一時的な需要に活用が期待されるトレーラーハウス

東京五輪開催中は、ホテルや旅館などの宿泊施設が大幅に不足することが懸念されている。2019年は台風や豪雨など多くの自然災害が発生し、被災者向けの住宅の供給が急がれた。こういった、建物の一時的な利用の需要に対して選択肢のひとつとなり得るのが「トレーラーハウス」だ。昨今は、一般的な住宅より比較的安い金額で手に入り、移動もできることから一般消費者からも注目を集めている。今では認知率の高いトレーラーハウスだが、これまでの歩みは平坦ではなかったようである。

「日本にトレーラーハウスがはじめて輸入されたのは1990年ごろのことで、新しいアウトドアレジャーとして広がりました。当時は別荘地などに設置されることが多かったようです。1995年の阪神・淡路大震災の際に、被災者の方向けにトレーラーハウスを提供しようとしましたが、建築行政から許可が下りませんでした。そのころから、トレーラーハウスは建築物なのではないか、タイヤが付いているから建築確認がいらないというのは脱法行為だ、という声が聞かれるようになってきました」と話すのは、非営利型一般社団法人 日本トレーラーハウス協会 代表理事の大原邦彦氏。

そういった定義が曖昧な状況から、現在に至るまでどういった経緯があったのだろうか。

トレーラーハウスが保護猫の譲渡会場に。ショッピングセンターや店舗などの一部空間でも、トレーラーハウスなら用途が広がる<br>(写真提供はすべてトレーラーハウスデベロップメント株式会社)トレーラーハウスが保護猫の譲渡会場に。ショッピングセンターや店舗などの一部空間でも、トレーラーハウスなら用途が広がる
(写真提供はすべてトレーラーハウスデベロップメント株式会社)

明確な基準のない状況から、法整備がされるまで

東日本大震災後に、宮城県に設置されたトレーラーハウス東日本大震災後に、宮城県に設置されたトレーラーハウス

その後、2002年の建築基準法(平成14年日本建築行政会議)に「車両を利用した工作物」という項目が登場する。バス、キャンピングカーやトレーラーハウスなどのうち、下記のとおり、「土地への定着性があるものについては建築物と見なす」としているのだ。

建築物として取り扱う例
○トレーラーハウス等が随時かつ任意に移動することに支障のある階段、ポーチ、ベランダ、柵等があるもの。
○給排水、ガス、電気、電話、冷暖房等のための設備配線や配管等をトレーラーハウス等に接続する方式が、簡易な着脱式(工具を要さずに取り外すことが可能な方式)でないもの。
○その他、規模(床面積、高さ、階数等)、形態、設置状況等から、随時かつ任意に移動できるとは認められないもの。


なお、たとえ設置当時は定着性がなかったとしても、その後に土地への定着性が認められた場合には、建築物として取り扱うことが適切であるとされている。

平成24(2012)年には、制度改正が行われた。平成23(2011)年に発生した東日本大震災以降、トレーラーハウスを店舗や公共施設などに利用したいという要望が増え、それに国土交通省が応えたのだ。
「このトレーラーハウスの運搬に関わる制度改正により、車幅2.5メートル以上(保安基準第2条の制限を超える)のトレーラーハウスは、基準緩和の認定を受けたうえで「特殊車両通行許可」を取得することで運行が可能になりました。かつ、運行時には速度の制限や車両の前後への誘導車の配置など、運行の安全性を確保する必要があります。」と、大原氏。

さらに、平成25(2013)年には、先に挙げた日本建築行政会議に建築物として認める事例について追記された。前述のとおり、「随時かつ任意に移動できるとは認められないもの。」は建築物としてみなされるが、それに「臨時運行許可(仮ナンバー)や特殊車両通行許可等を受けたことだけでは、「随時かつ任意に移動できるもの」との判断はできない。」という補足が追加されたのだ。

トレーラーハウスの法的基準をまとめると

トレーラーハウスけん引時の様子。移動に際してもルールの遵守が必要だトレーラーハウスけん引時の様子。移動に際してもルールの遵守が必要だ

整理しよう。まずは、トレーラーハウスが建築物かどうか判断される基準は前述のとおり、土地への定着性の有無である。大前提として任意かつ適法に移動が可能でなければ建築物となる。かつ、下記をすべて満たすものは、建築物ではない、ということになる。

○トレーラーハウス等が随時かつ任意に移動することに支障のある階段、ポーチ、ベランダ、柵等がない。
○給排水、ガス、電気、電話、冷暖房等のための設備配線や配管等をトレーラーハウス等に接続する方式が、簡易な着脱式(工具を要さずに取り外すことが可能な方式)のもの。
○その他、規模(床面積、高さ、階数等)、形態、設置状況等から、随時かつ任意に移動できるもの。

さらに、移動に際しては、その大きさにより下記のルールが適用される。

〇車幅2.5メートル未満(保安基準第2条の制限内)のトレーラーハウス
車検の取得が必要
〇車幅2.5メートルを超える(保安基準第2条の制限を超える)トレーラーハウス
基準緩和の認定を受けたうえで「特殊車両通行許可」を取得する

トレーラーハウスに関する法改正などが今後行われる可能性があることと、また自治体によっても判断が分かれる点もあり、興味のある方は国土交通省や自治体などの関連情報を調べてみてほしい。

広がるトレーラーハウスの活用

日本トレーラーハウス協会では、法令を遵守したトレーラーハウスを推進し、情報発信をしている。また協会理事の大原氏はトレーラーハウスデベロップメント株式会社の代表取締役社長でもあり、さまざまトレーラーハウスの開発・提供もしている。昨今では、意外な用途でのトレーラーハウスの問合せが増えているようだ。

トレーラーハウスデベロップメントの企画開発部は、「改正健康増進法の全面施行を2020年4月1日に控え、自治体や企業などから喫煙トレーラーSMOKING CUBE(スモーキング キューブ)の問合せが増えています。喫煙スペースを設けたくても場所がない、新しく作れないなどの場合であっても、移動ができるトレーラーハウスであれば導入のハードルが下がります。プラズマ脱臭機がたばこの煙・有害ガスを吸気・浄化し、きれいな空気を排気することが可能になり、分煙環境が整備され快適だと評判です。」と話す。トレーラーハウスデベロップメントは、建築確認申請不要、車検付きの喫煙トレーラー以外にも、同様のシリーズで事務所やホテル、トイレ、店舗などに利用できるトレーラーハウスも提供している。

今後のホテル需要増や喫煙所の確保など、さまざまな用途で注目を集めそうなトレーラーハウス。法的な設置基準や移動に際してのルールを把握し遵守したうえで活用すれば、トレーラーハウスの文化はさらに広がっていくだろう。

取材協力:
非営利型一般社団法人 日本トレーラーハウス協会
http://www.trailerhouse.or.jp/

トレーラーハウスデベロップメント株式会社
http://www.trailer-house.co.jp/

トレーラーハウスの活用事例<br>
(左上)千代田区に設置された喫煙トレーラー<br>
(右上)観光案内所<br>
(左下)カフェ店舗<br>
(右下)ビアガーデントレーラーハウスの活用事例
(左上)千代田区に設置された喫煙トレーラー
(右上)観光案内所
(左下)カフェ店舗
(右下)ビアガーデン

2020年 01月27日 11時05分