国土交通省は自転車通勤・通学を促進

「新しい生活様式」の実践例では、働き方の新しいスタイルとして「テレワークやローテーション勤務」「時差通勤でゆったりと」も挙げられた「新しい生活様式」の実践例では、働き方の新しいスタイルとして「テレワークやローテーション勤務」「時差通勤でゆったりと」も挙げられた

2020年5月、厚生労働省は新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を発表した。このうち、在宅勤務ができない、また通勤で公共交通機関を利用せざるを得ない人にとって関連するのが公共交通機関における実践例の「会話は控えめに」「混んでいる時間帯は避けて」「徒歩や自転車利用も併用する」だ。鉄道会社も列車内の換気が十分でない場合は窓を開けることを推奨している。東日本旅客鉄道株式会社は、リアルタイム混雑情報提供サービス「JR東日本アプリ」の対象列車・区間を2020年6月に拡大した。

そもそも自転車通勤が可能な距離には限界があり、会社の制度の整備状況によっては不可能な場合もあるが、「新しい生活様式」実践例として挙げられたものの一つ、自転車通勤についての動きを振り返ってみたい。

国土交通省は2020年6月18日、自転車通勤・通学の促進に関する当面の取組みを発表、一層の促進を図っていくという。特に推進していくというのが「企業・団体などにおける自転車通勤制度の導入の促進」「自転車通行空間の整備の推進」「シェアサイクルの拡大」の3つだ。

自転車通勤普及の鍵は導入企業の増加

自転車活用推進官民連携協議会が2019年5月31日に公表した「自転車通勤導入に関する手引き」表紙自転車活用推進官民連携協議会が2019年5月31日に公表した「自転車通勤導入に関する手引き」表紙

国土交通省は、自転車通勤導入のメリットとして、企業側には経費削減、生産性向上、イメージアップ、雇用拡大があるとし、従業員側には通勤時間短縮、身体面・精神面の健康増進の効果を挙げている。

とはいえ、制度の見直しなどやるべきことは多い。自転車活用推進官民連携協議会は、企業が適切かつ円滑に自転車通勤を導入できるよう「自転車通勤導入に関する手引き」を公表している。そこで検討にあたって留意すべきポイントとして挙げられているのが
(1)日によって通勤経路や交通手段などが異なることを認める制度設計
(2)(1)による事故時の責任や労災認定の明確化と生じるリスクへの対応
(3)(1)を考慮した自転車通勤手当の設定
(4)自転車通勤にあたって必要な施設の整備(駐輪場など)
だ。就業規定への追加、万が一事故があった場合どこまでを労災対象とするのか、駐輪場やシャワー・ロッカールームを整備するのか…と多岐にわたる。

国土交通省は、4月3日に「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクトを創設し、同時に宣言企業の募集を開始した。宣言企業の認定基準は企業・団体または従業員が自転車通勤のための駐輪場を確保、自転車で通勤する従業員向けに安全教育を年1回以上実施、自転車で通勤する従業員の自転車損害賠償責任保険の加入を義務化の3項目をすべて満たすことだ。

昨今、都内の通勤電車はコロナ以前の通常と同等に混んできていると感じる。この状況に不安を感じている人にとって、企業の自転車通勤導入の動きは選択肢が増えることとなり喜ばしいことだろう。

東京23区内で自転車専用通行帯などの整備を推進

いざ自転車通勤が可能になったとして、気になるのが道路の整備状況だ。
交通事故の事故数は2002年以降の約10年間で5割減少したことに対し、自転車対歩行者の事故は約1割の減少と減少幅が少ないことから、自転車利用環境の整備が必要であるとし、国土交通省と警察庁との合同で「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を2012年に策定。このガイドラインでは、自転車は「車両」であるという大原則から、自転車と自動車の分離をどのように選定するかについて記載されている。

