高齢者宅はもちろん、どんな住まいも断熱性能は重要

施工中のグラスウール。大きなシートとして運ばれてきて現場で適宜カット、必要なところに貼り付けていく施工中のグラスウール。大きなシートとして運ばれてきて現場で適宜カット、必要なところに貼り付けていく

今回、Hさん宅は高齢者の住まいということもあり、特に意味が大きいのは断熱工事である。日本の住宅は段差が多い、廊下や階段の幅、室内が狭い、和式の生活が負担など高齢者には親切とは言い難いが、そのうちのひとつとして挙げられるのが住戸内の温度差。断熱性能に劣る住宅の場合、暖房の入っていないリビング、居室は暖かいものの、廊下やトイレ、洗面所が寒く、それが原因で心筋梗塞、脳梗塞などを起こしやすくなるとされる。日本医師会が監修した鹿児島医師会ホームページ内の記事によると、入浴中に亡くなるのは全国で年間約1万4000人と推測されており、その多くがヒートショック、つまりこうした温度差によるものという可能性があるとか。高齢者の住まいであれば段差解消、手すり設置などはもちろん、断熱性能も重要というわけだ。

もちろん、高齢者のためだけではない。断熱性能の高い家は①冷暖房費が削減できる、②家全体の温度差が小さくなり、ヒートショックの影響が減る、③窓、壁等の表面結露が改善、カビ、ダニの発生を抑制できるなどの実用的なメリットがある。また、エネルギー問題、環境問題を考えると、無駄にエネルギーを使わなくても冬暖かく、夏涼しい家は望まれるはずだ。

ところが、残念ながら、日本の一戸建ての中には断熱性能の低い家が少なくない。平成25年に省エネ基準が改正され、平成32年までに義務化されるとはいえ、国交省の平成23年の資料によると無断熱の家が39%、昭和55年の古い基準で施工されている家が37%となっており、全体の8割弱が断熱性能に劣る家という。これから建てる、買うのであれば、くれぐれもそんな家には手を出さないようにしよう。

地域や断熱性能、予算などで断熱工法、素材はさまざま

施工は大きなホチキス様のもので留めつけていくだけ。作業は意外に簡単で見ていてちょっと拍子抜けした。技術の進化ということだろう施工は大きなホチキス様のもので留めつけていくだけ。作業は意外に簡単で見ていてちょっと拍子抜けした。技術の進化ということだろう

住宅の断熱工法には大きく分けて2種類がある。ひとつはHさん宅で採用された充填断熱工法。これは柱や間柱といった軸組の構造躯体の間にフェルト上の整形断熱材を充填施工するというもので、施工は大きなホチキス様のもので止めつけていく仕組み。住宅デザインへの制約が少なく、比較的安価に施工できるのも特徴だ。断熱材として仕様されたのは高性能のグラスウールだ。

もうひとつの工法は外張り断熱工法。これは柱や間柱の外側に板状の断熱材を止めつけて施工するというもので、こちらも施工は難しくなく、性能的にも安定しているとされる。ただし、断熱材の外側に外装材を取り付けることになるため、外装材をきちんと支えるための下地が必要になる。

どちらの工法を選ぶか、さらにどの断熱材を選ぶかは、地域や予算などとの兼ね合いになる。日本は南北に細長く、地域によって気候風土が異なるため、省エネ基準は北海道から沖縄までを6つに分け、その土地に応じたものが定められている。自分が住むエリアはどの基準が該当するのか、そのためにはどの程度の施工をしてもらえば良いかについては一般社団法人日本サスティナブル建築協会がホームページ上に「住宅の省エネルギー基準早わかりガイド」という分かりやすい冊子を出しているので、それを参考にすると良いと思う。

熱を逃がさないためには窓の性能もポイントに

いくら壁を断熱しても熱は開口部、つまり窓を通じて逃げて行き、入って来る。冬の暖房時に熱が逃げ出す割合では開口部が48%とダントツに高く、それ以外では外壁19%、換気17%、床10%、屋根6%など。同様に夏の冷房時に外から熱が入る割合は開口部が71%、外壁13%、屋根9%、床2%。開口部の性能を疎かにして、断熱材だけを入れても無駄というわけだ。

そこで最近、よく使われるようになったのが、Low-Eガラス。これは夏場の外からの熱を50%以上、紫外線を約75%カットできる遮熱性能に加え、冬場の室内の暖気を外に逃さない高断熱性能を備えたガラスで、2枚のガラスの間に空気層のある複層ガラスの進化形。22枚のガラスのうち、室外側のガラスの内側に光と熱を選択して通過、反射する特殊金属膜があり、それが室内を快適に保ってくれる仕組みになっている。もちろん、Hさん宅でも使用されており、全体として住宅性能表示制度下で省エネルギー対策等級4を取得している。

ただ、残念ながら、このガラス、まだまだ一般的というほどには普及しておらず、板硝子協会の統計によると、一戸建ての場合、面積で普及率をみると54.5%、戸数での普及率は58.5%。複層ガラスというだけで安心せず、Low-Eガラスになっているかどうかをチェックした上で建築、購入を考えよう。

板硝子協会により、窓ガラスの種類別普及度板硝子協会により、窓ガラスの種類別普及度

第三者機関による検査は各2回だが、社内検査もあったほうが安心

チェックシートを手に外から建物を目視検査中。チェックシートにひとつずつチェックを入れ、時間をかけて検査していたチェックシートを手に外から建物を目視検査中。チェックシートにひとつずつチェックを入れ、時間をかけて検査していた

住宅は建設過程で何度か検査を受ける。完成してしまってからでは瑕疵が分からなくなってしまうし、もし、瑕疵があったら災害時などには人命に関わりかねない。そこで第三者機関による検査が義務付けられているのである。ひとつは建築確認による検査で、これは上棟時の中間検査、竣工時の完成検査の2種類。地域によっては中間検査が不要ということもある。

もうひとつの検査は住宅瑕疵担保審査機関によるもの。平成12年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、住宅を供給する事業者は住宅取得者に対して構造耐力上主要な部分(住宅の柱や梁基礎など)や屋根等の雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について、引渡日から10年間、瑕疵修補するなどの義務を負うことになっており、そのための保険に加入すると、もれなく検査が行われる。上記2種類の瑕疵を重点としているため、タイミングとしては基礎完成時、上棟時の2回。建築士などの有資格者が行う。

Hさん宅を施行した工務店ではこれ以外にも基礎検査、上棟検査、設備・電気検査、雨仕舞検査、造作検査、竣工検査と施工段階が進むごとに、各段階最大4種類の検査を行っており、合計すると1棟につき、19種類の検査がある。これは工事の現場担当者とその上司にあたる、上級責任者による検査である。また、設計工事管理者による検査も基礎完成時、上棟時、竣工時に行われており、さらに万全を期す体制だ。

何度も見れば安全というわけではないが、瑕疵は悪意で行われる以外では、ついうっかりや、見落としといった単純な原因によるものが多いという。そこに複数の、いつも見ているのではない人の目が入ることには意味があろう。回数だけではなく、どんな人が何を見る検査か、建設を依頼するときにはその辺を聞いてみるのも、安心できる会社選びのためには有効かもしれない。


■一戸建ての断熱についてより深く知るためにはこちらを。
一般社団法人日本サスティナブル建築協会  http://www.jsbc.or.jp/index.html

2014年 09月08日 11時08分