ペアローンを組んでマイホームを買いたいけれど、夫または妻が転職を考えている夫婦にとって、転職が審査で不利になるかどうかは気になるポイントです。

実際、共働き夫婦がペアローンを検討する際に悩むことが多いのが転職のタイミングです。住宅ローンの審査では安定した継続収入が重視されるため、基本的に転職直後は審査に通りにくくなります。

しかし、転職直後であっても、転職後の雇用条件や収入、これまでの職歴などを踏まえて審査する金融機関もあります。転職先の雇用条件や見込み年収を確認できる書類を提出することで、ペアローンを申し込める場合があります。

この記事では、転職がペアローンの審査に与える影響と、家を買うべきベストなタイミングについて、住宅専門のFP(ファイナンシャルプランナー)として活躍している草野芳史さんの監修のもと解説します。

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夫婦どちらかが転職直後の場合、ペアローンの審査に悪影響となる可能性があります。

 

収入や家計全体に問題がなくても、夫または妻が転職した直後であればペアローンの審査に通らなくなることがあるため、まずはその事実と理由を知っておくことが大切です。

 

ペアローンの審査を受ける際、転職がなぜ不利になりやすいのかという理由を確認しましょう。

 

ペアローンの審査では、転職した事実そのものだけでなく、転職後の勤続年数や収入の安定性などが審査に影響することがあります。

 

なぜなら、金融機関は現在の夫婦の収入が一時的なものではなく、今後も安定して続くかを重視するからです。

 

金融機関によっては勤続年数を審査項目としており、一定の勤続年数を申込条件としている場合もあります。

 

そのため、夫婦それぞれが審査を受けるペアローンでは、片方の勤続年数が短いことが審査に影響する場合があります。

 

国土交通省「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」(※)では、融資時に考慮する項目として「勤続年数」を挙げた金融機関は93.9%であり、このうち勤続年数の条件を「1年以上」とした金融機関は6割以上、「3年以上」とした金融機関は1割以上でした。

 

転職によって勤続年数がリセットされ、1年未満の状態でペアローンに申し込むと、金融機関によっては審査に影響する可能性があります。

 

※ 国土交通省「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」

 

転職直後で勤続年数が短くても、「キャリアアップ転職」であればペアローンの審査に通る可能性があります。

 

同業種・同職種への転職や、転職後に年収が上がるケースなどでは、金融機関によっては、これまでの職歴や転職後の雇用条件などを確認したうえで審査する場合があります。

 

これまでの職歴や転職後の給与条件などが確認できる場合は、雇用契約書や見込み年収などの資料を提示して、金融機関に相談してみるとよいでしょう。

 

一般的にペアローンの選択肢や審査の通りやすさを重視するなら転職前の方が有利な傾向があります。

 

ただ、転職により収入や働き方が大きく変わる可能性があるなら、雇用条件や収入の見通しが立つ転職後に家を買う方がよいケースもあります。

 

転職前と転職後それぞれでペアローンを組む場合のメリット・デメリットは異なるため、自分たちにとって適切なタイミングを見極める必要があります。

 

転職前

転職後

審査の通りやすさ

比較的有利(勤続年数の面において)

勤続年数などが審査に影響する場合がある

選べる金融機関

比較的多い

選択肢が限られる場合がある

資金計画の立てやすさ

現在の収入ベースで計画できる

新しい雇用条件や見込み年収をもとに計画できる

必要書類

現在の勤務先・収入に関する書類が中心

追加書類が必要になることがある

リスク

入居後に転職し減収すると返済負担が重くなりやすい

追加の確認や書類提出が必要になる場合がある

向いている人

現在の勤務先・収入が安定しており、早めに家を購入したい人

転職後の収入が安定する見込みがあり、ライフプランに合わせて家を買いたい人

 

以下では、ペアローンを組むタイミングを転職前と転職後に分け、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

 

転職前にペアローンを組むメリットは、審査を受けられる金融機関の選択肢が比較的多いことです。

 

勤続年数を審査項目としている金融機関では、現在の勤務先での勤続年数が確保されている転職前のほうが、審査上の制約を受けにくい場合があります。現在の勤務先・収入をもとに資金計画を立てやすいこともメリットです。

 

ただし、入居後すぐに転職して年収が下がったり、働き方が変わったりすると、月々の返済負担が重くなるリスクがあります。

 

ペアローンは夫婦それぞれが住宅ローンを借り、双方の収入を前提に資金計画を立てることが多いため、「今借りられるかどうか」だけで判断せず、転職後の家計まで想定しておくことが重要です。

