飛行機をヒントにした構造がクールに映る

エアロハウスという建物が、民泊や簡易宿所で注目されている。その独自のデザイン性が、外国人にクールに映るのだろう。都内品川区や香川県三豊市の物件がAirbnb(エアービーアンドビー)のコマーシャルやコラボ企画にも登場している。

エアロハウスの名前の由来は、エアーからきていて、飛行機の構造体をヒントにしている。同一木材で4辺を強固に繋いだフレームを45cmから1mの間隔で並べ、木材の表面は、構造用合板で覆い固めたセミモノコック・ボックス構造だ(下記のイラスト図を参照)。強固なうえに内部に柱が必要ない。スケルトンインフィルというコンセプトのもと、構造体以外の内装の変更は自由自在で、間取りや階層さえも変更でき、ライフスタイルの変化にも対応する。長寿命住宅を目指しているのだ。
エアロハウスには3つのタイプに分かれ、柱脚がついて傾斜地にも建てられるα(アルファ)型、ベタ基礎の上に3階建も可能なβ(ベータ)型、移動を前提にしたμ(ミュー)型がある。

従来にはなかった構造の木造建築物を開発した建築家の村井正氏に、エアロハウスの開発の経緯や目的、どのような事例が進んでいるのか話をうかがった。
ちなみに私の家はエアロハウスで、β型が昨年3月に竣工した。1階がシェアハウスで2階がイベントスペース、ロフトが寝室と収納になっている。

雑誌の表紙にもなった斬新なデザインのエアロハウス雑誌の表紙にもなった斬新なデザインのエアロハウス

開発は、現代の住宅業界へのアンチテーゼからだった

原宿のオフィスで作業する村井氏原宿のオフィスで作業する村井氏

このエアロハウスを作った建築家の村井正氏は、以前は、磯崎新氏の設計事務所や日建設計の国際部署に在籍し、海外の大型案件の実績が多くある。独立後も大型案件を手がけていたが、基本設計を終えると、次の担当部署に引き継ぎ、数年後に完成した写真が送られてくるという流れだった。そうなると設計と実際の建物とにタイムラグが生じ、手がけたというリアリティさが欠けるという。そこで、もっと身近な住宅をやってみたいと思ったそうだ。

2003年に、仕事が空いたので、理想的な住まいとは何だろう?と考え、生まれたのがエアロハウスだと言う。当初は本業の片手間程度で、メインは相変わらずオフィスビルや大きい企画設計ものを継続していた。ところが、どんどんニーズが増えてきて、現在はエアロハウスが主力になっている。

さて、エアロハウス開発の過程で考えていたのが、木造住宅は27年の寿命で壊される現状への疑問だった。だから、美しい設計をするのではなく、長持ちすることを目的にし、結果、デザインというよりシステム設計の方向に進んだイメージだ。長く使えるものは何か。コンクリートで100年もたせるのも一つであり、一方で建物を動かしてリユースとして使う手もある。時代が変われば、流行も当然変わり、だから、しっかり作りこみ過ぎている場合、最悪、壊さないとならないことも。もし、移動できて、さらに再生しやすければ、残すことが可能だ。まさにエコである。

そういったコンセプトのもと、最初の設計は移動を前提にした建物となり、第1号は鉄骨にした。サイズは、12m×3mの36平米になり、フォークリフト3台で移動できる仕組みになった。太陽熱の集熱装置も装着し、可能性を非常に感じたという。

エアロハウスが木造になったのは、構造計算のエキスパートの助力があった

しかし、第1号物件を計測したところ、鉄骨は断熱や居住性能に問題が多く、超長期の利用には適さないことがわかった。そして同じものを木造で作ることになった。

村井氏は、たまたま熱伝導率の記事を読んだことがきっかけで、木に興味を覚えたという。金属は熱伝導率が高く、プラスチックは熱伝導率が低い。一方、木はその熱伝導率が人間の体から発する熱と同じということが書いてあった。熱くもなく冷たくも感じないから心地よいのだ。木の可能性を理解してからは、木造派に転向した。

構造設計をアラン・バーデン氏に依頼。ところが最初はアルミを提案された。木は確認申請の証明が難しく、当時は構造計算ができないと考えられていたからだ。アラン・バーデン氏を説得し、耐力テストを行ってもらい、木造のエアロハウスの道が開けることになった。

