財産である住まいを守る制度

基礎・構造部分は表からは見えないが、建物の最も重要な部分と言える基礎・構造部分は表からは見えないが、建物の最も重要な部分と言える

多くの人にとって”一生に一度の大きな買い物”となる住宅の購入。購入後、万が一自宅に欠陥が見つかった場合、どうすれば良いだろう。補修のために莫大な費用がかかる可能性もあるが、それは全て自分で負担しなくてはいけないのだろうか?というのは、購入時の不安要素の一つであると思う。

住宅の購入について情報収集をした経験がある人は、”瑕疵担保責任”という言葉を聞いたことがあるかもしれない。これは、民法によって定められている”売買の対象物に隠れた瑕疵(外部から容易に発見できない欠陥)がある場合、売主が買主に対して補修や、場合によっては損害賠償等の責任を負う”ことである。購入物件は法律で保証されており、欠陥については原則、売主や施工会社が補修等を行ってくれるというものだ。

しかしその保証範囲や、買主が保証を受ける際の手続きの方法は、購入物件や売買契約の内容により異なる。住宅の瑕疵保証制度についてきちんと知ることで、購入物件の選択肢が広がったり、将来的に発生するであろう修繕費の予測を立てることができるなど、”一生に一度の大きな買い物”を後悔無いものにしたい。
今回は、住宅瑕疵保証制度の中でも新築住宅のケースについて説明する。

判例から見る保証範囲

住宅まわりの瑕疵と言うと、広義では建物の不具合から、その物件で過去に事件や事故があったなどのいわゆる”心理的瑕疵”まで含まれる。不動産取引において、買主が不利益を被らないよう心理的瑕疵についても売主が責任を負うことは定められているが、今回説明する保証の対象となるのは、平成12年4月施行の「住宅の品質確保促進法」(品確法)に基づいた”構造耐力上主要な部分および雨水の侵入を阻止する部分”である。もっと簡単に言い換えると、”その部分に不具合があると建物の強度が弱くなってしまうと考えられる部分”と、”防水をしないと雨水が侵入してしまう部分”だ。

この保証が適用された事例としては裁判所にこんな判例がある。
1)木造の新築住宅において、軸組の長さが不足、軸組配置の釣り合いも悪く、筋交い等の緊結(部材を留め具等で結合すること)も不良、さらに外壁の防火性能不足といった複数の危険箇所があった(大阪地裁 平成13年11月7日判決)
2)木造の新築建売住宅において、基礎部分の厚さ・幅の不足等、土地の地盤強度に対し適切な基礎工事がされていなかった(仙台地裁石巻支部 平成17年3月24日判決)

他に「雨水の侵入を防止する」点では、例として最もわかりやすいのは雨漏りが挙げられる。

ここで、一つポイントがある。
保証対象は”隠れた”瑕疵であるため、物件の引き渡し時に発覚していた瑕疵については保証の範囲とならない。また、物件の引き渡し後の地震や火災によって発生した不具合も瑕疵とはみなされない。

実際には、瑕疵が発見されるケースは先に挙げた判例だけでなく様々な例があると思う。その不具合が保証の対象となる瑕疵に当たるかそうでないかは素人の目では明確に判断しきれない場合が多いはずなので、不具合を発見した場合は速やかに、購入時の売主や施工会社に相談したい。

瑕疵担保責任の対象範囲は基礎や土台など「構造耐力上主要な部分」と、</br>「外壁や開口部など「雨水の侵入を防止する部分」</br>(出典:国土交通省 住まいのあんしん総合支援サイト)瑕疵担保責任の対象範囲は基礎や土台など「構造耐力上主要な部分」と、
「外壁や開口部など「雨水の侵入を防止する部分」
(出典:国土交通省 住まいのあんしん総合支援サイト)

2年?10年?現実に則して定められる保証期間

それでは、建物の基本構造部分についての保証はいつまでされるのだろうか?

