案内ロボットを導入、無人モデルハウスを全国17ヶ所に展開

リモートシステムを利用して案内する営業スタッフ(写真はすべて株式会社アキュラホーム提供)リモートシステムを利用して案内する営業スタッフ(写真はすべて株式会社アキュラホーム提供)

国土交通省が2019年4月16日に発表した平成30(2018)年度「住宅市場動向調査」によれば、注文住宅を購入した人が、建築を依頼した工務店や住宅メーカーを探した方法で最も多かったのが「住宅展示場で」で53.9%だった。まず、家づくりを検討するなら住宅展示場で…という人が半数以上おり、実際に注文住宅の購入につながっているという状況が見える。

4月7日に緊急事態宣言が発令され、多くの住宅展示場は営業を停止。これまで積極的に行われてきた集客イベントなどは、中止や縮小の動きが見られた。現在は、国土交通省が発表した「住宅業界における感染予防ガイドライン」に基づき、各社、事前予約により来場者の集中を避けるなど感染予防に配慮した営業活動がされている。

住宅展示場に代わるオンラインイベントやWEB会議を活用した商談など、これまでとは異なる新たな顧客接点が模索されるなか、業界でもいち早くロボットによる案内をはじめた企業がある。株式会社アキュラホームだ。アキュラホームは、緊急事態宣言が発令される前の4月1日に、さいたま新都心コクーン営業所に案内ロボットゴーカンナ君を導入した非接触で案内可能なモデルハウスの見学を開始。4月29日からは、全国17ヶ所で同様の無人モデルハウスをオープンしている。

全国100ヶ所のモデルハウスが見学できる

「実は、6年前から無人モデルハウスの開発を進めていました。当時、Pepper(ペッパー)を埼玉の展示場で導入していたのですが、例えば『太陽光ってなに?』など、一般的な質問に対して回答することはできても、『間取りはどうしよう』などの質問に対して、具体的な提案をすることはできません。双方向のやりとりができるロボットが案内することで、住宅展示場に行きにくいという方も気軽に訪れてくれるようになるのではないかと。以降、開発を進めていましたが3月の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、急ピッチで準備を整えリリースしました」と開発の背景を話す、株式会社アキュラホーム 広報課 西口 彩乃さん。

営業担当者は、案内ロボット「ゴーカンナ君」をリモートで遠隔操作し、画面越しで接客・展示場の案内が可能。来場者にとっても接触を減らすことで感染リスクが防げる点はメリットであるし、案内は通常と変わりなく受けることできる。アキュラホームは、商品開発担当者や営業担当者などからなるロボット専門チームを作り、開発と同時に案内ロボットのプロフェッショナル育成を進めた。また、「ゴーカンナ君」を導入すると同時にアキュラホームグループの100ヶ所のモデルハウスにカメラを設置。

「100ヶ所のモデルハウスはすべて造りが異なるのですが、カメラを設置したことで、お客さまの希望に合わせてカメラを切り替えてすべてのモデルハウスの案内が可能になりました。お客さまに提案できる内容の幅も広くなったと思います」

オンライン打ち合わせの様子と、モデルハウス内に設置された案内ロボットゴーカンナくんオンライン打ち合わせの様子と、モデルハウス内に設置された案内ロボットゴーカンナくん

オンラインイベントには数千組が参加

アキュラホームは、これまで住宅展示場などで開催されていたイベントもオンラインで実施するなど新しい顧客接点の創出も着々と進めている。

「一般的な耐力壁6枚と、アキュラホームグループが提供する、最新の木造軸組工法『新世代木造』で使われる8トン壁1枚を並べ、それぞれを重機で水平方向に引っ張り強度を確認するという実験をZOOMで配信しました。8トン壁は1枚でも耐力壁6枚よりも高い強度であることが実証されたのですが、こちらのイベントには全国から5,706組の方が視聴してくださいました」

通常のイベントであれば、5,706組の人が入れる場所を確保するためには大規模な展示場などを貸切る必要がある。
「まず、知ってもらうことが大切だと思っていますのでオンラインイベントをきっかけに興味を持っていただけるとがありがたいです。これまで、数ヶ月に1度は大きな会場を貸し切ってイベントを開催してきましたがその経費の削減につながりました。お客さまにとっても、展示場を移動するのにバスを利用したりと手間もあったと思いますが、オンラインなら移動時間はかかりません」

