雅楽師として、また趣味人として活躍する東儀氏の自宅を訪問

奈良時代から1300年以上の雅楽を継承する東儀家に生まれ、雅楽の伝統を今に伝える東儀秀樹氏。東儀氏が奏でる篳篥(ひちりき)の流麗な音色をきっかけに、雅楽のことを知ったという人も少なくないだろう。かくいう筆者もその一人なのだが、数年前のある日、テレビ番組で目にした東儀氏はエレキギターを抱え、ハードロックを演奏していたのだった。東儀氏はもの静かな方だろうというイメージを抱いていたので、正直驚いた。聞けば、中学・高校時代はロックバンドを組み、ギタリストになりたいと夢見ていたという。

調べてみたら、アクティブで幅広い趣味人であることもわかった。世界の民族楽器の収集、イラスト、写真、おもちゃ作り、マジック、クラシックカーレース参戦、スキューバダイビング、陶芸など、多種多様。また、プライベートでは子煩悩な一児の父親で、ここ最近では「スーパーイクメン」として子育て本を上梓するなど、注目を集めている。

このように多才な東儀氏は、家や住まい方については、どんなこだわりがあるのだろう? 自宅に伺って取材させていただくことができたので、レポートをお届けする。

東儀秀樹氏の自宅1階にあるミーティングルーム

東儀秀樹氏の自宅1階にあるミーティングルーム

この土地を選んだ決め手になったのは、桜の木のある庭

東儀氏の自宅は庭をL字型に囲むようにして建てられている。庭には桜や梅、松、モミジなどの木々が枝を張り、四季折々の表情を楽しめる。バルコニーでは息子さんと一緒に昆虫を観察したり、夏には家族で線香花火を楽しむこともある東儀氏の自宅は庭をL字型に囲むようにして建てられている。庭には桜や梅、松、モミジなどの木々が枝を張り、四季折々の表情を楽しめる。バルコニーでは息子さんと一緒に昆虫を観察したり、夏には家族で線香花火を楽しむこともある

東儀氏の自宅は、東京都世田谷区の閑静な住宅街の一角、約120坪(約396m2)の敷地に建つ2階建ての一軒家。ここに東儀氏ご夫妻と8歳になる息子さんの3人家族で住んでいる。

東儀氏がこの家を建てたのは6年ほど前のこと。「家のある界隈は、僕が子どもの頃から住んでいる地域です。結婚してから何度か引っ越しを重ねながらもこの界隈から離れたことはなくて、“家を持つなら住み慣れたこの地域がいい!”と決めていたのです」と、東儀氏。「よい土地があって、僕に購入する力があって、タイミングが合えば、自分たちの家を建てたい」と考えるようになり、売地に関する情報アンテナを張っていたという。

そうして探し当てたのが、今の家が建つところ。そこは当時空き家だったというが、庭にあった八重桜の木が東儀氏の心をとらえた。「その庭には梅や松の木も植えられていて緑が豊かで、しかも春には桜の花も楽しめる。頑張ってここに家を建てようと思いました」。
その土地を購入。庭を残して更地にし、念願のマイホームを建てた。

自身の幅広い趣味とリンクさせた空間づくり

雅楽師、東儀秀樹氏。父親の仕事の関係で幼少期をタイ、メキシコで過ごし、クラシック、ロック、ジャズなど幅広い分野の音楽を吸収しながら成長。帰国して高校卒業後、宮内庁楽部に入り、篳篥(ひちりき)や琵琶などを宮中儀式や皇居で演奏するほか、海外公演にも参加。96年に宮内庁を退職。同年『東儀秀樹』でアルバムデビュー。最新アルバムは2015年3月リリースの『日本の歌』。著書に『雅楽:僕の好奇心』『東儀家の子育て 才能があふれ出す35の理由』など雅楽師、東儀秀樹氏。父親の仕事の関係で幼少期をタイ、メキシコで過ごし、クラシック、ロック、ジャズなど幅広い分野の音楽を吸収しながら成長。帰国して高校卒業後、宮内庁楽部に入り、篳篥(ひちりき)や琵琶などを宮中儀式や皇居で演奏するほか、海外公演にも参加。96年に宮内庁を退職。同年『東儀秀樹』でアルバムデビュー。最新アルバムは2015年3月リリースの『日本の歌』。著書に『雅楽:僕の好奇心』『東儀家の子育て 才能があふれ出す35の理由』など

家づくりでは、東儀氏はどんな点にこだわったのだろう? 
「僕から建築士さんに提案したのは、デザイン的にはシンプルで飽きのこない、清潔感のある家。それでいてモダンでかつ機能性を備えていること。日本家屋も大好きですが、きちんとした様式で建てるのでなければ中途半端な感じの建物になってしまいます。そうはしたくなかったので、日本家屋を建てるという構想はありませんでした」

