複数の所有者からなる集合住宅で瑕疵が発見されたら

一棟に複数の世帯、所有者が存在する集合住宅。その建物に万が一瑕疵が発見された場合、保証はどのようにされるのだろうか?一棟に複数の世帯、所有者が存在する集合住宅。その建物に万が一瑕疵が発見された場合、保証はどのようにされるのだろうか?

購入または建築した自宅に、もしも欠陥が発見されたら?-そんな万が一の場合に備えて、消費者を保護し、住宅を供給する側にその責任を果たすことを求めるのが「瑕疵保証制度」だ。
前回の「【住宅の瑕疵保証制度を読み解く①】10年間保証される新築住宅の”知っておきたいポイント”」では、新築住宅(特に一戸建て)の瑕疵保証制度についてお伝えした。制度の背景や、引き渡しから10年間、供給業者が瑕疵担保責任を負う「瑕疵担保履行法」に基づく決まりは一戸建てでも集合住宅でも同様だ。

しかし、多くの場合、一戸につき居住するのは所有者一世帯である戸建て住宅と、一棟に複数の所有者がおり、建物が共用部分と専有部分とに分かれる集合住宅では、その考え方が多少複雑になり、整理しておく必要がある。例えば、瑕疵が発見された場合、保証会社とのやりとりをするのは誰なのか?という点などだ。

そこで今回は、集合住宅の瑕疵保証制度について説明する。なお、今回説明するのは一戸建てと同様に所有者が単独である賃貸の集合住宅ではなく、住戸ごとに所有者が異なる分譲マンションの場合とする。

一戸建てとの違いは”折衝窓口”と”保証期間”

集合住宅は、一棟の建物が「専有部分」と「共用部分」に分かれている。「専有部分」とは、その部分の定義がいくつかあるが、実務的に採用されているのは天井・壁・床の躯体部分より上塗りの部分、つまり天井裏や床下を含めた居室部分である。「共用部分」はそれ以外の部分で、躯体やマンションの共用施設などがこれにあたる。ちなみに、居室の窓やバルコニーは専有部分と思われがちだが、これも共用部分である事を覚えておきたい。

「住宅の品質確保促進法」(品確法)による保証の対象となる部分は”構造耐力上主要な部分および雨水の侵入を阻止する部分”であると前回説明したが、この範囲は集合住宅でも同様で、基礎や外壁部分と、開口部、排水管も含まれる。つまり、集合住宅の保証範囲となるのはほとんど共用部分にあたるという事になる。もし仮に集合住宅で起きた瑕疵がどの部分に当たるか不明な場合については、区分所有法第9条によって、その瑕疵は共用部分に係るものと推定されると定められている。
集合住宅で瑕疵が発見された場合、その箇所によって保証会社との折衝窓口が異なる。専有部分の瑕疵についてはその住戸の所有者が、共用部分の場合は管理組合が行う。

品確法で定義される範囲に瑕疵があった際の保証期間について、新築一戸建ての場合は“引き渡しから10年”と説明した。これは基本的には集合住宅も同様だが、住戸ごとに引き渡し日が異なる点に注意する必要があり、さらに加入する保険によっても異なるのだ。例えば「各住戸の引渡し日から10年を経過した日と建設完了日から11年を経過した日の遅い方まで」とする場合や、「各住戸の引渡日から建設工事の完了日から11年経過した日」とする場合などがあり、購入した物件に付保された保険の保証期間について、きちんと認識しておきたい。

「構造耐力上主要な部分および雨水の侵入を阻止する部分」とする保証範囲は一戸建てと同様で、そのほとんどが共用部分となる</br>
(出典:国土交通省 住まいのあんしん総合支援サイト)「構造耐力上主要な部分および雨水の侵入を阻止する部分」とする保証範囲は一戸建てと同様で、そのほとんどが共用部分となる
(出典:国土交通省 住まいのあんしん総合支援サイト)

”もしもの備え”だけではない、大規模修繕時の瑕疵担保保険

ここまで、主に一戸建ても集合住宅も含む新築住宅の瑕疵保証制度の内容についてお伝えしてきたが、集合住宅ならではのものとして、大規模修繕工事の際にも瑕疵担保保険に加入することができることも取り上げておきたい。

平成22年から、国土交通大臣指定の保険法人により集合住宅の瑕疵担保保険の提供が開始された。修繕工事が実施された構造・防水・給排水・電気設備部分などを対象として5年間保証される。瑕疵が発見された場合に保険会社が被保険者(修繕工事請負会社)に対し保険金を支払い、万が一工事会社が倒産などして修補が困難な場合には保険会社が発注者に直接支払う、新築の瑕疵担保保険と同様の流れとなる。

新築の場合と異なるのは、保険加入が義務ではない点だ。費用は発生するが、保険加入には現場検査が必要であり、さらに加入保険によって工事の進捗や履歴をデータ管理してくれる、プラスアルファのサービスもある。第三者視点の検査による安心感と、将来的に管理組合のメンバーが変わっても工事の記録が残ることで、マンションの維持管理にも一役買いそうなメリットがあるのだ。
この保険加入にはマンションの規模など一定の条件を満たす必要があるが、大規模修繕の工事業者選定の際に、瑕疵担保保険の加入を条件に提示するのも一案だろう。

”起こってから”では遅い。所有者に必要とされる意識とは

ここまで説明した通り、共用部の補修について一戸建てのように個人で動くことができない集合住宅。例えば大規模修繕工事を実施する際にも区分所有者および議決権の各4分の3もしくは過半数の賛成が必要となり、意思決定のハードルは高い。マンションを所有するということは、管理組合の一員として、そうしたものに関わる自覚を持つ必要があるということだ。
そして同様に、建物に瑕疵が発見された場合も関係する人数が多く状況が非常に複雑になることが予想されるため、管理組合に任せるのではなく所有者としてそうしたリスクを未然に防ぐ意識を持つことが必要とされるだろう。

2014年5月、大手デベロッパーが分譲した築11年のマンションの基礎工事に不備があり、建物に傾きが発生した問題は記憶に新しい。このマンションでは竣工直後から異変が起こっていたにも関わらず具体的な対応がされていなかったという報告もある。新築マンションで、竣工後すぐに瑕疵の可能性など想像しにくいものだが、こうした事例は確かに存在する。

新築一戸建てを購入後にインスペクションを実施し建物の不具合をチェックするケースは増えてきているが、マンションではまだまだ少ない現状だ。
まず購入前には当該物件が住宅瑕疵担保保険に加入しているかを必ず確認し、入居後、早い時期に建物について専門家へ依頼して確認するか、不具合を発見したら必ずその原因を明らかにして売主である不動産会社と折衝し解決していくことが必要である。

2014年 12月07日 11時17分