オンラインの活用は、顧客だけでなく営業にとってのメリットも大きいという。これまで、いくつかの住宅展示場を移動するその移動時間も含めてスケジュールを組み立てていたが、無人モデルハウスの導入やオンライン商談の活用により、移動時間を考慮せずともよくなり、効率よく接客ができるようになったそうだ。

8トン壁は、アキュラホームが4月に発表した新世代木造「大空間の家」で大間口のある空間を実現するために開発された。5月30日のオンラインイベントでは、この実験の様子がライブ配信された8トン壁は、アキュラホームが4月に発表した新世代木造「大空間の家」で大間口のある空間を実現するために開発された。5月30日のオンラインイベントでは、この実験の様子がライブ配信された

住宅に求めるものにも変化が

玄関の土間スペースに洗面を配置し、すぐに手洗い・うがいができる環境に。アキュラホームは「新生活様式」を盛り込んだモデルハウスを発表している玄関の土間スペースに洗面を配置し、すぐに手洗い・うがいができる環境に。アキュラホームは「新生活様式」を盛り込んだモデルハウスを発表している

顧客の家づくりの検討プロセスが、まずは住宅展示場へ…だけではなく、オンラインイベントやWEB商談なども含めて進められていくなかで、住宅に求めるものにも変化が見られているという。

「私たちは住宅に関わる仕事をしていながら、新型コロナウイルスの感染拡大以前はあまり自宅で過ごす時間は多くありませんでした。社内研究所であるアキュラホーム住生活研究所が、コロナ禍で在宅勤務を経験した従業員1,000人を対象に実施したアンケートでは、これからの住宅に求めるものに変化がありました」

住まいにあってよかった・あったらよかったベスト10の上位は、第1位は玄関手洗いなどの「ウイルス対策設備」、2位は「広い庭・バルコニー」、3位は「家事楽設備」という結果に。また、男性は仕事部屋を希望する人が多く、女性はリビングで仕事をする人が男性に比べて2割ほど多いため広いリビングを希望し、在宅勤務は男女それぞれで異なる需要の変化を与えたことがうかがえる。アキュラホームでは、新しい生活様式に合わせたモデルハウスを7月1日に発表している。

「住宅の需要は社会の変化により都度変化していきます。敏感にアンテナを張りながら、お客さまに求められている住宅を提供していきたいです」

「失敗してもいい」チャレンジ精神を後押しする社風

オンラインイベントの開催や無人モデルハウスなど、住宅業界でもいち早くオンライン化に舵を切ったアキュラホームだが、新しい取り組みはそれだけではない。リモートワークの推進、オンラインでの入社式・内定式開催、上期成績優秀者慰労会のオンライン開催など。不動産業界といえばまだまだIT化が遅れているといわれているなか、先駆的な動きを見せている。

「新しい取組みをはじめるハードルが低いのは、社風に理由があると思います。実は、弊社ではじめた木のストローの開発は、ある環境ジャーナリストの方の発案を受けて私が社内に提案をしたのがはじまりで、社長は『失敗してもいい』とチャレンジを後押ししてくれました。アイディアマンで、社員の提案を柔軟に受け入れてくれるからこそ、物事が進むスピードも速いのだと思います」

西口さんは、プラスチックごみの問題や森林の環境保全の一助になればと、国産間伐材が主材料で、カンナ削りの技術を駆使した木のストローを開発し、量産化に成功。注文住宅の会社が木のストロー…、というのは少し意外ではあるものの、木を扱う会社だからこそできる環境貢献なのかもしれない。なお、この開発までの奮闘記が、扶桑社より書籍「木のストロー」として10月16日に発売された。

新しい生活様式に合わせた住宅の提供、オンラインを活用した顧客とのコミュニケーションの実践、環境問題への取組みと、多方面で革新的な存在であるアキュラホームの、今後の動きにこれからも注目したい。

取材協力/株式会社アキュラホーム
http://www.aqura.co.jp/

画像上:4月1日に行われたオンライン入社式では、ゴーカンナくんから辞令を渡される社員も。オンラインの特性を生かし新入社員の家族や従業員などもオンラインで参加した<br>
画像下:取材対応をしてくださった広報課 西口 彩乃さんと木のストロー画像上:4月1日に行われたオンライン入社式では、ゴーカンナくんから辞令を渡される社員も。オンラインの特性を生かし新入社員の家族や従業員などもオンラインで参加した
画像下:取材対応をしてくださった広報課 西口 彩乃さんと木のストロー

2020年 11月02日 11時05分