10回目をむかえた「U-35」。今年は建築史家 倉方俊輔氏が選者

AAF アートアンドアーキテクトフェスタが主催する「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2019」。2019年は10/18~28で開催されたAAF アートアンドアーキテクトフェスタが主催する「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2019」。2019年は10/18~28で開催された

2019年10月18日~10月28日の間、大阪市北区グランフロント大阪にある「うめきたシップホール」にてAAF アートアンドアーキテクトフェスタが主催する「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2019」が開催された。

今回で10回目をむかえたこの展覧会は、ひと世代上の建築業界で活躍する識者・建築家がこれからの活躍が期待される 35歳以下の出展候補者を全国から募り、毎年選者を変えて選出される建築作品の展示会である。その目的は、「これからの活躍が期待される若手建築家に発表の機会を与え、日本の建築の可能性を提示し、建築文化の今と未来を知る」というもの。出展作品の中から優秀な作品を選出し、Under 35 Architects exhibitionの Gold Medal賞を授与している。

今年は、建築史家の倉方俊輔氏による審査を経て選出された7点の建築作品が展示された。
7点の選出作品と今年のGold Medal賞の作品とともに、倉方俊輔氏と受賞者のインタビューを紹介したい。

7人の若手建築家の作品①

2018年11月より公募による募集を開始、多くの応募者の中から選者をつとめる倉方氏により7組の作品が選出された。
7組と作品は、高田一正+八木祐理子(※以下、敬称略)《PROJECTS Ø》、秋吉浩気《まれびとの家》、柿木佑介+廣岡周平《宝性院観音堂》、伊藤維《北越谷の住宅》、百枝優《桜並木の葬祭場》、津川恵理《Multiple Perception》、佐藤研吾《「工作」、あるいは”わざわざ”と読んでみる「技術」 》である。

《PROJECTS Ø》は、デンマークのコペンハーゲンの水上空間を都市の公共空間として提案したもの。公共空間を構成する要素をCultural/Social/Commercialの3つの側面から捉えて、水上のパビリオンを提案している。文化的側面の浮遊する茶室が印象的な作品だ。

《まれびとの家》は、富山県南砺市利賀村の限界集落化と呼ばれる社会問題を抱える地域で現代の合掌造りのゲストハウスを建てるという取り組み。地域の木材と伝統とデジタルを駆使することで「宿泊と定住の間のような家の持ち方」をもデザインした。

《宝性院観音堂》は日光街道沿いに古くからある寺院の新しいお堂の計画。参道・駐車場も含めた配置計画も考え、地域の拠点としての現代的な宗教施設の在り方を目指したという。

展示会内の様子。写真左から、高田一正+八木祐理子《PROJECTS Ø》、秋吉浩気《まれびとの家》</br>柿木佑介+廣岡周平《宝性院観音堂》(photo©Satoshi Shigeta)展示会内の様子。写真左から、高田一正+八木祐理子《PROJECTS Ø》、秋吉浩気《まれびとの家》
柿木佑介+廣岡周平《宝性院観音堂》(photo©Satoshi Shigeta)

7人の若手建築家の作品②

《北越谷の住宅》は、共働き家族のための郊外住宅。仕事や趣味、アクティビティを含めた家族の行為の断片をちりばめ、仕切られながらも様々に繋がる空間を設計している。シンプルな形状は残しつつ、建築要素をハイブリッドに重ねた住宅だ。

《桜並木の葬祭場》は、福岡にある「雑餉隈桜並木通り」に隣接した敷地に計画中の葬祭場。木造の方杖架構を桜並木に見立てて全体を構成。人々の想いが集う建築を周辺環境も交ぜ合わせて一体化させている。

《Multiple Perception》は、展示会をひとつの敷地として捉えた際の展示としての新たな建築を考案。複数の展示会の例で、導線と鑑賞、可変的な視認性を掛け合わせて、公共の場に具象的な解をもたない環境原理を体現した作品。

《「工作」、あるいは”わざわざ”と読んでみる「技術」 》は、日本から遠く離れたインドの地で人々の生活に合わせた建築を追求。「道具・家・芝居・学校」という4つのくくりを仮定し、それぞれの領域を横断するプロジェクトを企て、日本とインドで取り組んだ。

展示会内の様子。写真左上)伊藤維《北越谷の住宅》写真右上)百枝優《桜並木の葬祭場》</br>写真左下)津川恵理《Multiple Perception》写真右下)佐藤研吾《「工作」、あるいは”わざわざ”と読んでみる「技術」 》(photo©Satoshi Shigeta)展示会内の様子。写真左上)伊藤維《北越谷の住宅》写真右上)百枝優《桜並木の葬祭場》
写真左下)津川恵理《Multiple Perception》写真右下)佐藤研吾《「工作」、あるいは”わざわざ”と読んでみる「技術」 》(photo©Satoshi Shigeta)

