月額1万円以上かかる電気代を少しでも減らすには

各世帯において毎月必ずかかってしまう電気代。総務省統計局の家計調査によると2018年の4人家族の平均額は年間14万628円、ひと月あたり1万1,719円だった。

ほとんどの人はこの金額を少しでも減らしたいと思うだろう。そんなとき、マンション住まいであれば、「高圧一括受電」という方式が利用できる。しかし2019年3月、ある542人のマンションの所有者が、2人の所有者の反対によって高圧一括受電契約を断念せざるを得なくなった、というニュースが新聞などに載った。高圧一括受電とはどういう契約なのか、どうして542人を相手に2人の所有者は契約に反対したのかなどを考えてみよう。

電気代を5~30%削減できる高圧一括受電

高圧一括受電とは、従来各戸ごとに結んでいた低圧電力契約を、マンションの管理組合やオーナーがまとめて安価な高圧電力契約に変更する方法だ。これにより電気代を5%から30%削減できる。

同方法は、2005年4月から、契約電力が50kW以上(高圧)ならば新電力会社(Power Producer and Supplier・通称PPS)と契約できるようになったことで利用可能になった。マンションの場合は、大体40戸以上の規模だと50kW以上に当てはまり、この契約が可能になるケースが多い。そのためマンションの高圧一括受電契約数は年々増加傾向で、資源エネルギー庁の資料によると2011年に10数万戸だった契約数は、2018年には60万戸程度になっている。

高圧一括受電とは、従来各戸ごとに結んでいた低圧電力契約を、マンションの管理組合やオーナーがまとめて安価な高圧電力契約に変更する方法。電気代を5~30%削減できる高圧一括受電とは、従来各戸ごとに結んでいた低圧電力契約を、マンションの管理組合やオーナーがまとめて安価な高圧電力契約に変更する方法。電気代を5~30%削減できる

初期費用や各業務の問題を解決する一括受電サービス会社

ある程度の規模のマンションならば電気代を削減できる高圧一括受電だが、その導入には次の条件を満たす必要がある。

・一般電気事業者の変電設備を自前のものに変更する(費用は2,000万円前後)
・検針メーターとブレーカーを交換する
・従来一般電気事業者が行っていた検針から請求までの業務を自前で行う

費用は電気代が30%程度削減できた場合は10年前後で回収可能なようだが、最初に2,000万円前後の現金を用意できるケースは極めて少ないはずだ。さらに検針や請求に関しては、住人などの素人が行うことは考えにくい。

このような問題に対応する事業者が存在する。それが一括受電サービス会社だ。この会社が変電設備を設置し、検針などの業務も請け負う。設備費用は毎月の手数料に含まれているので、管理組合や物件オーナーは初期費用を用意する必要がなくなる。そのため導入事例の多くは、一括受電サービス会社を利用しているようだ。

高圧一括受電を導入する際は、今まで使用していた一般電気事業者の変電設備を自前のものに変更する必要がある。<br>費用は2,000万円前後高圧一括受電を導入する際は、今まで使用していた一般電気事業者の変電設備を自前のものに変更する必要がある。
費用は2,000万円前後

通常3年に1回の割合で発生する停電

では、実際に高圧一括受電を導入する手順を考えてみよう。分譲マンションを例にすると以下のような流れになる。

理事会で検討
   ⇓
PPSまたは一括受電サービス会社説明会
   ⇓
総会決議
   ⇓
契約締結
   ⇓
導入工事

ここで起こり得るのが住民の反対だ。実は高圧一括受電を導入すると、設備の法定点検のため、通常3年に1回の割合で1時間から2時間の停電が発生する。このことで次のような事態が懸念される。

・高齢者や乳幼児の医療機器等の停止
・エレベーターの停止による利便性の低下、救急搬送や消化ポンプ等への対応
・オートロックやインターホン等の停止によるセキュリティの低下
・給水ポンプ停止による水道水、トイレの使用停止
・冷蔵庫やエアコンの停止
・パソコンやインターネット、電話の停止

冒頭の2人の反対もこの停電がネックとなった。「サービス導入時や定期点検時に停電が予想され、持病への対応や自宅での仕事に不安がある」として導入に反対したのだ。分譲マンションへの工事には、全戸の同意が必要になるので、結局その計画は頓挫してしまった。

これ以外にも高圧一括受電の導入を巡るトラブルは少なからず起こっている。たとえば、賛成と反対の意見対立がエスカレートし、管理組合が反対住民の物件の競売を求めて訴えたり、反対住民が管理組合の理事長に慰謝料を求める訴えを起こすといった事例もある。

このように近くに住む者同士が対立する生活は、非常につらいものだ。とにかく地道に対話を重ねて双方が納得できる結果に至る努力が必要だろう。

小規模物件に向けた低圧一括受電も存在する

ちなみに小規模マンションやアパートを対象とした低圧一括受電という契約も存在する。管理会社やオーナーがまとめて契約を締結し、電気料金の削減を狙うのは高圧一括受電と同じ。異なるのは、文字通り調達する電力が低圧であることだ。したがって変電設備は必要ない。

ただし、低圧電力は普段我々が使用しているものと同じなので、いくらまとめて契約しても高圧ほどは安価にならない。そこで最近は物件の屋根などに太陽光発電システムを設置し、低圧一括受電契約と組み合わせることで、入居者に安価な電力を供給する試みなどが実施されている。高圧一括受電に限らず、さまざまな試みで電力がリーズナブルに使用できる仕組みが構築されていくことを期待したい。

2019年 04月15日 11時00分