
連棟式建物とは、複数の建物が一体型になっている建物のことです。連棟式建物は、住戸の壁を共有して建築される構造がゆえに、一戸建てやマンションなどと比べると一般的に売却しにくいといえます。
- 連棟式建物が売れなくて困っている
- 連棟式建物をより早く・高く売却したい
上記のようなお悩みを抱えている人は少なくありません。この記事では、連棟式建物をより早く・高く売却するポイントを解説していきます。
この記事で分かること
- 連棟式建物の特性・メリット・デメリット
- 連棟式建物が売れないといわれる理由
- 連棟式建物の一般的な売却相場
- 連棟式建物の主な売却方法
- 連棟式建物をより早く・高く売却するためのポイント
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もくじ
そもそも連棟式建物とは?

連棟式建物とは、複数の建物が一体型になっている建物のことです。登記上は1つの建物として扱われますが、各部屋の所有者は異なるケースが多くあります。
土地の広さや形状が制約となり、独立した一戸建てを複数建てるのが難しい場合に連棟式建物が建築された背景があります。
連棟式建物は建築基準法上の「長屋」にあたり、近年呼ばれるようになった「テラスハウス」や「タウンハウス」も同様の分類となっています。
- テラスハウスとタウンハウスの違い
- 連棟式建物のメリット・デメリット
ここからは、上記2点を詳しく解説します。
テラスハウスとタウンハウスの違い
テラスハウスとタウンハウスの違いは、簡単にいうと”土地の権利形態”です。
テラスハウスは建物が連結していますが、各戸の敷地は独立しており、それぞれが土地の所有権を持っています。
一方でタウンハウスは1つの敷地を共有し、敷地権を住人全員が持ちます。テラスハウスでは、各戸に専用の庭や駐車場があるのに対し、タウンハウスでは庭や駐車場も共用です。
テラスハウスは一戸建て住宅に近く、タウンハウスはマンションに近い形態といえます。
連棟式建物のメリット・デメリット
連棟式建物のメリットは、以下の4つが挙げられます。
● 土地の有効活用:狭い土地や変形した土地を最大限に利用できる
● 建設コストの削減:壁を共有するため、材料費や工事費が抑えられる
● 防風効果:隣接する建物同士が風を遮るため、風当たりが弱くなる
● 省エネルギー:共有壁による断熱効果で、暖房や冷房の効率が上がる
一方で、連棟式建物のデメリットは以下の4つが挙げられます。
● プライバシーの問題:壁を共有するため、音漏れなどでプライバシーが損なわれる可能性がある
● 所有権の複雑さ:登記や修繕時の費用負担など、隣家との調整が必要となる。
● デザインの自由度の制限:外観や構造が統一されるため、個々の家のデザインに制約がある
● 災害時のリスク:地震や火災が発生した場合、被害が隣接する建物に広がりやすい
連棟式建物のメリット・デメリットを把握することで、売却の際にも特性を活かした戦略が立てられるでしょう。
連棟式建物が売れないといわれる理由