民法では、売主の瑕疵担保責任期間を「買主が瑕疵を見つけた時から1年間」と定めている。ただこの場合、買主は長期間にわたり保証される内容であるものの、逆に売主や施工会社にとっては経年劣化に伴う不具合についても補償を求められるリスクがあるとも言える。そこで宅建業法では、瑕疵担保責任期間を「物件引き渡しの時から2年以上」(※売主が宅建業者の場合)という特約を付けることができるとした。

しかし実際には、基本構造部分の瑕疵は2年間ではなかなか発見できない場合も多い。
そこで品確法では、瑕疵の保証範囲と合わせて保証期間も制定。売主や施工会社は新築住宅について、宅建業法よりで定めたよりもさらに長い”物件の引き渡し日から10年間”、瑕疵担保責任を負うものと定めた。

つまり、新築住宅は物件の引き渡しから10年間、その構造部分の瑕疵について売主または施工会社が保証してくれると理解して良い。

「瑕疵担保履行法」で、もしも事業者が倒産しても保証を受けることが可能に

瑕疵担保履行法の仕組み。瑕疵補修の際、もしも事業者が倒産等をしている場合、買主は保険法人から直接保険金を受け取ることができる(出典:国土交通省 住まいのあんしん総合支援サイト)瑕疵担保履行法の仕組み。瑕疵補修の際、もしも事業者が倒産等をしている場合、買主は保険法人から直接保険金を受け取ることができる(出典:国土交通省 住まいのあんしん総合支援サイト)

その保証期間である10年の間に、もしも売主である住宅事業者が倒産をした場合、保証を受けることはできるのか?

数年前、マンションの耐震強度偽装問題が世間を騒がせたことは記憶に新しい。当時、耐震強度が規定に満たないことが発覚した物件で、本来であれば品確法の10年間の保証がされるべきものの、売主が資力を有さない事を理由に欠陥の補修や損害賠償を行わず、結果的に買主が莫大な損害を負担する事態が発生した。

そこでできた法律が、平成21年10月施行の「住宅瑕疵担保履行法」である。これは、住宅事業者に住宅瑕疵担保責任保険への加入か供託金の納付をさせることで、万が一の時の補修のための資力確保を義務付けるものだ。これにより、売主または施工会社は瑕疵による補修が発生した場合、加入する保険または供託所から補修費用を受け取ることができ、買主は例え引き渡しから10年の間に瑕疵を発見し、さらにその時に購入時の売主である住宅事業者が倒産してしまっている場合でも、保険法人などから補修のための費用を受け取ることができるのだ。

「安心できる住まい」を守るために私たちがするべき事とは?

複数の法律が関わり、複雑に感じるかもしれない。しかし、耐震偽装問題をきっかけに施行された瑕疵担保履行法などの例からもわかるように、実際に起こった事例から現実に即して、より買主を保護するために法律は改正されている。特に新築住宅は売主が宅建業者である場合がほとんどであり、住宅供給事業者としての責任をきちんと果たす事を求めるためにも、買主を厚く保護する保証内容となっている。

瑕疵保証を受ける権利を持つ買主側としては、その権利をきちんと行使し、安心できる住まいを手に入れたい。
そのために保証内容(保障額、対象部分など)を予め確認し、もしも欠陥を発見した際には、すみやかに然るべきところ(購入時の売主や施工会社)にチェックをしてもらう必要がある。物件の売買契約の際に加入保険の内容について説明や資料の回付がされるはずなので、それらをよく確認しよう。保証対象部分を認識していないと、瑕疵を発見する事すらできないかもしれないからだ。

今回、新築住宅の瑕疵保証の実際についてお話した。建物の構造部分も自己の所有となる一戸建てに対して、一棟の建物に複数の所有者が存在し、共用部分も多い分譲マンションなど集合住宅の場合は、保証の範囲や保証利用の際の仕組みはどうなるのか?

次回は、集合住宅の瑕疵保証制度について取り上げる。

2014年 05月25日 09時21分