「夢のマイホーム」を実現するもう一つの方法

理想を追求した住まいとして、壁一面を本棚にするなど、とことん趣味に走るも良し理想を追求した住まいとして、壁一面を本棚にするなど、とことん趣味に走るも良し

「夢の」と枕詞がつくほど、日本におけるマイホーム、つまり住宅の購入は、私たちにとって重大なライフイベントの一つだ。
せっかく買うなら「夢」に相応しく、注文住宅で思う存分自分の好みを反映したい…そう胸を膨らませる人も多いはずだが、予算やその他の事情により諦めざるを得なかったり、既成の住宅の購入に落ち着く人も多いだろう。もちろん最近はそうした既存の住宅でも、リノベーションの普及などによりこだわりを反映しやすくなってきている。
では、注文住宅のように自由度が高く、マンションに近い価格で夢を実現できるとしたら?
そんな両方の中間を取ったような選択肢が、コーポラティブハウスだろう。集合住宅を、間取りから室内仕様設備まで自分仕様のオーダーでつくることができる。

集合住宅を注文住宅のように作るとはどういうことか?
国土交通省は、コーポラティブハウスを以下のように定義している。
「自ら居住する住宅を建設しようとする者が組合を結成し共同して事業計画を定め土地の取得、建物の設計、工事の発注その他の業務を行い、住宅を取得し管理していく方式」
つまり、用地取得から建物の企画、工事発注までを購入者が行うということで、とても難しいもののように感じる人も多いかもしれない。しかし当然、素人だけでマンション設計などができるはずはないので、通常はコーディネーターという専門家と一緒にプロジェクトを進めていく。

今回、このコーポラティブハウスの魅力や分譲マンションとの違いについて、関西を中心にコーポラティブハウスのコーディネーターを行っている株式会社キューブ代表取締役の天宅毅氏にお話を聞いた。

希望の専有面積に応じて、住戸をパズルのように組み合わせていく

ある程度決められた範囲の中で、希望に応じて広さの調整ができる。そのため、メゾネット住戸の設計も可能だある程度決められた範囲の中で、希望に応じて広さの調整ができる。そのため、メゾネット住戸の設計も可能だ

国土交通省の定義では、用地の取得から組合が行うというが、組合の参加者はどのように集めるのか?などの疑問が生じる。まずそうした事業の流れについて天宅氏に質問してみた。

「コーポラティブハウスは事業によって様々ですが、まずはコーディネーターが不動産会社などから用地の情報を仕入れ、地主さんと条件面の折り合いをつけた上で参加者募集をスタートさせるプロジェクトが多いように思います。その際の進め方もコーディネーターによって違いますが、キューブの場合は、ある程度広さや基本価格を相場などに応じて決め、チラシやインターネットで参加者募集を行い、関心を持って頂いたお客様にまず予算や広さに対する希望を聞いています。例えば1フロアに80m2を2戸という基本の設計で募集開始し、100m2欲しい人が現れたとします。すると隣の住戸は20m2減った60m2になるので、60m2の広さが欲しいという人が現れたら、その2組が確定となるわけです」
検討者の希望の広さごとにパズルのように組み合わせるということだ。そのため、「○階なら希望の広さが取れそうです」という提案をすることもあるという。

「我々はその土地で発揮できる最大限のポテンシャルにできるよう、分譲マンションに近い形で、最初に計画をある程度作りこんでしまいます。場所も予算も条件に合うけれど、希望を叶えるためもう少し広いとか狭いのがいいという希望が出たとき、この場所でできるものを建物の中で作り出すために調整しています」(天宅氏)
ただし、すべてのコーディネーターがそのような流れを取るわけではなく、中には参加希望者が揃ってから、住戸の広さや価格なども参加者同士が喧々諤々しながら決定していく場合もあるそうだ。

オーダーなのに分譲マンションより安い!?その理由とは

部屋の広さが決まると、間取りは入居者それぞれの希望に沿って設計する。ここからはほぼフルオーダーとなり、北側にリビングを設けたり、バルコニーに沿って洗面室を設けるなど個性的な住戸もあるそうだ。
フルオーダーというと高額なイメージ。しかし、天宅氏からは意外な答えが返ってきた。コーポラティブハウスは、通常の分譲マンションより価格が抑えられる傾向にあるという。

「理由の1つは、販売経費や事業者利益という間接コストにあります。分譲マンションでは、モデルルーム経費として数千万円もかかりますが、それがかからない点が大きいですね」一般的な分譲マンションでは、住戸あたり約20~30%の販売経費や事業者利益が見込まれているという。いわゆる「新築プレミアム」に値するのがこの部分と言えるが、入居した瞬間に償却してしまう部分でもある。コーポラティブハウスのコーディネートフィーはそれらに比べると低く抑えることができるという。(コーディネーターによって異なる)