 

なお、事前審査や本審査の後、融資実行までの間に転職・退職する場合は、勤務先や収入状況が変わるため、事前に金融機関へ相談する必要があります。

 

転職後の雇用条件や収入が確定している場合は、新しい働き方や収入を前提として住宅購入後の家計を具体的に検討できることがメリットです。

 

今の家計ではなく、転職後の働き方や収入に合わせて借入額を検討しやすくなるため、ライフプランに沿った判断がしやすくなります。

 

一方、転職直後は勤続年数が短いため、審査が厳しくなりやすく、選べる金融機関は少ない傾向があります。

 

また、雇用契約書や労働条件通知書、採用通知書、給与明細など、転職後の雇用条件や収入を確認できる書類の提出を求められることがあります。

 

【FPからのアドバイス】
住宅ローンは、人生設計に合わせよう

 

転職前と転職後のどちらでペアローンを組むのがよいかは、転職先の勤務条件や年収、これまでの職歴、配偶者の収入状況などによって異なるため、一概にはいえません。

 

一般的には、現在の勤務先での勤続年数や収入実績を基に審査を受けられる転職前の方が選択できる金融機関は多い傾向があります。

 

ペアローンでは夫婦それぞれが審査を受けるため、どちらか一方が転職直後で勤続年数が短いと、予定していた借入額や金融機関の選択に影響することがあります。

 

一方、転職先が前職と同じ業種・職種で経験や資格を生かした転職であることや、転職後の雇用条件などを踏まえ、転職後でも審査を受けられる金融機関があります。

 

ただし、年収が上がる転職だから必ず有利になるわけではなく、雇用形態や試用期間、収入の安定性なども含めて総合的に判断されます。

 

実際のご相談では、転職後の年収や雇用条件がどの程度確定しているか、住宅購入を急ぐ事情があるか、転職する方の収入を借入額にどこまで見込む必要があるかを確認し、転職前に申し込むか、転職後に収入実績ができるまで待つかを判断しています。

 

ただ、家を買うタイミングは、住宅ローン審査や転職などのキャリアプランだけで決めるものではありません。

 

子どもの誕生や進学、夫婦の働き方、今後の収入や支出など、家族全体のライフプランも踏まえて考える必要があります。

 

「家を買うために転職を遅らせる」「転職前に急いでローンを組む」といった本末転倒を避け、住宅ローンは人生設計に合わせるものであり、人生を住宅ローン審査に合わせるものではない、という視点で判断することが大切です。

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夫または妻の転職直後であっても、ペアローンの審査に通る可能性はあります。ローン選びや準備を慎重に行い、事実を正しく伝えて審査に申し込むことが大切です。

 

以下では、転職直後であってもペアローンの審査を通すための3つのコツを紹介します。

 

転職直後で勤続年数が審査に影響する可能性がある場合は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」など、勤続年数を申込要件としていない住宅ローンも候補として検討できます。

 

フラット35は勤続年数を申し込み条件にしていないため、転職したばかりでも申し込みを検討できるのが特徴です。

 

もちろん、フラット35にも所定の要件があり、誰でも利用できるわけではありません。転職後1年未満でも、要件を満たせば利用できる可能性があります。

 

転職直後で源泉徴収票がない場合は、見込み年収証明書などの書類を用意することでペアローンの審査に通る可能性があります。

 

住宅ローンの審査では、現在の収入だけでなく、これからも安定して稼げるかどうかを確認されます。

 

転職直後で勤続年数が短い場合、金融機関によっては申込者が今後得る予定の収入を確認するために、見込み年収証明書や雇用契約書、採用通知書などの提出を求めることがあります。

 

準備に手間や時間はかかりますが、こうした書類を提出できれば転職後の雇用条件や収入も加味してもらえる可能性があるため、金融機関に必要書類を確認し、計画的に準備を進めましょう。

 

転職した事実を「どうせバレないだろう」と隠したまま事前審査や本審査を進めると、ペアローンを利用できなくなる可能性があるため、注意が必要です。

 

転職の事実を金融機関に伝えずに審査を進めると、申告内容と実際の勤務状況に相違が生じ、虚偽申告などの問題につながる可能性があります。

 

審査中に転職した場合は、審査のやり直しや融資条件への影響などが生じる可能性もあるため、勤務先や収入に変更があった場合は、速やかに金融機関へ相談しましょう。

 

住宅ローンの審査では、提出書類や在籍確認などを通じて勤務状況が確認されることがあります。

 

転職の事実を隠すのではなく、転職後の雇用条件や収入を確認できる資料を準備し、正確に申告することが大切です。

 

