商店街全体が100円ショップに

過去に開催された100円商店街の様子過去に開催された100円商店街の様子

大型量販店に客足が流れてしまうだけでなく、後継者不足の問題もあり、昔ながらの商店街が次々姿を消している。そんな中、新しい集客の取り組みとして注目されているのが100円商店街。店それぞれがこだわりの100円商品を販売して、商店街全体を100円ショップにするイベントだ。もちろん、通常の商品も販売しているから100円均一というわけにはいかないが、お買い得商品や、ユニークなアイデア商品が並ぶので、毎回多くの人出があるという。

そこで、2010年から「商店街・賑わいプロジェクト」の一環として100円商店街を後援している、大阪商工会議所 流通・サービス産業部の大石桂子次長と小西香菜さんに、100円商店街の魅力についてうかがった。

「そもそも100円商店街は、NPO法人AMPの齋藤一成理事長が発案したイベントで、現在120近くの市町村で取り組まれています。中でも大阪市はこの取り組みが一気に広がった地域。2010年4月3日に千林商店街が先陣を切ると、多くの商店街が後に続きました」
と、大石次長は説明する。

工夫を凝らして多数の店舗が参加

お祭り気分でオセロを楽しむ光景もお祭り気分でオセロを楽しむ光景も

100円均一ショップより魅力的なのは、普段100円では購入できない商品がそろうこと。たとえば通常150円のロールケーキが100円になったり、100gで300円の惣菜が、50gに小分けして100円で販売されていたりする。お買い得なのはもちろんだが、気軽に食べ比べをするにもうってつけなのだ。
しかし、商店街にあるのは食べ物屋ばかりではない。たとえば服飾の店や布団屋などは100円で販売できる商品を見つけるだけでも大変だし、本などは一部を除いて値下げができない。こういった店舗はどのようにして参加するのだろう。

小西さんに質問すると、
「ある寝具店は、20%値引き券を100円で販売し、評判を呼びました。また、通常の売り物ではないおでんや小物などを販売し、お買い上げの方にクーポンを渡すことでリピーターを作ったお店もあります。また、書店では、売れ残った雑誌の付録を詰め合わせて販売した例もあります」
と、教えてくれた。

実は、20%値引き券を販売した寝具店では、普段から時おり2割引セールを行っていたらしい。しかし、家具や寝具は大型のインテリア量販店で購入する人が多く、セールをしても気づかれにくかった。そこで、100円商店街の機会に2割引をPRし、集客につなげたのだ。また、当日は混雑してゆっくり見ていられないので、後日再度訪問してもらうと、店の品ぞろえを知ってもらう良い機会になるのだという。

そのほか、診療所が100円で健康測定をしたり、「オセロで脳トレ」と銘打って、オセロゲームのボードを並べたりする店もある。オセロゲームは自由参加なので、お年寄りが孫と一緒に遊んでいたりして、お祭り気分も楽しめるそうだ。

地域ごとに生まれる個性

ラスクの詰め放題は見物客も集まったラスクの詰め放題は見物客も集まった

同じ100円商店街でも、個性が違うのだという。
たとえば、東成しんみちロードは、お祭りムードが強いのが特徴。ヨーヨー釣りはもちろん、カキ氷店も複数登場した。開催日が夏休み中なので、100円をもらった小学生が買いに走る光景も見られたそうだ。
住吉区にある安立商店街は、近隣の商店街からも「あそこはおもしろい」と評判を呼ぶほど、ユニークな商品が多い。たとえばラスク詰め放題。ホワイトボードに最高記録が貼りだされるため、ちょっとした競技になっているという。参加者は子供なのに、親が「そこの隙間に詰めなさい」と、必死で指示を出す姿も見られ、見物人が集まってくるそうだ。
また、駒川商店街は、お買い得商品で勝負している。100円商品の横に、通常のお買い得商品をシレッと並べ、売上を伸ばす店も多いそうだ。

100円商店街の打ち合わせでは、「こんな商品を100円にしようと思うんやけど」と、商品の相談をしたり、「ゲームをしようと思ってんのやけど、ゲームの名前はなんにしたらええと思う?」と知恵を借り合ったりするので、商店街の結束を深めるきっかけにもなっているという。普段のイベントでは役員だけが打ち合わせることが多いが、100円商店街は店が個々に参加するので、店舗間の連携が強固になるのだ。

地元の人々が商店街を知るきっかけにも

大阪商工会議所 流通・サービス産業部の石桂子次長(右)と小西香菜さん(左)大阪商工会議所 流通・サービス産業部の石桂子次長(右)と小西香菜さん(左)

「個々の商店名がチラシに載るのも、100円商店街の長所です。小さなお店はチラシを出さないので、存在を知られていないことがあります。ですから100円商店街をきっかけに、その商店街にどんなお店があり、どんな商品を扱っているかを知る地元の方も多いのです」
と、小西さんは言う。

また、昔から近所に住む人たちにも、「昔の賑わいが戻ったようで、うれしい」と喜ばれるそうだ。

大石次長も、
「ちょっとしたお祭りになりますから、近所の方たちがお子様を遊ばせる感覚で集まってくださるようです。住み慣れた町の知らないところを発見するとうれしくなりますし、町に対する愛着も増すのではないでしょうか」
と、語る。
大人は買い物が終われば立ち去るが、子供は興味のある場所には滞留時間が長い。いつも足早に通り過ぎている所をじっくり観察するので、商店街になじみを感じるきっかけにもなっているという。

近年、店主と買い物客が雑談をする光景はめっきり減少したが、商店街には昔ながらの交流が残っている。
ある100円商店街で小西さんは、「このお店の前を通ると、いつもおばちゃんが手を振ってくれるの」と、小学生が親を引っ張って買い物に来るのを目撃したのだとか。商店街の活性化は、住人たちの交流も呼び戻してくれるかもしれない。

しかし、せっかくの取り組みも、持続しなければ意味がない。最盛時には50ほどの商店街が100円商店街を実施していたが、現在は25前後。窓口をしていた人が引退したり閉店したりして、世代交代すると続かないのも現実なのだそうだ。

大阪商工会議所は、いろいろなアイデアを提案したり、チラシをホームページに掲載したり、プレスリリースをしたりと、これからもバックアップを続けていくつもりだという。
大阪市内では、9月24日に野田新橋筋商店街で、10月1日に安立本通商店街で、さらに10月15日には地下鉄あびこ中央商店街、京橋中央商店街、粉浜商店街で、と100円商店街が次々開催される予定なので、近所の方は、ぜひ立ち寄ってみてほしい。

参考サイト:http://www.osaka.cci.or.jp/nigiwai/price100/

2016年 09月19日 11時03分