観光名所・ガソリンスタンドコーヒーショップにある、金魚電話ボックス

水槽の中で優雅に舞う、朱色の金魚…。
しかし、奈良県大和郡山市では、電話ボックスの中で金魚が泳ぐ姿が日常の風景となっている。

奈良県大和郡山市は、奈良県北部に位置する市。豊臣秀吉の弟・秀長が居城した郡山城があり、春には桜が咲き誇る、美しく静かな城下町だ。「平和のシンボル、金魚が泳ぐ城下町。」をキャッチフレーズに置いて、町全体で観光の名物として金魚を打ち出している。

噂の『金魚電話ボックス』は、大和郡山市のメインストリートである柳町商店街の端にある元ガソリンスタンドをコーヒーショップにアレンジした『K-COFFEE』の敷地内にある。金魚電話ボックスはアート作品としてつくられたもので、2013年に行われた地域型アートイベント『はならぁと』などで展示されていた。会期が終わった後に『K-COFFEE』のオーナーが引き取ることにしたそう。

「『K-COFFEE』も最初は期間限定ショップだったのですが、その後、カフェを開く場所を探していたところ、”ここでやってみたら”と言っていただいて、本格的にオープンできました。土日は金魚電話ボックスを見るために立寄る町歩き観光客も多いですよ。」( K-COFFEEオーナー・森さん)

取材時は平日だったが、リピーター客同士が珈琲片手に会話している風景がみられた。金魚電話ボックスを撮影しているカメラマンも取材時は平日だったが、リピーター客同士が珈琲片手に会話している風景がみられた。金魚電話ボックスを撮影しているカメラマンも

本当に金魚が街の中を泳いでいる、城下町!

大和郡山市における金魚養殖の歴史は、江戸時代にさかのぼる。幕末におこった廃藩置県のため、仕事がなくなった武士がその副業として養殖を仕事としたことで発展した。そして、もともとため池が多いエリアで、金魚のえさとなるミジンコが豊富だったことも後ろ盾となった。縁日の金魚すくいでおなじみの、『コアカ』と呼ばれる小さな金魚の生産数では、日本一を誇る。夏の最盛期には、一日当り約100万匹出荷することもあるのだそう。

実際に柳町商店街を歩きをしてみると、町中のあちこちに金魚スポットが隠れている。灯籠の中を金魚が泳ぐ幻想的な『金魚灯籠』や金魚すくいが体験できる『金魚すくい道場』、近所の酒屋さんが販売する『金魚ビール』が見本に置かれている、自販機型の模型『金魚自動販売機』にも本物の金魚が泳いでいたりと、盛りだくさん。それだけでなく、通り過ぎる車にも金魚のマークが貼られていたり、足元には金魚印のマンホールまで…。本当に町中が金魚づくしだ。

町の中心に流れる「紺屋川」には、金魚が泳いでいる。商店街の電気屋さんの電子レンジの中にも、金魚の姿が町の中心に流れる「紺屋川」には、金魚が泳いでいる。商店街の電気屋さんの電子レンジの中にも、金魚の姿が

日本全国からお客が集結!入場無料の『全国金魚すくい選手権大会』

金魚といえば、大和郡山市!
そう認知されるようになってきたきっかけには、大和郡山市で行われる22回目を迎える人気イベント『全国金魚すくい選手権大会』がある。毎年8月第3週日曜に行われるこのイベント、今年は日本全国から選手2,350人が集い、10,000人を超える入場者が大和郡山市に訪れた。屋台や特産物コーナーが出たり、ライブも催される。金魚すくい体験ができるスポットも設けられ、大会自体がエンターテイメント制に溢れるイベントだ。大会の最後には、大会で使われた金魚を配っており、遠方からのお客のために、金魚用の酸素をつけるという心配りも素晴らしい。

「『全国金魚すくい選手権大会』をきっかけに、大和郡山市という町のことを知ってもらいたい。私たち大会運営側は、イベントで手一杯…そんな中、商店街の皆さんが積極的にチラシを作ってくださったり、大会に絡めてイベントを企画してくださることで、イベント会場だけでなく、町や商店街にも人が足を運んでくれ、町一帯となって盛り上がりがる機運が生まれてきています。」(大和郡山市 地域振興課 観光戦略室長・植田さん)

大会の最後には、大会で使われた金魚を無料で配布。遠方からのお客のために、金魚用の酸素をつめるという心配りも素晴らしい大会の最後には、大会で使われた金魚を無料で配布。遠方からのお客のために、金魚用の酸素をつめるという心配りも素晴らしい

若手のアイデアを積極的に形にしていく、まちづくり

左)大和郡山柳町商店街協同組合・伊藤理事長、右)大和郡山市 地域振興課 観光戦略室長・植田さん左)大和郡山柳町商店街協同組合・伊藤理事長、右)大和郡山市 地域振興課 観光戦略室長・植田さん

町を訪れた観光客が『金魚電話ボックス』や『金魚自動販売機』を面白がって、写真を撮ってSNSに上げたり、いろんな形で拡散してゆく。そしてショップに立寄り、町の人と直接交流することで、町を知り身近になっていく。イベントがないと町を訪れる大きな機会はないし、商店街の協力や努力がないと、訪れた観光客に対して今後に繋がる関係性が築けない。市と商店街がよい関係性を保ち協力し合うことで、相乗効果がうまれ、町に活気が湧いてくる。

「ここ4、5年前から、『K-COFFEE』の他にも、セレクトショップやカフェなど、若い人が商店街に入ってきてくれるようになりました。金魚電話ボックス、自販機、金魚ビールが生まれたのもそのおかげ。若い人が若い人を呼ぶ。その循環が上手く回っているのではないかと思っています。
 私は今60歳ですが、これからの商店街を担う、30、40代の若手にバトンタッチしていきたいと思っています。若手の新しい意見を実現していくことで、町が活性化してきていると実感しています。商店街の店舗も今後減っていくでしょうが、それは仕方のないこと。それならば、空いた場所をまた新しく若いお店に転換していけばいいし、どんどん積極的にやっていきたいです。今、いい風が吹いていますよ。」(大和郡山柳町商店街協同組合・伊藤理事長)

「金魚」を軸に、市と商店街が互いに役割りを担い、町全体として盛りあがりつつある。これからどんな風に「金魚が泳ぐ城下町」が充実していくのか、楽しみにしたい。

取材協力/
大和郡山市役所
http://www.city.yamatokoriyama.nara.jp/

やなぎまち商店街
https://www.facebook.com/YanagimachiSt/

K-COFFEE
https://www.facebook.com/K.coffee7/

2016年 12月09日 11時04分