「2つ目の理由は、仕様変更のタイミングによるものです。分譲マンションは先にキッチンや建具などを基本仕様でメーカーに発注します。もしキッチンを変更したいとなると工事中の変更となり、元に入っているキッチンの分は引き算できず、価格が純増となるんです。それに対し、コーポラティブハウスは全て仕様を決定してから発注します。基本仕様より安いもので良ければ、その分価格を下げることができる。そういう調整を建具や設備などの随所で行っていくので、結果的に割安になるケースが多いんです」(天宅氏)
必要のない部分は抑え、拘りたい部分に費用をかける事ができるのは、オーダーならではであり、非常に合理的でもある。

あるコーポラティブハウスの外観。住戸毎に間取りや仕様が全く異なるため、</br>窓の位置や形状も異なり、個性的な外観となっているあるコーポラティブハウスの外観。住戸毎に間取りや仕様が全く異なるため、
窓の位置や形状も異なり、個性的な外観となっている

コミュニケーションのポイントは、「顔を合わせたら挨拶をする程度」

近年、マンションの他の居住者と顔を合わせても挨拶をしないなど、都市部では特に隣人との関係の希薄さが問題視されている。その対策か、共用施設の充実を売りにした分譲マンションも多く見られるようになってきた。
コーポラティブハウスでは企画段階から購入者が集まって計画を進めるため、その点大いにコミュニティ形成の助けになりそうだ。入居する時点では、友人同士のように親しい間柄になっているのでは…という想像もできる。
しかし、これもまた天宅氏からは意外な答え。「企画段階から購入者同士での交流の場は持ちますが、キューブのプロジェクトでは皆で議論して進める事は原則としてしません。すごく仲が良くなるという事は、すごく仲が悪くなる可能性もあるということで、議論をすると声が大きい人が勝ち、そうでない人が我慢するという事も起こりかねない。『顔を合わせたら挨拶する程度』の関係がちょうどいいんです」

購入者から提案や意見が出た場合などはキューブ社側と話し合い、論点を整理し方向性を決めた上で、他の購入者にも書面にて共有する仕組みをとっているそうだ。各々がそれに目を通す事で、将来的な修繕などの際に備えて必要となる基本的な考え方を把握しておくことができる。
もちろん、居住者同士が友人のように親しくなるコーポラティブハウスもあるそうだが、コミュニティがゆるやかに繋がる関係は、近すぎず離れすぎず、理想的なかたちなのかもしれない。

「こだわり=転売しにくい」の真相は?

一戸建ての分譲地のように敷地を取った物件もある。ここは全住戸から敷地の植栽を臨めるように設計されており、こうした敷地計画も考えられたつくりがコーポラティブハウスの魅力だ一戸建ての分譲地のように敷地を取った物件もある。ここは全住戸から敷地の植栽を臨めるように設計されており、こうした敷地計画も考えられたつくりがコーポラティブハウスの魅力だ

住む人のこだわりや理想をフルオーダーに近い形で取り入れられるコーポラティブハウス。一度住んだ人の愛着はやはり強く、引っ越していく事は少ないそうだ。だが、「自分仕様」につくったこだわりの家は、何らかの事情で手放さなければならなくなった時、それが他の誰かに合わず、転売しにくいのではないかという懸念もある。

しかし、意外にもそのこだわりが誰かのこだわりにマッチし、近隣相場より高く、場合によっては新築時よりも高く売れるケースもあるのだとか。内装に対するこだわりが強い人は、内装のセンスがフィットすると「この場所でこの金額でこれが買えるなら良い」と、周辺相場などはあまり気にしない場合もあるそうだ。
「間取りにしても、自分が住むために一生懸命考えて作る間取りですから、住めないものにはならないんです。結果的に、住みやすいことの方が多いですよ」と、天宅氏は語る。

注文住宅の自由度とマンションの価格の手頃さの間を取ったような、住まいの選択肢一つとして考えられるコーポラティブハウスは、同時にコミュニケーション面などでのメリットも多いと言って良さそうだ。「『コーポラティブハウスを知ったら、これ以外考えられない』と、何年も希望の物件が出てくるのを待つ方もいらっしゃいます」との天宅氏の言葉が、それを実証しているようだった。

■取材協力
株式会社キューブ  http://www.cube-3.co.jp/

2014年 09月19日 11時03分