ペアローンを組んでマイホームを購入する予定の夫婦が考えなければならないことのひとつが、将来の働き方です。
出産や育児、健康上の理由などによって夫婦のどちらかが退職することになった場合、ペアローンの返済にどのような影響が出るのか知っておく必要があります。
ペアローンは夫婦それぞれの収入をもとに借り入れることで、単独ローンより借入可能額を増やせる場合がありますが、契約後に夫または妻の働き方が変わると、思わぬ税務上の問題や返済負担につながる可能性があります。
この記事では、将来、夫または妻が退職・休職した場合に起こり得るリスクと、家を買う前に知っておきたい「安全な資金計画の立て方」について、住宅専門のFP(ファイナンシャルプランナー)として活躍している草野芳史さんの監修のもと解説します。
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ペアローン返済中に片方が退職したらどうなる?2つの大きなリスク

ペアローン返済中の退職は違反ではありませんが、収入が1人分になることで家計の負担が一気に重くなるリスクがあります。
また、意外と知られていませんが、夫婦間でも贈与税が発生する場合があるため、返済の肩代わりには注意しなければなりません。
以下では、ペアローン返済中に夫婦のどちらかが退職する場合に考えられる2つのリスクを解説します。
リスク1:退職しても本人の「返済義務」は消えない
ペアローンを組んだ場合、夫婦のどちらかが退職して収入がゼロになっても、退職した本人のローン返済義務は、退職したことだけを理由に消えるわけではありません。
ペアローンでは夫婦それぞれが主債務者になるため、仕事を辞めたからといって収入を得られない方の返済義務はなくならず、残り続けます。
そのため、退職した方が返済を継続できず延滞すると、信用情報に延滞などの情報が登録される可能性があります。
さらに、返済が長期間滞ると、金融機関からの督促や期限の利益の喪失などを経て、最終的に自宅の売却や競売につながる可能性もあります。
仕事を辞めたのが妻でも夫でも、ローンの返済義務は変わりません。退職が違反になるわけではありませんが、返済を続けなければならない点は理解しておく必要があります。
リスク2:配偶者がローンを肩代わりすると「贈与税」がかかる可能性がある
ペアローンを組んでいるときに夫または妻が退職し、配偶者がローン返済を継続的に負担すると、事情によっては贈与とみなされ、贈与税がかかる可能性があります。
たとえば、「妻が退職して夫が妻名義のローンを代わりに支払う」、「夫が休職して妻が夫のローンを立て替える」などの場合です。
本来ローンを返済する人に代わって配偶者が返済を負担し、その負担について実質的な返済がない場合などには、夫婦間で資金の贈与があったとみなされる可能性があります。
暦年課税(※)の場合、その年の1月1日から12月31日までに受けた贈与額の合計から基礎控除110万円を差し引いた額をもとに、贈与税が計算されます。
夫婦間の助け合いでペアローンを返済していたつもりでも、贈与税が発生するリスクがあることを覚えておいてください。
※暦年課税(れきねんかぜい)とは、1年間(1月1日から12月31日まで)に受け取った財産の合計額が110万円を超える場合に、その超えた分に対して贈与税が課される仕組みのこと。
【FPからのアドバイス】
ペアローン返済の肩代わりは、軽く考えてはいけない
ペアローンで注意したいのは、夫婦の間では「家計はひとつだから、どちらが払っても同じ」と考えやすいことです。
実際には、住宅の所有持分、ローンの名義、購入資金や返済資金の負担割合は、税務上それぞれ確認されます。
国税庁も、夫婦の実際の資金負担割合と不動産の持分割合が異なる場合には、夫婦間の贈与の問題が生じると説明しています。
たとえば、妻の返済額が毎月8万円で、退職後に夫が5年間負担し続けた場合、負担額は単純計算で480万円になります。ただし、この金額がそのまま贈与税の課税対象額になるとは限らず、実際の判断は資金の負担関係や返済実態などによって異なります。
一時的に数か月立て替える場合と、返済の見込みがないまま長期間負担する場合とでは意味が異なります。
後から「夫婦間の貸し付けだった」と説明しても、返済期限や返済実績がなく、実質的に返済を求めていなければ、贈与と判断される可能性があります。
また、年間の負担額が贈与税の基礎控除額以下だからといって、何も考えなくてよいとは限りません。