何よりこだわったのは、家の中のどこにいても家族の気配を感じることのできるような造りにしたいということ。そんな想いは、まず、案内していただいた1階ミーティングルームにも現れていた。庭に面していて、窓越しには四季折々の緑はもちろんのこと、息子さんが庭で遊んでいる姿も見られるという。

この記事の冒頭部分に掲載している写真はミーティングルームの全景なのだが、庭に面した窓ガラスの向こうに階段が見えている。この階段はミーティングルームと、庭のバルコニーとを結ぶ階段で、「建築士さんのアイデアによるものです。この階段そのものも風景になっていて、モダンな雰囲気を表現できていると思います」。こうした階段は1階エントランス部分と中2階のリビングルームの間や、リビングルームとダイニングキッチンの間などに設けられ、ビジュアル的なアクセントになっているとともに、家の中のいい意味での境界線になっているという。「自宅は僕の仕事の拠点でもあり、生活の場でもあります。そうした職住のバランスがとれているので、快適でいられます」。

ミーティングルームは、仕事の打ち合わせの場として使われている空間ではあるが、「初めてお会いする方もいらっしゃいますので、僕の趣味とリンクさせて、僕がどういう人間なのか、伝わるような部屋にしています」と話す。その言葉通り、室内は東儀氏がコレクションしている名車のミニカーやギター、自作の絵画、手作りのおもちゃ、息子さんと合作した段ボール製のギターなどで飾られ、東儀氏の多彩な趣味や息子さんとのふれあいが感じられるアットホームな空間になっている。ガレージと隣接し、ガラス越しに愛車を眺めることができるというのも、大の車好きの東儀氏だからこそのこだわり。

自宅スタジオでは思うままに音楽創りができる

この家には、「スタジオ」と呼ばれる部屋もあり、作曲や編曲など、東儀氏の音楽はこのスタジオで創り出されている。

雅楽の伝統を継承しながら、ロックやポップスなどさまざまなジャンルとコラボレーションするなど、独自の音楽活動を繰り広げている東儀氏。その音楽創りのスタイルはピアノや五線紙を前にして悩みながら曲を作るというものではなくて、いきなり頭の中でひらめくのだという。「伴奏する楽器のすべてが一緒になって、頭の中で音楽が鳴り出すんです。そうして曲想ができていき、“これを録音しておきたい!”という気分になったとき、すぐに家のスタジオで取りかかることができます」と自宅にスタジオがあることのメリットを語る東儀氏。スタジオ内にはピアノ、ギター、ドラム、ベースなどが置いてあり、それらを自身が演奏し、仕上げていく。

「スタジオを借りての作業だと、たとえ調子が良くないときでも絶対にやらなければならないわけで、音楽創りのどこかで妥協せざるを得ないことが出てきます。でも、自宅のスタジオだと、調子が悪いと思えば、“今日はこれ以上やってもダメだ”と、スパッと作業を中断できるし、気分がのっているときは時間を気にすることなく、納得いくまで取り組めます。音楽のようなアーティスティックな仕事をやるうえでは、とても恵まれた環境だと思います」

スタジオの壁一面には東儀氏が海外で買ってきたという民族楽器が飾ってあり、楽器ミュージアムといった趣。アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパ、中南米など、いろいろな地域のさまざまなカテゴリーのものが並んでいる。「雅楽という日本古来の音楽に携わっているので、海外を旅したときにその地に古くから伝わる楽器を目にすると、興味が湧いてくるんです。手に取って、音色を奏でたくなります」。民族楽器のコレクションは約200点にもなり、スタジオに置き切れないものは倉庫に収納しているという。

こんなふうに自宅で心ゆくまで音楽創りができる空間を持つ東儀氏だが、気分がのっていても作業の手を休めるのを厭わない……いや、喜んで中断するときがあるという。それは息子さんがスタジオに遊びにやってきたときと、家族との食事の時間で、「僕が大事にしている時間です」と、言い切る。

次回記事では家庭人としての東儀氏に焦点をあて、住まいに込める想いを紹介していきたい。


##東儀秀樹氏のこだわりの家や室内のインテリアの詳細は下記から。(HOME'S BOXで掲載!)
http://box.homes.co.jp/collection/00002/

1階にあるスタジオ。防音のためにコンクリート造りにし、遮音効果のあるドアや二重ガラスの窓を配している1階にあるスタジオ。防音のためにコンクリート造りにし、遮音効果のあるドアや二重ガラスの窓を配している

2015年 09月15日 11時05分