住まい手は住まいをどう選んできたのだろうか?

「住宅はクレーム産業だ」とよく言われる。一生の買い物…といわれ、実際にローンをはじめ多くのお金を投入する住宅に妥協をしたくない、というのは住宅購入者にとってはあたりまえのことだろう。
だが、そのため既成のモノを購入したときのように…いや、それ以上に、おのずと住まいに対して、質の高い商品・サービスを求める傾向にある。そのため、クレームを前もってヘッジするがゆえに住宅産業は均一化した質とサービスを提供しようとし、努力を続ける。
そしてそれは、反面、住まい手の選択の自由度をあらかじめ狭めてきた、とも捉えられる。

住まい手は住まいに対して「選んだが、与えられたもの」という感覚をもっていないだろうか?だからこそ「違う」と感じたときそれが"クレーム"となって現れるのではないだろうか。

住まい手がもっと住まいづくりに参加するプロセスがあれば、その意識は「与えられたもの」でなく「自分が創った住まい」になり、もっと自由度や魅力が増すのかもしれない。

品質に妥協をせず、住まいづくりに自ら参加する…その選択肢のひとつにコーポラティブハウスがある。

住まい手参加のプロセスを入れ、
建築家とつくるコーポラティブハウス

「コーポラティブはまだまだ日本ではマイノリティだが、欧米では普通になっている。エンドユーザーに正しく理解してもらいたい」と織山社長(撮影:アック東京)「コーポラティブはまだまだ日本ではマイノリティだが、欧米では普通になっている。エンドユーザーに正しく理解してもらいたい」と織山社長(撮影:アック東京)

コーポラティブハウスとは、入居希望の数世帯が共同で建てる集合住宅のことである。住まい手は、企画や設計から住まいづくりに関わり「自分たちがどう暮らしたいのか」に焦点をあてた住まいづくりをすることができる。今回、“建築家とつくるコーポラティブハウス”を提供している株式会社アーキネットの織山社長にコーポラティブハウスの意義について取材した。

住まいづくりの最初から設計に関わる…というと「なんだか大変そうだ」と感じる人がいるだろう。住まいの希望を他の人と共有しながら具現化していくプロセスは、ストレスを感じることが多そうに思う。

だが、実際はそれほど構えることはないようだ。個々の住まいの希望は”どう暮らしたいか”を素直に建築家に伝えればプライベート空間に見事に反映される。共用部分については、お互いに意見も合うのでプランも使い方もおのずとまとまる。織山氏は、「住まいづくりに希望があるのはあたりまえですから、この工程はストレスでなく、むしろ楽しいものですし、実際みなさん楽しんで住まいづくりに参加されています」と話す。そして、個々の住居の希望と共用部分の希望を叶えながら形にしていくのが、建築家の役割である、という。

織山氏がコーポラティブハウスを手掛けるきっかけは、"建築家の創る空間を一般の人に提供したい"という想いであった。住まいづくりに建築家が関わる意義については、
「建築家…というと実際の暮らしやすさとは程遠い、デザインが先行した家づくりを思い浮かべる人もいるかもしれません。でも、それは間違いです。考えられた住宅デザインというのは、実用を併せ持つ設計となっており、それが住まいの心地よさ・暮らしやすさという感覚につながります。具体的には、採光・通風・視界・多様性・自由度などを視野に入れながら、住まい手の希望を形にしていく。場所の魅力を引出し、経済性も含めて、良いプランをしつらえていく。建築家にはそういう力があります」と語る。
建築家と住まい手をつなぐ役割を考えたとき、集合住宅をつくることが街にもプラスになる…と考えたという。

コーポラティブハウスの様々な意義

コーポラティブハウスの住居模型。建物の内部は光と風の通り道が考えられ、敷地も含めて設計されているのがわかるコーポラティブハウスの住居模型。建物の内部は光と風の通り道が考えられ、敷地も含めて設計されているのがわかる

コーポラティブハウスには、さらに社会的にも様々な課題を解決する力がある、と織山氏はいう。
「個々の住居だけではなく、共用部分まで設計されたコーポラティブハウスには街並みを整えるという側面もあります。個の住居から共用部へ、そして公共へ、と敷地の外まで設計された建築は街並みの景観を損ねません。」
建築家が念入りに設計した建物は、街並みの魅力をも高める、という。

「また、敷地の有効活用にも効果があります。首都圏では、未だ木造密集地域が多く、現在の建築法規では建替えられない建物が多数存在します。災害時には、延焼の危険性がある地域です。ある程度まとまって、共同で敷地利用ができるのであれば、この問題は解決すると思います。」
様々なハードルはありそうだが、確かに一つの解決策として考えられるであろう。

“集まって住む”新しいかたち

集合住宅が継続的に住みやすい環境や機能を保つための課題として、「多数の合意形成」の難しさが挙げられる。修繕時や管理の方法など、あらゆる場面で「自分たちはどう住みたいか、住まいをどう考えているか」が問われる。そのため、HOME'S PRESSでも大規模分譲マンションの管理組合が果たす重要性を、今まで取り上げてきた。

コーポラティブハウスの場合、最初から、自分たちで土地を購入し、共同の敷地にそれぞれの想いを語りながら、個々の住居だけでなく、共有部分も含めて集合住宅を創っていく…その過程には、お互いの価値観が重なり、一緒に住まいをつくるプロセスを共有した意識が生まれる。おのずと住まいづくりに責任と主体性が生まれる。最初の住まいづくりの過程で、合意形成がある程度できているといえるであろう。

個々のプライベートな空間だけでなく、住宅は「個」と「公」の間をもっと意識するべきなのかもしれない。それは、与えられるのではなく、設計の段階からコミュニティを意識し、向き合い、考えていくことで生まれる各々の暮らしと暮らしの心地のよい「間」のようなものであり、それが美しい街並みや暮らしやすい環境に通じていく。

住まいの豊かさが街の豊かさにもつながっていく…“集まって住む”新しいかたちとして、コーポラティブハウスはひとつの選択肢であるといえる。

建築家とつくるコーポラティブハウスは、個人の住まいの豊かさのみならず、</br>街の環境を豊かにする可能性をもっている建築家とつくるコーポラティブハウスは、個人の住まいの豊かさのみならず、
街の環境を豊かにする可能性をもっている

2014年 09月05日 12時34分