最初から長期間にわたって一定額を負担する予定だった場合や、購入時から持分と負担割合が合っていなかった場合などは、個別の判断が必要です。
生活費として夫婦間で通常必要な範囲で渡す金銭には贈与税がかからない場合がありますが、住宅ローンの返済資金についても同様に扱われるとは限らないため、注意が必要です。
さらに問題なのは、こうした負担の不一致が、返済中には表面化しにくいことです。
借り換え、売却、離婚、相続などで名義や持分を整理しようとしたときに、「誰がいくら返済したのか」「登記持分と実際の負担が合っているのか」が問題になることがあります。
その段階で単独ローンへの借り換えを希望しても、残る側の年収や年齢、健康状態、担保評価によっては審査に通らないこともあります。
したがって、片方が退職・休職した場合に、もう一方が安易に返済を肩代わりするのではなく、まず金融機関に相談し、返済条件の変更や借り換えなどが可能か確認することが大切です。
併せて、所有持分や贈与税への影響について、税務署や税理士にも確認する必要があります。
購入前に知っておきたいのは、ペアローンは「2人の収入でひとつのローンを返す仕組み」ではなく、原則として「夫婦がそれぞれ自分のローンを返す仕組み」だという点です。
将来どちらかの収入が減ったときに、その期間の家計やそれぞれの住宅ローン返済をどのように賄うのかまで想定しておくことが、贈与税と返済困難の両方を避ける対策になります。
将来のキャリアチェンジや退職に備える! ペアローンを組む前の3つの対策

これからペアローンを組んで家を買うのであれば、夫または妻が退職したり、働き方が変わったりする可能性を考慮して資金計画を立てることが重要です。
今は収入が2人分あっても、出産・育児や病気、介護、転職、独立などによって夫婦のどちらかが働き方を変える可能性はどの世帯にもあります。
共働きが続くケースだけでなく、将来夫婦どちらかの収入が減っても無理なく返済が続けられるように、慎重に計画を立てましょう。
以下では、ペアローンを組む前に考えておきたい3つの対策について詳しく解説します。
対策1:将来の働き方を想定して「無理のない住宅予算」を決める
ペアローンを検討する際、最初に考えたいのは「いくら借りられるか」ではなく、将来の働き方が変わっても無理なく返済できる住宅予算です。
ペアローンでは夫婦それぞれが自分の年収をもとに住宅ローンを借りるので、世帯全体では借入可能額を増やしやすくなります。
しかし、夫婦2人とも働き続けることを前提に借入額を決めていると、退職や転職、休職、時短勤務などで片方の収入が下がった場合、返済負担が厳しくなる可能性があります。
そのため、借入可能額ではなく、将来の収入減も考慮して無理なく返済を続けられる範囲で住宅予算を設定することが大切です。
対策2:将来の働き方に合った「住宅ローンの組み方」を選ぶ
無理のない住宅予算が決まったら、その予算と夫婦の将来の働き方に合った住宅ローンの組み方を検討します。
たとえば、夫婦ともフルタイム勤務を続ける予定ならペアローンも選択肢となり、将来一方が退職する可能性が高い場合は、働き続ける側の収入を中心にした単独ローン、2人の収入を審査に反映させつつ主債務者を1人にしたい場合は連帯保証型の収入合算など、選択肢は複数あります。
※収入合算の取り扱いは金融機関・商品によって異なります。
ただし、単独ローン、ペアローン、連帯保証型の収入合算、連帯債務型では、住宅ローン控除や団体信用生命保険(以下、団信)、返済義務、住宅の所有持分などの扱いが異なります。
単純に「単独ローンなら安全」「連帯保証なら安心」と考えるのではなく、それぞれのメリット・デメリットを比較して選ぶことが大切です。
たとえば、夫1人の収入で希望額の住宅ローンを借りられる場合でも、住宅ローン控除や団信などのメリットを考慮して、あえてペアローンを選ぶことも考えられます。
対策3:ペアローンを選ぶなら「収入減への備え」も考えておく
将来の収入減も考慮したうえでペアローンを組みたい場合は、どちらかが退職・休職した場合にどう対応するかも、購入前に考えておきましょう。
特に重要なのが、収入減に備える手元資金です。借入額を減らそうとして貯蓄の多くを頭金に充ててしまうと、退職や休職によって収入が減ったときに、生活費や住宅ローンの返済に充てる資金が不足する可能性があります。
一定期間は残る収入と貯蓄で返済を続けられるよう、手元資金を残しておくことも大切です。
また、ペアローンを組んだ後に夫婦のどちらかが退職し、自分名義のローンを返済できなくなった場合には、働き続ける側の単独ローンへの借り換えによって、夫婦それぞれが負っている債務を1人にまとめる方法が選択肢になる場合もあります。
