東京都の総面積の約4割は森林が占めている

日本は国土のおよそ3分の2が森林で覆われ、木材資源が豊富な森の国。にもかかわらず、日本で使われている木材のうち、約70%が外国からの輸入材となっている。

およそ55年前の1960年には国産材の木材自給率は86.7%だったのだが(※1)、以後は値段の安い外国産木材が増えていき、2000年には自給率は18.2%まで落ち込んだ。そこで農林水産省では2009年に森林・林業再生プランを策定し、国産材の利用拡大に取り組んできた。林野庁の「木材利用ポイント」事業(※2)も国産材の利用拡大策の一環だ。

そうした取り組みもあって、2013年の木材自給率は28.6%までにのびている。森林・林業再生プランが掲げる「2020年までに木材自給率50%」の目標にはまだまだ遠いが、少しずつながら一般消費者の関心が国産材に向いてきているといえるのだろう。

そんななかで国や自治体が呼びかけているのが木材の地産地消。地元で育った地域木材(地域材)をどんどん活用しようというものだ。地域材というと、奈良県の吉野スギ、長野県の木曽ヒノキ、秋田県の秋田スギなど全国的に名の知れた木材を連想するのだが、それ以外の地域でも木材は育っている。

そうした数ある地域材のなかで、今回、焦点をあてるのは、筆者が住む、東京の木材である。大都会東京には森の自然とは縁がなさそうなイメージがあるかもしれないが、東京都の総面積の約4割は森林で約8万ヘクタールもの森林面積になるという。そのおよそ7割が集中しているのが東京都の多摩地域西部 (※3)。あきる野市、青梅市、八王子市、奥多摩町、日の出町、檜原村の6市町村があり、スギ、ヒノキの産地となっている。
つまり多摩は東京の林業地なのだ。

そんな多摩の森で育った多摩産材とは、どんな木材なのか? 多摩産材を使った住宅を東京で普及させようと活動している「一般社団法人TOKYO WOOD普及協会」に、お話をうかがった。


多摩産材が取引される原木市場「多摩木材センター」(東京都日の出町)
ⒸSMALL WOOD TOKYO
多摩産材が取引される原木市場「多摩木材センター」(東京都日の出町) ⒸSMALL WOOD TOKYO

産地が証明され、品質も認証されている認証材

多摩産の認証材の展示(TOKYO WOOD普及協会事務局・小嶋工務店本社ショールーム)。グレーディングマシンで測定された強度や含水率が木材に印字されているので、住む人は自分の家にどんな木材が使われているのか、確認することができる多摩産の認証材の展示(TOKYO WOOD普及協会事務局・小嶋工務店本社ショールーム)。グレーディングマシンで測定された強度や含水率が木材に印字されているので、住む人は自分の家にどんな木材が使われているのか、確認することができる

TOKYO WOOD普及協会は、多摩地域にある木材協同組合や製材所、工務店、設計・施工会社など22の企業と団体からなる。

「多摩産材は木材ブランドとしての知名度はないかもしれませんが、多摩産のスギは全国平均より年輪密度が高く、曲げ強度は全国平均を上回っています。住宅の構造材として適しているんです。また、多摩産のヒノキは油脂分が多く、色つやもいいですよ」。こう話すのは、協会の事務局がある、小嶋工務店(東京都小金井市)の高井毅さん。
小嶋工務店が手がける注文住宅はお客からの指定がない限りは多摩産材を使用しているという。「ヒノキは天然乾燥材を使っているので、木材にストレスを与えることなく木のもつ油脂分を残し、本来の色つやも損なわれていません。香りもよく、お客様に喜んでいただいています」(高井さん)

小嶋工務店をはじめ、協会に加盟する工務店や建築設計事務所などで使うのは多摩産の認証材である。

多摩産の認証材とは、多摩地域で生育し、適正に管理された森林から生産された木材であることが証明された木材。東京都森林組合や製材所、森林所有者などからなる「東京の木多摩産材認証協議会」が行なう認証制度で、2006年4月からスタートした。産地を証明するだけではなく、生産から販売までのすべての流通工程で多摩産材認証登録事業者が扱う木材および製材品を多摩産の認証材とする。つまりは木材がどこで生産され、どこでどのように製材され、消費者に届けられたか、木材のトレーサビリティ(追跡可能性)を明らかにし、品質を認証するというものだ。