【FPからのアドバイス】
転職1年未満でもペアローンの審査に通ったケースはある

 

私のご相談者では、夫が転職して1年未満の時期に、夫婦でペアローンを利用して住宅を購入したケースがあります。

 

このご夫婦の場合、転職していない妻は看護師として勤続年数が長く、安定した収入がありました。

 

また、夫の転職もこれまでの経験を生かした同業種・同職種への転職で、年収も上がっていたため、キャリアアップ転職として説明しやすい状況でした。

 

審査にあたっては、夫のこれまでの職歴や転職理由を記載した身上書(申立書)に加え、転職先での雇用条件や見込み年収が分かる資料を提出しました。

 

転職によって収入の継続性が失われたわけではなく、むしろ収入や雇用条件が改善していることを金融機関に説明した形です。

 

金融機関は、勤続年数だけで一律に判断する傾向の強いところではなく、地方銀行や信用金庫など、担当者を通じて転職の経緯や夫婦それぞれの収入・職歴、借入額の配分などを個別に説明しやすい金融機関を中心に検討しました。

 

その結果、転職後1年未満でもペアローンの審査に通ることができました。

 

ただし、ペアローンでは夫婦それぞれが審査を受けるため、配偶者の属性が良ければ必ず通るというわけではありません。

 

この事例では、妻の収入に加え、夫のこれまでの職歴や転職後の雇用条件、収入などを資料で具体的に説明できたことが、審査にあたって考慮された可能性があります。

 

「夫が転職したばかりで審査に通るか不安」「妻が近い将来キャリアチェンジを考えている」といった状況でペアローンを組む場合、ご夫婦の状況によって審査に通る金融機関は異なります。

 

短期間に複数の金融機関へ申し込むと、住宅ローンの申込情報が信用情報機関に登録されます。

 

そのため、申込先はむやみに増やさず、事前相談などを活用して自分たちの条件に合う金融機関を検討することが大切です。

 

とはいえ、どの金融機関に相談すればいいかは自分たちだけで考えても分かりにくいため、住宅ローンに詳しいプロに相談してみましょう。

 

LIFULL HOME’Sの「住まいの窓口」では、住宅購入に関する希望や家計状況などをアドバイザーに相談し、無理のない予算の立て方や家探しの進め方についてアドバイスを受けられます。

 

また、必要に応じてFPを紹介してもらうことも可能です。転職という人生の転機とマイホーム購入を両立させるために、まずは家探しの前にプロへご相談ください。

 

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【FPからのアドバイス】
審査の通過だけを目的にせず、無理のない返済計画を立てよう

 

「転職して年収が下がった」「異業種へ転職した」といった場合でも、ペアローンを利用できる可能性はあります。ただし、まず大切なのは、審査の通過だけを目的にしないことです。

 

年収が下がったのであれば、以前の収入を前提にした住宅予算のまま進めるのではなく、転職後の手取り収入や今後の働き方をもとに、無理なく返済できる借入額を改めて確認する必要があります。

 

事前準備としては、前職の源泉徴収票、転職先の採用通知書や雇用契約書、労働条件通知書、給与明細、見込み年収が分かる資料などをそろえておくとよいでしょう。

 

異業種への転職であっても、これまでの経験や資格が新しい仕事にどのように生かされているか、転職理由に合理性があるかを説明できるようにしておくことが大切です。必要に応じて、職歴や転職理由をまとめた申立書を提出することもあります。

 

また、金融機関によって勤続年数や転職後の収入の見方は異なります。金利の低さだけで選ぶのではなく、転職直後の事情を個別に確認してくれるか、見込み年収を審査に反映できるか、試用期間中でも相談できるかといった点を事前に確認することが重要です。

 

短期間に複数の金融機関へ手当たり次第に申し込むのではなく、まずは事前相談を行い、自分たちの転職事情をどのように審査してもらえるか確認した方がよいでしょう。

 

さらに、ペアローンにこだわらず、借入額の配分を見直す、転職していない配偶者の単独ローンにする、収入合算を利用する、住宅予算を下げる、転職後の給与実績がそろうまで待つといった方法も検討すべきです。

 

厳しい条件のときほど、「どうすれば審査に通るか」だけではなく、「転職後の収入で返済を続けられるか」を冷静に考えることが大切です。

 

審査に通る金額と、安心して返せる金額は同じとは限りません。夫婦の今後の働き方や出産・育児、教育費なども含めてライフプランを確認し、そのうえで借入方法や購入時期を判断することをおすすめします。

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