東京都は2000年比30%減の省エネ目標を掲げている

ここ数年、地球の気候変動を実感する機会が増えている。たとえば夏の気温。気象庁の歴代最高気温ランキングを確認すると、1位41.1℃(2018年・熊谷市)、2位41.0℃(2018年・美濃市など3地点)、5位40.9℃(2013年・下呂市)といったように近年に集中している。

東京都では、このような気候変動への対策として「2030年までに東京の温室効果ガス排出量を2000年比で30%削減する」という目標を掲げている。そこで課題となっているのが家庭のエネルギー消費量だ。都内全体のエネルギー消費量のうち、家庭部門は約3割と決して少なくない。しかし、都内全体のエネルギー消費量は近年減少傾向にあるのに対して、家庭部門だけが増加しているのだ。

温室効果ガスは、われわれのエネルギー消費によっても排出される。したがって、目標を達成するためには家庭部門の省エネ対策が不可欠といえるだろう。そこで東京都は、住宅の省エネ化を推進するために「東京ゼロエミ住宅」の基準を設定。導入促進事業を開始している。

ZEHよりも厳しい「東京ゼロエミ住宅」の認証基準

「東京ゼロエミ住宅」とは、住宅の高い断熱性を確保したうえで設備の効率化によって、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指す住宅だ。ちなみにゼロエミとは、ゼロエミッションの略で、消費や生産などによって発生する廃棄物をゼロにしようとする考え方である。

これに似たものとして国が推進している「ZEH(ゼッチ)」(ゼロエネルギーハウス)がある。こちらは高い断熱性を確保した建物に、太陽光発電システムを設置することで光熱費の収支を実質ゼロ以下にするものだ。このZEHでも温室効果ガスの排出量の低減につながる。しかし、都内では住宅の建築費も地価も高額なため、どうしても狭小住宅になりがちで、さらに斜線制限に合わせた屋根形状になるため、十分な容量の太陽光発電システムを設置することが難しいケースが多い。実際にZEHの普及率は全国平均で約3%なのに対して都内は約1%となっている。

このように都内でのZEH普及は困難であることから、「東京ゼロエミ住宅」の認証基準は、太陽光発電システムを除いた省エネ性能を設定するとともに、ZEHの基準よりもさらに高いものになっている。具体的には国が建築物のエネルギー消費性能の向上のために定めた基準よりも、一次エネルギー消費量を30%程度削減できるというもの。これはZEHの20%を上回る数値だ。

東京ゼロエミ住宅は、ZEHよりもさらに多くの一次エネルギー消費量削減を目指している。ただし、太陽光発電システムの設置は必須としていない(出典:東京都環境局「東京ゼロエミ住宅の手引」)東京ゼロエミ住宅は、ZEHよりもさらに多くの一次エネルギー消費量削減を目指している。ただし、太陽光発電システムの設置は必須としていない(出典:東京都環境局「東京ゼロエミ住宅の手引」)

東京ゼロエミ住宅の「仕様規定」と「性能規定」

都はその省エネ性能を実現するために、「仕様規定」と「性能規定」を設定している。前者は木造住宅のみに適用されるもので「この性能を有する部材を使用してください」ということ。一部を紹介すると以下のようなものだ。

窓:省エネ建材等級(窓ラベル)4★=熱貫流率(U値)2.33W/m2・K以下の性能
照明:全室LED
空調機:高効率エアコン(省エネラベル4★または5★)
※標準的な仕様を示すもので、この仕様以上とすることは可能

後者は木造住宅以外のマンションなど集合住宅(RC造等)でも適用可能なもので、一定の必須仕様を満たしたうえで、外皮平均熱貫流率(UA値・断熱性能)0.7以下といった性能値も満たすことが求められる。

そして東京ゼロエミ住宅の認証を受けるには、認証審査機関へ申請書を提出し、審査と工事完了時に現地検査を受ける必要がある。審査の結果、上記規定に適合していた場合は、設計段階では設計確認書、工事完了段階では認定書が交付される。なお、申請手続きは建築を依頼する会社などが代行することも可能だ。仕様に関することなどは非常に専門的なので、この方法が一般的となるだろう。

「東京ゼロエミ住宅」仕様基準の概要。断熱材や照明などさまざまな部材・設備の仕様が指定されている(出典:東京都環境局「東京ゼロエミ住宅の手引」)「東京ゼロエミ住宅」仕様基準の概要。断熱材や照明などさまざまな部材・設備の仕様が指定されている(出典:東京都環境局「東京ゼロエミ住宅の手引」)

一戸あたり70万円の助成制度も用意

「東京ゼロエミ住宅」の新築に対しては、その費用の一部を助成する制度も設けられている。事業内容は以下のようなものだ。

●助成対象住宅
都内の新築住宅(一戸建て・集合住宅)
※床面積の合計が2,000m2未満

●助成対象者
新築住宅の建築主(個人・事業者)

●助成金額
一戸建て:70万円
集合住宅:30万円/戸
※太陽光発電システムを設置する場合は、10万円/kWの追加補助あり(上限100万円)

●おもな助成条件
「東京ゼロエミ住宅」の認証を受けた新築住宅

●事業期間
2019年度から2021年度(助成金の交付は2022年度まで)

●申請受付開始日
2019年10月1日から
※日程や申請に関する情報は下記のページから確認できる
東京ゼロエミ住宅導入促進事業
https://www.tokyo-co2down.jp/individual/subsidy/tokyo_zero_emission_house/index.html

●申請受付窓口
公益財団法人東京都環境公社「東京都地球温暖化防止活動推進センター」
https://www.tokyo-co2down.jp/

地球環境のためだけでなく、自分や家族の健康のためにも普及を

「東京ゼロエミ住宅」のメリットは、温室効果ガスの削減だけではない。冷暖房費を低減できるうえに、建物内の温度差も少なくなるのでヒートショックや熱中症の予防にもつながる。また、窓や壁の結露も減るのでカビやダニの繁殖を抑制し、建材の劣化も防ぐ。つまり、より健康で快適に暮らせて長持ちする家にもなるのだ。ネックとなるのは価格だが、上記の助成制度を利用すれば負担は軽くなる。そして普及が進めば、高性能な建材や設備の価格は下がっていくはずだ。地球環境のためだけでなく、自分や家族の健康で快適な暮らしのためにも「東京ゼロエミ住宅」が普及していくことを期待したい。

2019年 10月15日 11時05分