村井氏は、計画案を建築雑誌で発表するかわりに、一般誌であるカーサブルータス1誌だけにメールをしたところ掲載されることになった。それを見た読者が、自分で作ってみたいと連絡があり、エアロハウスのプロジェクトが進んだ。そして、2004年のセルフビルドが、エアロハウス第1号案件となったのだ。当時、その建物が、あるライフスタイル誌の表紙に活用され、地下鉄の駅や山手線の車内にポスターが貼られ、メールなどの問い合わせが一気に増えたと当時を振り返る。

木材のラーメン構造が連続しているのが特徴だ木材のラーメン構造が連続しているのが特徴だ

自由度が高いから多様化するニーズを反映できる

かくしてエアロハウスは、意匠性よりも構造的な魅力が広がり、施主がどう活用したいかが重要といえる。だから村井氏は、エアロハウスをプラットホームにすぎないと言いきる。

たまたまイギリスの友人を以前、エアロハウスに案内したところ、日本の民家のようだと言われ、ビックリしたと振り返る。それまでエアロハウスは、理想的な住まいをつくるためのエンジニアリングとしての回答としか考えていなかった。確かに、民家は、太い柱と梁があるだけのシンプルな構造で、広い空間があるだけ。それを襖等によって仕切っているに過ぎず、住人の使い方によって部屋を作っていくという発想だ。さらに、土壁は塗り替え、屋根は葺き替えるなど、リニューアルを経て古民家は100年以上の歳月をいきる。つまり構造以外はアップデートしていく。一方、西洋では、先に寝室、ダイニング、リビングと機能があって、壁がすでに構造になっている場合もある。エアロハウスは、このように古い民家と共通点や類似点が多く、住人がどう暮らしたいかで変更が可能だ。

また、住む人の要望に応えたいと村井氏。エアロハウスは自由度が高いのでかなりの無理がきき、例えば、玄関がなくても窓から入ればいいし、台所しかない家があってもいい。逆に台所がない家、寝室のみの家、寝室がない家など、固定概念をはずすと家づくりは幅が広がる。エアロハウスの実例には、ユニークな家が多いのは、村井氏が目指したものではなく、実直に施主の要望を聞いて対応した結果そうなったという。なかには、宙に浮いてるような家や11もの段差があるフロアの家もあるそうだ。

リラックスできる場所や仕事など、11ものフロアができあがったリラックスできる場所や仕事など、11ものフロアができあがった

旅するエアロハウスは、千葉、宮崎、沖縄そして東京へ!

展示会用のブースが、最終的に都内の狭小地に家としておさまった展示会用のブースが、最終的に都内の狭小地に家としておさまった

エアロハウスは、タイニーハウスのパイオニアとも言われている。
当初から6m×6mの36平米の家、また3m×12mの36平米もあり、村井氏は、これで生活ができる快適なサイズだと、図面に落とし込んで確信していたようだ。

2010年に博報堂からの依頼で、日産リーフを家電ショーに出品する際にそれと合わせたスマートハウスが必要になり、2m×6mを3つつないだ36平米のエアロハウスを製作。翌年、宮崎県五ヶ瀬町の施設としてツーリズムの拠点に使いたいという要望があり、貸し出すことに。運搬は3つに分割して4トントラックで運んだ。陸路で、2晩かかり、現地では施行会社が立ち会い、合体させ、その後、半年間置かれたのだ。さらにその後、沖縄に向かった。大手広告代理店がコマーシャルフィルムの制作に使うためだった。

ちょうどその頃、狭小地で家を建てたいと考えていた方からメールが村井氏に届いた。間口が3.6mで、奥行きが11mという細長い狭小地にエアロハウスが建てられないかという相談だった。実際に、オフィスで会った際に、沖縄に向かったエアロハウスの模型があり、ふと、それを縦にして置いたところ、ぴったりと納まった。建ぺい率、容積率、日陰斜線を綿密に計算したところ、問題ない。もし10cm土地幅が狭ければ、成立しなかった奇跡の取り合わせであると振り返る。村井氏の目指していた移動してリユースする家が実現した瞬間だ。

その後も多くの施主の要望から、社内では様々なチャレンジが繰り返され、エアロハウスも進化してきている。今後の動きにも目が離せない。

■取材協力
ソーラーデザイン研究所:https://www.aerohouse.net

2018年 06月17日 11時00分