自動車の速度が50km/h超と高い道路(A)では、自転車と自動車を構造的に分離し自転車道を整備。速度が50km/h以下と低く、かつ自動車交通量が4,000台/日以下と自動車交通量が少ない道路(C)については自転車と自動車は混在通行とし、その中間の(A)、(C)以外の道路については自転車と自動車を視覚的に分離するとしている。なお、これらは参考の目安として示されており、分離の必要性は各地域において検討可能とされている。

国土交通省は、新しい生活様式の実践による自転車交通量の増加を想定し、今年度中に東京23区内において自転車専用通行帯などを整備し、直轄国道で約10km、主要都道についても約7kmと合計17kmを整備する予定だ。さらに今年の秋までに東京23区内を対象として自転車通行空間の整備計画を策定し、おおむね3年で整備するとしている。全国でも同様の整備計画を策定し、整備が進められる予定だ。

自転車専用通行帯自転車専用通行帯

シェアサイクルの利便性向上なるか

国土交通省は、シェアサイクルを自転車通勤の一つの形態として捉え、その利便性の向上を図るため、①公共用地等へのポートの設置促進、②サイクルポートへの案内看板の設置促進を行う。

海外ではシェアサイクルのサイクルポートが利便性の高い道路上に設置されるケースが多いのだが、日本の東京10区広域相互利用においては、公共用地、民地へのポート設置の割合は、おおむね4:6と民地の方が多い。公共用地への設置割合は、道路6%、公園17%、公用駐輪場内3%となっている。道路に設置できない理由しては、「道路法32条、道路法施行令7条にシェアサイクルポートの位置づけがない」として許可を受けることができない、公園への設置については「都市公園法6、7条には、駐輪場やシェアサイクルポートを設置できると明記がなく、公園管理者が設置できないと判断しているため」などがあがっており(※)、法的な整備やガイドラインの策定なども必要そうである。国土交通省は、今後、「道路上など利便性の高い場所へのポートの設置を促進する」としている。
※「シェアサイクルに関する現状と課題」2020年3月31日開催の第1回シェアサイクルの在り方検討委員会配布資料より

日本では2017年に中国資本のモバイクが日本でサービスを開始するも2020年に撤退。2018年に中国資本のofoが日本でサービスを開始するも、こちらも2018年に撤退している。広域でのシェアサイクルの定着が進むのか今後に期待したい。

2020年6月18日国土交通省発表の「自転車通勤・通学の促進に関する当面の取組について~「新しい生活様式」を踏まえ、一層の促進を図っていきます!~」より、別紙4シェアサイクルの在り方に関する検討2020年6月18日国土交通省発表の「自転車通勤・通学の促進に関する当面の取組について~「新しい生活様式」を踏まえ、一層の促進を図っていきます!~」より、別紙4シェアサイクルの在り方に関する検討

15都府県・8政令指定都市で自転車損害賠償責任保険などへの加入が義務化 保険加入を忘れずに!

ここ数年、条例により自転車損害賠償責任保険などへの加入を義務化する動きが全国に広がっている。東京都では2020年4月1日から条例が改正され義務化された。自転車事故により1億円近い高額の賠償金が課せられたケースも発生しており、運転には十分注意するとともに他者に大きな損害を与えかねないことを留意し保険には加入しておきたい。自転車保険以外にも自動車保険(特約)、火災保険(特約)で「個人賠償責任保険」が付帯されている可能性がある。賠償資力が十分に確保されているかも併せて確認したい。

基本的なことではあるが、「自転車安全利用五則」を守って安全に運転したい。
「自転車安全利用五則」
(1)自転車は、車道が原則、歩道は例外
(2)車道は左側を通行
(3)歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
(4)安全ルールを守る(飲酒運転、2人乗り、並進の禁止、夜間はライトを点灯、信号を守る、交差点での一時停止・安全確認)
(5)子どもはヘルメットを着用

国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」より国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」より

2020年 07月25日 11時00分