こうした木材認証制度は東京の多摩産材に限らず、他の都道府県で産出される地域材でも行われている。住宅の購入やリフォームをする予定のある人は、地元の認証材を使うことを考えてみてもいいだろう。

多摩産材の利用拡大のためには東京の林業の再生が必要

TOKYO WOOD普及協会事務局の高井毅さん。小嶋工務店の購買管理部門で積算室室長をつとめているTOKYO WOOD普及協会事務局の高井毅さん。小嶋工務店の購買管理部門で積算室室長をつとめている

さて、このような認証制度のある多摩産材。東京都が「東京都公共建築物等における多摩産材利用推進方針」を掲げ、利用拡大を進めてきた結果、東京都庁をはじめ、都内の保育園や学校など、公共の建築物に多摩産材が活用されるようになってきているという。とはいえ、まだまだ多摩産材は地元東京都民にはほとんど知られていない存在。
「一般の方の国産材への関心は少しずつ高くなっているのかもしれませんが、地域材までにはまだまだ目が向いていないと感じています。弊社でも、“多摩産材の家を建てたい”とこだわってくださるお客様はまだそう多くはありません。TOKYO WOOD普及協会では地元の方向けに多摩産材の原木市場や製材の現場、伐採現場などを見て回るバスツアーを実施し、アピールに力を注いでいます」(高井さん)

もうひとつ、多摩産材の利用拡大が進まない理由がある。
「価格面の問題です。木材の種類や規格などにもよるので、一概には言いきれないのですが、他県の地域材に比べて東京の木材は高いといわれています。ですから東京都内にある工務店も、地元の木だとわかっていても使えないようです」と、高井さん。

地域材ではなく、都道府県別のデータとなるのだが、農林水産省の農林水産統計をみてみよう。2014年7月の木材価格はスギ正角(厚さ10.5㎝×幅10.5㎝、長さ3.0m/2級)の全国平均価格は5万8400円、東京の平均価格は6万4500円。ヒノキ正角(厚さ10.5㎝×幅10.5㎝、長さ3.0m/2級)の場合、全国平均価格が8万500円に対し、東京の平均価格は9万1800円となっている。

一方、木材の生産量をみてみると、東京都のスギの生産量は年間約2万立方メートルで、スギを生産する46都道府県の中で43位。ヒノキの場合も、東京都の生産量は年間約1万3000立方メートル(※4)で、ヒノキを生産する43都府県の中で30位となっている。 (※5)

高井さんはこう話す。
「多摩の認証材は多摩の木のことを熟知している地元の製材所で製材されていますから、品質には自信があります。ただ、多摩の森は、傾斜度が急なところが多く、林道が整備されていない場所が多いこともあって、木を切り出すためのコストがかかってしまうんです。また、これは全国的な問題でもあるのですが、東京でも林業の就業者が減っていて、手入れの行き届かなくなった森が増え、よい木をたくさん産出することがきびしい状況にあります。こうした問題を抱えた東京の林業が活性化することが、多摩産材の一層の普及にもつながると思います」

では、東京の林業は今、どういう現状にあるのだろう? 次回後編でレポートしてみたい。

(※1)
参考資料:林野庁「木材需給表」(平成25年)

(※2)
「木材利用ポイント」事業:
国産木材の利用を進めるために、林野庁が2013年4月から始めている事業。スギやヒノキなど国産木材を使って住宅の新築やリフォームをした場合や、国産木材の製品を購入するとポイントをもらえ、地域の農林水産品や他の木材製品と交換できるというもの。ポイントの対象となる住宅の工事着手・木材製品などの購入期間は2014年9月30日まで。

(※3)
多摩地域の西郡のほか、東京都で森林が集中している地域としては伊豆諸島(大島町、八丈町、三宅村など)がある。伊豆諸島の森林はほとんどが広葉樹主体の天然林。

(※4)
1立方メートル(m3):
長さ3m、幅4.5㎝、厚さ3.6㎝の木材が約200本で1 立方メートル

(※5)
参考資料:平成25年木材統計(農林水産省)

<取材協力>
●一般社団法人TOKYO WOOD普及協会
http://tokyowood.net
●株式会社小嶋工務店
http://www.k-kojima.co.jp
●有限会社沖倉製材所
http://www.okikura.co.jp

<写真協力>
SMALL WOOD TOKYO
http://www.smallwood.jp

2014年 08月22日 16時03分