超低金利時代のいま、フラット35の役割は?

住宅金融支援機構に行き、知っているようで知らないフラット35について聞いてみた住宅金融支援機構に行き、知っているようで知らないフラット35について聞いてみた

住宅ローンを検討した際、「フラット35」の言葉を聞かない人はいないだろう。住宅金融支援機構が発表する「民間住宅ローン利用者の実態調査」では、2014年9・10月時点では全期間固定型が25.6%、固定期間選択型が26.6%、変動型が47.8%という割合となっている。

住宅購入の約4分の1の人が全期間固定型を選択しているわけだが、その代表的なものがフラット35だ。3月の金利では35年返済なら1.47%、20年返済なら1.20%で金利が固定される。最近では今年2月9日から一定の住宅性能をクリアした住宅に対しては金利-0.6%の優遇金利が適用。変動型や固定期間選択型と比べて、全期間での毎月の支払金額が決まるので、将来のシミュレーションもしやすいのが特徴といえる。

なお、フラット35は、それぞれの銀行が貸す住宅ローンとは違い、住宅金融支援機構が金融機関と提携して提供している。しかし実際には、住宅金融支援機構が以前の住宅金融公庫と同じく直接住宅ローンを貸していると思っている人も多いようだ。

今回は知っているようで知らない「フラット35」のこと、そして日本の住まいとの関係や住宅性能との関連性についても見ていきたい。

フラット35の歴史とは?住宅金融公庫とはどう違うのか?

今回、住宅金融支援機構の業務推進部 フラット35推進室長 河田崇氏にお話しを伺ってきた。

「住宅金融支援機構」という名前は知らなくても「住宅公庫」と聞けば、耳にしたことがある人も多いだろう。ただ、以前あった「住宅金融公庫」と、どう違うのかよく分からない人もいるはず。住宅金融支援機構は、小泉政権時代に廃止が決まった住宅金融公庫の業務を引き継いだ独立行政法人だ。“民間の家づくりを住宅ローンで応援する”というスタンスは共通しているものの、貸し出すローンの仕組みは以前とは異なる。

「お客様や事業者さんから見ると、どこが変わったかよく分からないとのお声をいただきます。特徴的な変化は、一般のお客様に対して直接融資することをやめたということです」

まず住宅金融公庫のことにふれたい。公庫の時代の住宅ローンは郵便貯金を原資として運用していたという。その時代の金利にもよるが、例えば国から5%で借りて、4%の全期間固定金利で直接ユーザーに貸すという流れだった。そのため、金利のリスクは住宅金融公庫自体が背負う。政府の持家政策の中で、例え赤字になっても税金を投入して国民のマイホーム取得を後押ししていった。しかし小泉政権の時に大赤字ということで組織自体が見直される。また郵政民営化にも絡み、原資が郵便貯金だったこともあり、お金の流れを変える意味で住宅金融公庫という組織そのものと、マイホームに直接融資する事業は廃止に至ったという。

では、今の住宅金融支援機構となり以前とどう変わったのか?まずローンの原資の資金調達方法が変わった。金融機関から買い取った住宅ローン債権を信託銀行等に信託し、これを担保としてMBS(資産担保証券)を発行。つまり、住宅ローンの原資は投資家から調達している。
そして、住宅金融支援機構は、民間金融機関が行う住宅ローンを支援するという立場になった。住宅ローンを提供する主人公、窓口はそれぞれの金融機関であり、実際の貸し出し金利や手数料は窓口である金融機関が決める。そのため同じフラット35といっても、それぞれの金融機関で金利や手数料が異なっているのは、そうした仕組みからだ。

フラット35の証券化の仕組み(住宅金融支援機構のフラット35の資料より抜粋)フラット35の証券化の仕組み(住宅金融支援機構のフラット35の資料より抜粋)

全期間固定金利のメリットとは?

今回お話しを伺ったのは、住宅金融支援機構の業務推進部 フラット35推進室長 河田崇氏今回お話しを伺ったのは、住宅金融支援機構の業務推進部 フラット35推進室長 河田崇氏

冒頭で現在住宅ローンを利用している人の「ローンの種類の割合」についてふれたが、改めて全期間固定金利について整理しておこう。変動金利や期間限定の固定金利よりは確かに金利は高い。しかし、“固定金利だから将来を計画できる”ことが重要だという。

