“コロナショック”が住宅取得に及ぼす影響

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、工事などの一時中止や延期が懸念されている新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、工事などの一時中止や延期が懸念されている

新型コロナウイルス感染症が私たちの暮らしに影を落としている。日本政府が発出した緊急事態宣言は、4月7日の東京都や大阪府など7都府県から全国に拡大。外出自粛や施設の使用制限の要請などの措置が講じられている。爆発的な感染拡大を防ぎ、国民の命を守るほか、生活や経済への影響を少なくするためのものではあるが、ダメージはとても大きい。

アメリカ、ヨーロッパでは外出禁止と一段と厳しい措置が取られているところもあり、世界的に経済危機が心配される。2008年の「リーマンショック」と状況は違うけれども、「コロナショック」という言葉が聞かれるようになってきた。

そんななか、国土交通省は4月7日に「新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言を踏まえた工事及び業務の対応について」と題した通知を出した。緊急事態宣言時も、河川や道路などの公物管理、公共工事は事業の継続が求められているが、緊急事態措置を実施すべき区域では、受注者から工事などの一時中止や工期または履行期間の延長の申し出があった場合は、受発注者による協議を行ったうえで対応するようにとのこと。その措置に伴う経費を発注者たる国交省が適切に負担するとしている。

あらためて、工事などの現場での感染予防対策の徹底についても記された。

一方、住宅関係ではどうか。実は、国土交通省は2月27日付で建設業団体などに向けて「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う建設設備の部品供給の停止等への対応について」という通知をしている。(緊急事態宣言により廃止)

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、トイレ、システムキッチン、ユニットバス、ドアなどの建材・設備の部品の供給が滞っていることから、納品が遅れて、日本国内の建築工事で工期が延びるなどの事態が想定された。そこで、それらの設備が未設置の状態で工事を完了させても、建築基準法に基づく完了検査を実施するように各自治体の担当者や指定確認検査機関に求めた、というものだった。

〇国土交通省「新型コロナウイルス感染症対策に向けた直轄工事及び業務の取り扱いについて」
https://www.mlit.go.jp/tec/kanbo08_hy_000025.html

購入した住宅への入居予定遅れが予想される

実際に、納入の遅れから住宅工事が止まってしまっている。通常、未完成の分譲マンションや分譲住宅を広告する場合には、予告広告、本広告にかかわらず入居予定年月を記載する必要があるが、公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会は、新型コロナウイルスの影響下にある当面の間、入居予定時期を「未定」と表示することを一時的に認めている。

工事がストップすると、その分、入居予定も遅れる可能性が高い。すると、浮かび上がるのが「住宅ローン減税」に関する問題だ。

まず、住宅ローン減税について説明しておきたい。返済期間10年以上の住宅ローンを利用して住宅の新築・取得または増改築などをした場合、毎年の住宅ローン残高の1%を所得税などから10年間控除する制度のこと。正式名称は「住宅借入金特別控除」である。

住宅ローンを組めば税金の負担が軽くなるということで、夢だったマイホーム購入を後押しする要因のひとつとなっている住宅ローン減税。住宅取得を促進するという面で、この制度の基になったのは1972年に導入された「住宅取得控除」といわれており、税制改正などで変化しながら現在のような形になった。

2019年10月に拡充された住宅ローン減税が適用できない!?

出典:国土交通省「住宅ローン減税制度について」http://www.mlit.go.jp/common/001304913.pdf出典:国土交通省「住宅ローン減税制度について」http://www.mlit.go.jp/common/001304913.pdf

住宅ローン減税制度の主な要件については、下記のとおり。

①その者が主として居住の用に供する家屋であること
②住宅の引渡しまたは工事完了から6ヶ月以内に居住の用に供すること
③床面積が50m2以上であること
④店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
⑤借入金の償還期間が10年以上であること
⑥既存住宅の場合、以下のいずれかを満たすものであること(一般住宅のみ)
 ⅰ)木造    …築後20年以内
   マンション等…築後25年以内
 ⅱ)一定の耐震基準を満たすことが証明されるもの
 ⅲ)既存住宅売買瑕疵保険に加入していること
⑦合計所得金額が3,000万円以下であること
⑧増改築等の場合、工事費が100万円以上であること 等


※中古住宅の場合は要件が一部異なる

この適用を受けるためには、確定申告をする必要がある。会社員(給与所得者)の場合でも初めて受ける年に確定申告を行うが、翌年以降は会社に必要書類を提出すれば確定申告は不要となる。

