性を見込めること」を条件にしていることもあり、今のところの利用者は一都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)のエリアや、大阪、名古屋、京都、静岡など主要都市に住まいをもつ人たちだという。

利用した理由では、サービス開始当初は「住宅ローンの返済に苦労している」「新規事業の資金が必要」といった資金繰りの問題解決を目的にしていたケースが多かったというが、現在はシニア層の利用が大半を占めている。「年金生活なので今後の生活資金に不安がある、でも家を売って新たな場所に住むのも不安といった方たちです。また、趣味や旅行などセカンドライフを楽しむ資金としてのご利用や、相続する相手もいないから家を売ったお金は自分で使い切りたいという方もいらっしゃいます」。

最近では、将来の遺産相続を見据えた問い合わせも多いという。「ある方のご希望はこういう内容でした。息子さんがまだ学生で、収入はない。そこでまず、このサービスを利用して家を売却したいと。そして、将来、息子さんが社会人になってある程度の収入を得られるようになったら息子さんの名義で買い戻したいということでした。相続税対策も含めて検討していらっしゃるようでした。また、弁護士、公認会計士、税理士といった、相続を扱う専門家の方からの問い合わせも増えています」。

安藤社長がめざしているのは、金融機関などが扱うリバースモーゲージにも匹敵するような、豊かな老後生活を支えるサービスにすること。リバースモーゲージにはさまざまなタイプの商品があるのだが、一般的には自宅を担保にして融資を受けるローンで、高齢者などの契約者が死亡したときに住まいを売却して一括で返済するという金融商品である。

「ハウス・リースバック」とリバースモーゲージ。両者は性格が異なるものなのだが、住み慣れた自宅という資産を生前に活用し、老後の生活に役立てていくという点では共通している。どちらを選ぶにせよ、あるいはどちらも利用しないにせよ、老後の人生設計における選択肢が増えることは心強いことだと筆者は思う。こうした選択肢について考えることは、家を所有する当事者だけではなく、「自分は東京都心に単身で賃貸住まい、実家は親の持ち家だけど住んでいるのは親だけ」という状況にある人たちにとっても、意味のあることだろう。離れて暮らす親の老後のことや、将来的に自分が生まれ育った実家をどうしたいのかなど、親と一緒に話し合うきっかけにもなりそうだ。親が元気なときに家について話し合う時間をもつことで、親の死後に起きる相続に対する備えにもなるだろう。さらには、社会問題になっている空き家の増加を未然に防ぐことにもつながっていくのでは、とも感じている。

☆取材協力
株式会社ハウスドゥ
http://www.housedo.co.jp

2015年 03月12日 11時05分