「ローン開始直後の毎月の返済額だけを考えて変動金利だけをお客様に勧めて、将来的なことをあまり相談せずに売って終わりというスタンスの事業者さんもいらっしゃるようです。しかし、以前と違ってこれから人口が減り新築も減っていく…そうすると事業者さんにとっては5、10年後にメンテナンスを実施する、リフォームを提案するなど、お客様との長いお付き合いが重要になっています。その時に変動金利だと当初からの計画は立てにくいと思いますが、固定金利なら長期的にいろんな計画が立てやすい。ライフプランと合わせて、お客様も事業者さん側も長期的な資金計画・キャッシュフローの見込みが立てやすくなれば、様々な提案も出来てお客様にも受け入れてもらえる。結果的にお客様も事業者さん側も、いい住まいづくりと、それを永く活用していくことができると思います」

ユーザーは住まい選びの際に、金融商品について自分のライフプランとあわせてどういうメリット・デメリット・リスクがあるか考える必要がある。しかし、実際は住まいの方に目がゆきがちで、その物件を購入できるかどうか、床暖房などの設備はどうか、システムキッチンのグレードは?ばかりを考えてしまう。今後、住宅を検討する際には、ライフプランと合わせた金融商品の選び方も大切にしたいところだ。

住宅ローンと日本の住まいの関係

昔の住宅金融公庫の固定金利の住宅ローンは単に安心できるライフプランの提供だけでなく、住宅性能向上にも一役担ってきた経緯がある。先進国の住宅性能と比べて、遅れていると言われている日本。戦後復興~高度成長期はハコ作りの方に注力してきたため、住宅性能にはあまり関心が払われなかった。

そんな時代の中、1980年代の半ばから転機が訪れた。1981年に建築基準法が改正され新耐震基準が定められた。また、オイルショック・石油危機を契機に住まいの性能にも目が向けられ始め、断熱材をしっかりいれた住宅には通常よりも融資額を割り増しするという施策が行われたという。さらに、1996年に融資額ではなく性能がいい住宅(省エネについては1992年基準適合)に対しては「金利」で差がつけられ始めた。

「この頃は日本の持家の半分くらいは住宅金融公庫が融資していた時代。“性能が高い住宅なら金利を下げます”という施策を展開したところ、日本の住宅の性能向上にあたっては、とても効果的でした。」

こうした流れを受けて現在も、フラット35では通常のプラン以外に、一定条件に適合した性能のいい住宅であれば金利を下げる「フラット35S」がある。この商品には2つの金利プランがあり、Aプランは当初10年間金利を引き下げ、Bプランは当初5年間金利を引き下げる。Aプランの方が金利引き下げ期間が長いが、そのため、Bプランよりも住宅に求められる性能基準は厳しくなる。

「フラット35Sには金利Aプランと金利Bプランがあります。最近では一戸建てもマンションも金利Bプランで定めた性能基準を満たす住宅は増えてきましたが、金利Aプランで定めた基準を満たす住宅はまだ少ないですね」

どういう将来を描くか

住宅金融支援機構が行っていることは先導的な取り組みではなく、一歩前に進んだ仕事ということだ。欧米のような断熱住宅にいきなりしましょうではなく、“もうちょっと頑張って”と住宅性能を少し後押しするスタンスと河田氏は言う住宅金融支援機構が行っていることは先導的な取り組みではなく、一歩前に進んだ仕事ということだ。欧米のような断熱住宅にいきなりしましょうではなく、“もうちょっと頑張って”と住宅性能を少し後押しするスタンスと河田氏は言う

ユーザーからの質問で「住宅の性能といってもどんな性能がおすすめなのでしょうか?」と聞かれることが多いという。断熱性能、バリアフリー、耐震、耐久性など様々な要素が考えられると思うが、河田氏のおすすめは断熱だ。
住宅金融支援機構が配布している資料を見せていただくと、フラット35Sの特徴について断熱性の「快」、バリアフリーの「楽」、耐震の「強」、耐久性の「長」の4つに分けている。
その中でも、「快」である断熱性能をあげることで快適な住み心地をすぐに実感できるという。断熱性能の向上を図るには壁の中や床下に断熱材をいれる必要があり、後からの作業だと大変な工事になる場合が多い。そのため、なるべく家を建てる際に行ったほうがいいという。

フラット35Sに適合した住宅であれば、快適な住まいに住むことができ、また金利も下がり一石二鳥という塩梅だ。借りるか、借りられるかだけでなく、自分達のライフプランはどうなるのか、どんな住まいに住みたいか。「住宅ローン」といっても、そうした将来設計を行った上でどれが自分のライフプランに適合しているかを考えて選んだほうが、自分の大切な住まいとうまく付き合えると感じた。

2015年 03月09日 11時15分