これにより、もう一方が退職した側のローンを継続的に肩代わりする状態を解消できる可能性があります。
ただし、ペアローンを単独ローンへ借り換えられるかどうかは、その時点の年収や返済負担率、年齢、勤続年数、健康状態、住宅の担保評価などの条件によります。
もともと1人の収入では必要な金額を借りられずペアローンを利用した場合には、将来も単独ローンへの借り換えが難しい可能性があります。
そのため、「将来は単独ローンに借り換えればよい」と考えて借入額を増やすのではなく、借り換えは万一のときの選択肢のひとつとして考えておきましょう。
借り換えができなくても返済を続けられる資金計画にしておくことが重要です。
【FPからのアドバイス】
共働きを続ける以外のケースもシミュレーションしよう
「将来、夫婦のどちらかが退職・休職する可能性があるから、ペアローンは利用できない」ということではありません。ただ、共働きが続くことを前提に借入可能額いっぱいまで借りるのは避けるべきです。
私が相談を受けたときにまず確認するのは、退職や休職がいつ頃、どのくらいの期間続き、収入がどこまで減る可能性があるかです。
たとえば、出産・育児による一時的な収入減なのか、転職や独立によって収入が不安定になるのか、完全に退職する可能性があるのかによって、必要な備えは異なります。
そのうえで、共働きを続けるケースだけでなく「一方が数年間休職する」「時短勤務で収入が減る」「一方の収入だけで生活する」といった複数のパターンでライフプランをつくり、住宅ローン返済だけでなく、教育費や生活費、住宅の維持費、老後資金まで含めて家計が成り立つかを確認します。
予算については、必ずしも単独ローンで購入できる金額まで抑えなければならないわけではありませんが、少なくとも一方の収入が減っても、一定期間は残る収入と貯蓄で返済を続けられる水準にすることが大切です。
ローンの組み方については、ペアローン、連帯保証型の収入合算、連帯債務型、単独ローンを比較します。将来、一方が仕事を辞める可能性が高い場合には、主債務者を1人とする収入合算などが選択肢になることもあります。
ただし、住宅ローン控除や団信、返済義務、所有持分の扱いがそれぞれ異なるため、単純に「連帯保証なら安全」とは限りません。
大切なのは、先にペアローンを組むかどうかを決めることではありません。将来の働き方が変わるケースを含めて無理のない住宅予算を確認し、その予算に合った借り方を選ぶことです。
将来の働き方が不安なら、家を買う前にプロへ相談を

「数年後に妻が仕事を辞めるかもしれない」「夫が独立を考えている」など、将来の働き方に不安がある場合は、家探しの前に整理しておくことが大切です。
ライフプランとして働き方の変化を想定しておけば、適切な方法で住宅ローンを検討できるでしょう。
とはいえ、夫婦だけで相談しても、どの方法で家を買うのが自分たちにとって最適なのかは分かりにくいものです。将来の働き方とマイホームの購入で悩んでいる方は、ぜひLIFULL HOME’Sの「住まいの窓口」をご利用ください。
「住まいの窓口」では、専任アドバイザーが働き方の変化をはじめとする夫婦の将来のライフプランをていねいにヒアリングし、無理のない予算の立て方や資金計画を提案してもらえます。
さらに詳しいシミュレーションが必要な場合は、FPを紹介してもらうことも可能です。
後悔しないマイホーム選びのために、まずはプロと一緒に安心できる資金計画を立てることから始めましょう。
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まとめ
ペアローンは夫婦それぞれの収入をもとに借り入れることで、単独ローンより借入可能額を増やせる場合があるため、理想のマイホームに手が届きやすくなりますが、将来夫婦のどちらかが退職・休職した際に家計の返済負担が重くなったり、返済の肩代わりによって贈与税の問題が生じたりする可能性があります。
将来、夫婦のどちらかが退職して返済が難しくなる事態を防ぐためには、将来夫婦のどちらかの収入が減っても返済できる住宅予算を確認したうえで、単独ローンやペアローン、収入合算など、それぞれに合った借り方を選ぶことが大切です。
将来の借り換えも選択肢のひとつですが、必ずできるとは限らないため、借り換えを前提に無理な予算を組まないようにしましょう。
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