通称「がもよん」で親しまれる、歴史の風情が残る下町

和田欣也さん。がもよんの町を歩くと、皆が声をかけてくる有名人和田欣也さん。がもよんの町を歩くと、皆が声をかけてくる有名人

神社の境内で行われる餅つき体験は、参加無料。本場のお抹茶を嗜む会は、自前のマグカップ持参でOK。毎月何かしらのイベントが開催されているこの町では、住民や町外の人、お爺ちゃんから子どもまでが入り交り、垣根なく交流している。

大阪市城東区は、西日本では1位の人口密度を誇るエリア(※1)。通称「がもよん」と呼ばれている、蒲生四丁目交差点を中心として半径2キロ広がるエリアには、約7万人もの人が暮らしている。大阪の冬の陣・夏の陣の激戦地という歴史もあり、各所に建てられた石碑がその当時を物語っている。商店街や入り組んだ狭い路地など、下町の風情が残る町並みは、どことなく懐かしさも感じさせる町だ。
自分の住む町をより魅力的な町にしようと、約10年前に立ち上がったのが、「がもよんにぎわいプロジェクト」。蒲生四丁目エリアに多く残る古民家を飲食店に再生することで、町の活性化を図っている。

「がもよんプロジェクト」の発起人は、不動産コンサルタントで木造耐震診断士の資格を持つ和田欣也さん。住人と飲食店と町外の人を円滑につなげる役割りを担い、イベント開催や行政とのまちづくりにと日々奮闘している。

(※1:2014年10月1日国土交通省国土地理院「全国都道府県区町村別面積調より」)

これまでにない、斬新なイタリアンレストランをつくりたい!

いつも予約でいっぱいの、蒲生四丁目が誇る人気イタリアン店がある。この「ジャルディーノ蒲生」から、古民家再生プロジェクトはスタートした。不動産賃貸業を営んでいる杦田勘一郎さんに、和田さんが耐震工事の相談を受けたことがきっかけだった。所有している築100年以上の米蔵を、”先代から引き継いだ古い建物を守りつつ、次の世代の子ども達に良い形で残したい”と語る杦田さんと、すぐに意気投合。米蔵を改装して、この町のランドマークとなるような新しいお店をつくろうと、アイデアが溢れ出した。

「ここは梅田じゃないんやで、がもよんなんやで」。当初、周囲の人にそう言われることもあった。オシャレな外食は、都会に出て楽しむものだという意見だった。「迷いはありませんでしたね。近所に素敵なお店があれば、自分なら絶対行きたいと思ったから」と和田さんは当時を振り返る。リーズナブルかつ本格的な食事を楽しみながら、古き良き蔵の装いを空間全体で感じることのできるイタリアンレストランを、2008年にオープン。ふたを開けてみると、噂を聞いてエリア外からわざわざ訪れるお客や近所の子育て主婦や家族連れなどで、お店は満席の嵐。がもよんには、外食需要もあるということが実証されたのだ。

「ジャルディーノ蒲生」。柱や梁を残し、蔵の装いをそのまま活かした空間づくり。10年経ったいまでも新しい感性が楽しい「ジャルディーノ蒲生」。柱や梁を残し、蔵の装いをそのまま活かした空間づくり。10年経ったいまでも新しい感性が楽しい

オリジナリティ溢れる飲食店が充実!町そのもののファンづくり。

「ジャルディーノ蒲生」の成功をきっかけに、「がもよんにぎわいプロジェクト」が立ち上がることとなった。その当時、空掘町や中崎町のエリアでもアートや雑貨などのテーマで、古い町を活性化させようとする動きが起こっていた。蒲生四丁目での古民家再生のテーマを考えた時に、「ご飯」というテーマにたどり着いた。一生のうちにアートに関わらない人や雑貨に興味を持たない人はいるかもしれないが、みんな必ずご飯は食べる。幅広い層をターゲットにすることができる、「飲食店」に絞った。古民家の持つ景観としての趣を大切に残しつつ、一店舗一店舗オリジナリティに溢れる空間づくりを施していく...。「がもよんにぎわいプロジェクト」による、古民家再生は着実に進んでいった。

力をいれているのは店づくりだけではない。週に一度の町内会の集まりでは、地域がひとつになり、周りの飲食店がイベントやまちづくりに積極的に関わっている。お客を取り合うのではなく、町に来てくれたお客さんとして捉え、皆で大事にしようという意識が芽生えている。飲食店という点と点が繋がって広がり、面となる。常連さんに他のお店を紹介することで、良い口コミの循環が生まれて、町へのファンがどんどん増えていく。次第に、周りの住人からも理解を得られるようになってきた。結果として現在、プロジェクトにより生まれた全21店舗は、一軒も潰れることなく営業している。
「餅つき・バル・カレー祭りなど、毎月必ず町内イベントが行われています。がもよんでは、常に何か面白いことが起こっている状態ですよ」と和田さん。

町のあちこちにある飲食店はコミュニケーションが活発。お店の周年記念には、お互いに花を贈り合う文化が自然と生まれている町のあちこちにある飲食店はコミュニケーションが活発。お店の周年記念には、お互いに花を贈り合う文化が自然と生まれている

町の人がコンシェルジュ!場所づくりから関係づくりへ

和田さんの最終的な目標は、子どもが大人になった時に自分の育った町を自慢できるような町にすること。自分の住んでいる町に興味を持ち、いつでも気軽に参加できる環境をつくろうとしている。
「町内のイベントには、できるだけ住人の方に参加してほしいので趣向を凝らしています。例えば、参加費無料で楽しめる神社の餅つきや、好きな音楽をかけながら行うファンキーな町中ゴミ拾いなどです。きっかけは何でもいいんです。何らかの形で町に関わることで、町で起こっていることが、”自分ごと”として捉えられるようになれば、シビックプライド(町への誇り)が築かれていく。すると、おのずと町は活き活きとしてくると思うんです。
商店街で迷子になった時、店員や住人がその様子を見て”どうしたの?”と声をかけてくれる。町の人がコンシェルジュのように、外から来た人をもてなしている。そんなコミュニケーションが自然と育まれる町って、素敵じゃないですか」と和田さんは微笑む。

古民家再生に留まらない、がもよんにぎわいプロジェクト。世代を超えて活き活きとした魅力のある町と人を育てるプロジェクトは、まだまだ始まったばかりだ。

がもよんにぎわいプロジェクト
http://r-play.jp/gamo4project/

長屋、神社、寺。一本路地に入ると静かな下町が広がっている。食事の約束の前に、町をゆっくり歩いてみるのもいいかもしれない長屋、神社、寺。一本路地に入ると静かな下町が広がっている。食事の約束の前に、町をゆっくり歩いてみるのもいいかもしれない

2017年 02月20日 11時00分