連棟式建物が売れないといわれる理由は、主に以下の4点です。
- 築年数が経過した建物が多いから
- 隣家の許可が必要になるから
- 連結部分の切り離しが一般的に困難であるから
- 住宅ローンが組みにくいから
築年数が経過した建物が多いから
連棟式建物は、一般的な住宅に比べて築年数が古いものが多い傾向にあり、経年劣化が進んでいて管理や修繕が追いついていない物件も存在します。
見た目が古かったり、構造上で経年劣化が進んでいたりすると、買手がなかなか付かないケースがあるでしょう。
また、劣化だけでなく法令が整っていない時期に建築された建物の場合、そもそも現行の建築基準法に適合していないケースもあります。その場合も同様に、売却が困難になります。
隣家の許可が必要になるから
連棟式建物の売却を検討する場合、隣家の住人全員の許可が必要です。全員から許可をもらうのは容易ではなく、基本的に売却は困難になります。
また、売却だけでなくリフォームやリノベーションを実施する場合も、住人全員の許可が必要です。大規模な改修工事が予想されるため、一般的に許可を得るのは困難でしょう。
このように、連棟式建物の売却は非常に多くの手間がかかります。買主側においても、購入後に同様の手続きを進める必要があるため、一般的に需要が低い傾向にあります。
連結部分の切り離しが一般的に困難であるから
連棟式建物は、隣家との連結部分を切り離して一戸建て住宅として建て替えることが可能です。しかし、一般的に切り離しの工事は困難な傾向にあります。
なぜなら、連結部分を切り離すと接道義務(※)を満たせなくなるおそれがあるからです。
【接道義務とは】
接道義務とは建築基準法に基づくもので、"幅員4m以上の道路"に敷地が2m以上接していないと再建築できない規定のこと。
例えば、敷地が奥行きの深い形状の場合、奥側の建物を切り離すと、その部分の土地が道路に接しておらず、接道義務を満たせなくなることがあります。
再建築不可物件になると新築や増改築、建て替えができないため、建物を解体しても新しい建物は建てられません。その結果、需要が低くなり売却が難しくなります。
住宅ローンが組みにくいから
連棟式建物を購入する際には、住宅ローンの審査が通りにくいデメリットがあります。 なぜなら、不動産としての価値が低いとみなされるからです。
金融機関は、万が一ローンの返済が滞った場合に、担保としている家を強制的に売却してローンを回収するのが一般的です。
しかし、連棟式建物は切り離しが困難である特性上、不動産としての価値は低い傾向にあります。売却しても融資額を十分に回収できないリスクが高くなるため、住宅ローンの審査に通りにくくなります。
連棟式建物の一般的な売却相場

連棟式建物の売却相場は、一般的な住宅と比べて20〜30%低くなる傾向にあります。
なぜなら、前述の通り連棟式建物は築年数が経過しているケースや、接道義務を満たしていないケースなど、資産価値が低くなる要素が多く存在するからです。
とはいえ、売却相場はあくまで目安であり、必ずしもその通りになるとは限りません。
例えば、利便性の高いエリアに位置し、定期的なメンテナンスで良好な状態を保っている物件であれば、需要が高い場合もあります。逆に、周辺環境が整っていないエリアに立地し家屋の状態も悪い物件は、相場より値下げしたとしても売れ残るケースがあります。
自分が所有する連棟式建物の適正価格を知りたい場合は、不動産会社に査定を依頼することをおすすめします。
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連棟式建物の主な売却方法

連棟式建物の売却方法として、主に以下3つが挙げられます。
- 不動産会社に仲介を依頼して売却する
- 不動産会社に直接買取してもらう
- 隣家に買取を相談する
不動産会社に仲介を依頼して売却する
連棟式建物を売却する際には、不動産会社に仲介を依頼する方法が一般的です。
なぜなら、不動産会社に依頼することで、査定から売却活動、引き渡しまで一貫したサポートを受けられるからです。
例えば、連棟式建物は通常の一戸建てやマンションとは異なり、複数の所有者が関与することが多く、売却に際しては特有の課題があります。複雑な課題をスムーズに解決するためには、不動産取引のプロである不動産会社の専門知識と経験が欠かせません。
契約書の作成や、登記手続きなどの煩雑な事務手続きも代行してくれるため、売主の負担を大幅に軽減できます。
不動産会社に直接買取してもらう
連棟式建物の売却方法の1つとして、不動産会社による直接買取が挙げられます。
不動産会社が売主を探さずに自らが買主となって現金で買い取るため、成約までの流れがスムーズな点や、現金化までのスピードが速い点がメリットです。
一方で、直接買取は仲介と比べて売却価格が相場の70%〜80%程度になる傾向があります。なぜなら、不動産会社は買取後にリノベーションなどを実施して住宅に付加価値を付けて再販することを前提としているからです。
つまり、不動産会社はリノベーションなどで発生した費用を踏まえて一定の利益が担保できる価格を設定しており、その結果仲介よりも売却価格が低くなります。
不動産会社による直接買取は、とにかく早く売却したい人に向いている方法だといえます。
隣家に買取を相談する
あまり現実的ではありませんが、連棟式建物の売却方法として隣家に買取を相談する手段もあります。
メリットは、購入意欲が高いことが多い点です。なぜなら、隣家の住人はすでに同じ場所に住んでおり、エリアや物件の特性を理解しているからです。物件の状態を把握しているため、修繕やリフォームの要求が少ない場合があります。
さらに、地域の不動産市場や仲介会社を通さずに直接交渉できるため、手続きが簡略化できる場合があります。隣家が購入することで、地域の一体性やコミュニティが保たれ、居住環境の安定が期待できる点もメリットです。
一方で、隣家が購入を希望しない場合、交渉が長引くおそれがあります。買取金額に関する意見の相違が原因で、関係が悪化するリスクもあるでしょう。
さらに、資金不足によって途中で購入を断念するケースも考えられます。これらのデメリットを踏まえた上で、隣家に買取を相談するかどうかを慎重に検討することが重要です。
連棟式建物をより早く・高く売却するためのポイント