入居時期が2014年4月から2021年12月までの最大控除額は、10年間で、一般住宅の場合は400万円、認定住宅といわれる長期優良住宅や低炭素住宅の場合は500万円に。ただ、これは消費税率が8%または10%の場合に限っての適用となり、消費税の経過措置により旧税率(5%)が適用される場合や、中古住宅売買(消費税が非課税)の場合は入居時期を問わず、最大控除額が一般住宅で200万円、認定住宅で300万円となることが注意点だ。

そして、消費税率が10%になった2019年10月、住宅取得対策として、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に入居する場合は、控除期間が13年間に延長となる特例措置が行われることに。延長された3年間は、ローン残高(上限4,000万円)の1%、あるいは建物購入価格(上限4,000万円)の2/3%のうち小さい額が適用される。

今回、この「2020年12月31日まで」というのが問題となっているのである。新型コロナウイルス感染症による影響で設備などの納入がされないことで入居が遅れるとなると、この日付に間に合わない可能性が出てきているのだ。

住宅ローン減税特例措置の要件について緩和策が発表に

せっかくの住宅ローン減税の特例措置を受けられなくなるのではないか――。そんな不安の声が上がるなか、国土交通省から4月7日に「住宅ローン減税の適用要件の弾力化について」という発表があった。

新型コロナウイルス感染症の影響により、特例措置の要件であった、2020年12月31日までの入居期限に遅れた場合でも、要件を満たせば2021年12月31日までに入居すればよいというものだ。

その要件としては、注文住宅を新築する場合は2020年9月末までに、分譲住宅・既存住宅を取得する場合と増改築等をする場合は2020年11月末までに契約が行われていることとなる。

また、既存住宅を取得後に行った増改築工事などが新型コロナウイルス感染症の影響があり、入居が遅れた場合でも、既存住宅取得の日から5ヶ月後まで、あるいは関連税制法案の施行の日から2ヶ月後までに契約がされていればよいというようになる。

ただし、この措置は関連税制法案が国会で成立することが前提となっているが、このまま施行されれば、対象の人々にとってひとまず安心できることだろう。

〇国土交通省「住宅ローン減税」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html

出典:国土交通省「住宅ローン減税の適用要件の弾力化について(新型コロナウイルス感染症関係)」</BR>https://www.mlit.go.jp/common/001339436.pdf出典:国土交通省「住宅ローン減税の適用要件の弾力化について(新型コロナウイルス感染症関係)」
https://www.mlit.go.jp/common/001339436.pdf

次世代住宅ポイント制度の申請受付期間も延長に

2020年3月31日までが期限だった「次世代住宅ポイント制度」も、申請受付期間延長の発表がなされた2020年3月31日までが期限だった「次世代住宅ポイント制度」も、申請受付期間延長の発表がなされた

住宅ローン減税の控除期間3年延長とともに導入された「次世代住宅ポイント制度」についても、新型コロナウイルス感染症の影響があった場合の申請受付期間を延長すると発表があった。

次世代住宅ポイント制度とは、消費税率10%で一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能などを有する住宅や家事負担軽減に資する住宅の新築・リフォームを行う場合を対象に、さまざまな商品などと交換可能なポイントを付与すること。新築は最大35万円相当、リフォームは最大30万円相当のポイントに。若者・子育て世帯がリフォームを行う場合は特例も設けられた。

このポイント発行申請は、2019年6月3日から開始し、2020年3月31日までが期限だった。ところが、新型コロナウイルス感染症の影響により事業者から受注や契約を断られ、2020年3月31日までに契約できないという案件が発生してしまった。

そこで、2020年3月31日までに契約できなかった場合に限り、4月7日から8月31日までに契約を行った場合、ポイントの申請が可能に。申請にあたっては、契約ができなかった理由の申告が必要で、ポイント発行対象となる性能を証明する書類や工事前後の写真などの提出も要る。工事完了前でも、請負契約の締結(分譲住宅の場合は売買契約)以降、必要な書類がそろい次第、申請できるが、工事完了後の報告期限までに完了報告書類を提出しなければならない。

なお、申請期限前でも予算額に達した場合は終了となる。

本来、マイホームの取得は心が浮き立つものだ。しかし、新型コロナウイルス感染症により、これからの生活がどうなるのか不安も大きくなっている。そんななかで、緩和策が考えられていることに望みをつなげたい。

※2020年5月1日、国土交通省は「入居が遅れたことを証する書類」の様式を公開。
http://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000154.html

参考文献:国土交通省「新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言を踏まえた工事及び業務の対応について」
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001339762.pdf

国土交通省「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う建築設備の部品供給の停止等への対応について」
https://www.mlit.go.jp/common/001331387.pdf
    
次世代住宅ポイント制度[新型コロナウイルス感染症対応]」
https://www.jisedai-points.jp/

2020年 04月30日 11時05分