2019年のGold Medal賞は秋吉浩気氏「まれびとの家」

うめきたシップホールのU-35展示会場にて、「まれびとの家」展示物と秋吉氏うめきたシップホールのU-35展示会場にて、「まれびとの家」展示物と秋吉氏

その中で2019年のGold Medal賞を受賞したのは、建築家でVUILD株式会社代表取締役CEOの秋吉 浩気氏「まれびとの家」だ。
受賞した秋吉氏に「まれびとの家」についてインタビューさせていただいた。

-このプロジェクトをはじめるきっかけは?
「最初は、森林資源利活用の観点で、富山県南砺市利賀村に関わることになりました。地方の過疎化・高齢化が進み、いわゆる、限界集落化と呼ばれる社会問題が生じていますが、利賀村もまさにそのひとつ。どの地域でもそうでしょうが、そこで住民を増やしたいと移住者獲得に力を入れています。けれど、現実的に都会で仕事もある人が移住・定住を決めるというのは、ハードルが高く、なかなか進まないのが現状だといえます。一方でこの土地の魅力的な人々や風景、文化と出会い、暮らしたいと惹かれる気持ちがあるのも事実です。
そこで、稀に訪れる自分の家と思えるような住まい。別荘のような、富裕層がたまに訪れるための家ではなく、多くの顔が見える人たちが1つの家を所有するような仕組みです。まれびとの家という新しい“住まい方のコンセプト”がこのプロジェクトの核です」

-建築物の造形を合掌造りにしたのは?
「この地域には共同体を運営していく相互扶助の仕組みである“結”の文化が根付いています。また、その表れとして美しい五箇山合掌造り集落があります。この場にある住まいとして合掌造りがふさわしいと感じました」

-プロジェクトのポイントは何ですか?
「限界集落化、林業衰退といったことと同じく、職人不足といった問題も抱えています。それをデジタル時代における技術力で新しい木の流通・生産システムの構築と、それによって生まれる建築自体がどうあるべきなのかを問い直す必要があると考えていました。
今回のプロジェクトでは、建築物そのものだけでなくそのプロセスとして、高度な技術が可能であるにもかかわらず安価であるデジタルファブリケーション(※コンピュータと接続されたデジタル工作機械によって、3DCGなどのデジタルデータを様々な素材から切り出し、成形する技術のこと)を民主化することで、地域生産を活性化させる取り組みのひとつです。

これにより、①生産者自身が加工技術を活用できるようになる、②非規格材に付加価値を与え、地域の利益を増やすことができる、③全国の中山間村地に製品データを共有することができる ということが実現できます。ソーシャルとデジタルを組み合わせてバランスをとりながら、地域の循環につなげていきたい」

いわゆる「建築の可能性」を感じた展示作品たち

選者の倉方氏は、
「僕自身は建築家ではなく、建築史を学んできた人間です。だからこそ、今回の展覧会では建築の可能性として、その時点での建築物の価値だけではなく、“過去から未来につながる”、“人や土地に拡がる”という、建築の可能性と未来、イノベーションを起こせる建築であるかということに重きをおいて拝見しました。そして、もちろんその建築物として“ものの形に説得力がある”ことを念頭に選出させていただきました。

選出した作品、またGold Medal賞の作品はすべて社会の中の建築を考えさせられる。もちろん圧倒的に尖がった作品としての建築の価値というものもあるけれども、建築が何かしらの課題の解決として作用するということも大事な側面であり、残り続け、社会を変えていくという、建築にはその力があると考えます。

今回、Gold Medal賞をとった“まれびとの家”は、その流通や運用も設計され、誰でもどこでも、簡単にできるという拡がりを生みながら、それでもさらに美しい存在感のある建築物をつくっている。そこが評価のポイントでもありました。

これからの建築、そして建築家はモノを生み出しながら作用させていく力、人や社会を巻き込んでいける力をもってほしい。コラボレーションや協働によってその力がつくこともあるだろうと考えます。そのために、視野を拡げ、学び続け、人とつながり、イノベーションを起こしてほしい、というメッセージでもあります」という。

すでに会期を終えた展覧会であるが、選出作品の詳細や講評は、本になっている。
来年も35歳以下の若手の建築家たちが、どういった作品をつくりだすのか、注目していきたい。

■取材協力
AAF 特定非営利活動法人(NPO法人)アートアンドアーキテクトフェスタ
https://www.aaf.ac/

■書籍
『U-35 Under35 Architects exhibision 2019 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2019』

写真左:今年の選者である建築史家、大阪市立大学准教授の倉方俊輔氏</br>写真右:2019年のゴールドメダル受賞者。VUILD株式会社代表取締役CEO 秋吉浩気氏写真左:今年の選者である建築史家、大阪市立大学准教授の倉方俊輔氏
写真右:2019年のゴールドメダル受賞者。VUILD株式会社代表取締役CEO 秋吉浩気氏

2019年 12月12日 11時05分