以下では、売却できる条件を満たしていることを前提として、連棟式建物をより早く・高く売却するためのポイントを3つ紹介します。
- 自分でもある程度の知識を身につけておく
- スケジュールに余裕を持たせる
- 査定は複数の不動産会社に依頼する
自分でもある程度の知識を身につけておく
連棟式建物を売却する際には、自分でもある程度の知識を身につけておくことが重要です。
連棟式建物の構造や市場動向、売却手続きに関する基本的な情報などを理解しておくことで、不動産会社との交渉や購入希望者とのやり取りがスムーズになります。
事前にある程度の知識を持つことで、売却活動を有利に進められ、結果的に早期売却と高値売却ができる可能性が高まります。
スケジュールに余裕を持たせる
連棟式建物を売却する際には、スケジュールに余裕を持たせましょう。
一般的に不動産の売却には、3〜6カ月程度かかると言われています。連棟式建物の場合は、売却活動が長引くことも予想されるため、よりスケジュールに余裕があった方が良いでしょう。
特に法務局に登記申請書を提出してから登記が完了するまでには、通常約1週間から10日ほどの時間がかかります。この期間を考慮しないと、売却手続きがスムーズに進みません。例えば、購入者との契約締結や引渡しのタイミングを調整する際に、登記手続きが遅れると全体のスケジュールに影響を及ぼします。
そのため法務局での手続きを含め、全体のスケジュールに余裕を持たせて計画を立てておきましょう。登記が完了すると、登記識別情報通知と登記完了証が発行されます。
2種類の書類は法務局の窓口で受取れますが、事前に申請すれば自宅などに郵送も可能です。特に郵送手続きは非常に便利で、手間を省けます。
スケジュールに余裕を持つことで手続き全体がスムーズに進み、予期せぬトラブルを避けられるでしょう。
査定は複数の不動産会社に依頼する
連棟式建物と一口にいっても、土地や建物の権利状況、立地条件などによって売却時の課題はさまざまです。所有している連棟式建物に最適な売却方法を見つけるためには、経験豊富な専門家のアドバイスを受けましょう。
そのためには、まず不動産会社に査定を依頼することが第一歩です。その際、複数の不動産会社に査定を依頼することをおすすめします。
複数の不動産会社に査定を依頼することで、査定価格の高さだけでなく根拠やサポートの違いなどを網羅的に可視化できます。
査定結果や根拠を適切に提示・説明してくれた不動産会社の中から、自分に合ったところをパートナーとして見つけることが重要です。
連棟式建物が1年以上売れないときの対処法

以下では、連棟式建物が1年以上売れないときの対処法を3つ解説します。
- 住人の許可を得てから建て替える
- 住人全員が納得できる提案を行う
- 他の部屋を買取してから建物全体を売却する
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住人の許可を得てから建て替える
前述した通り、連棟式建物を売却する際には住人全員の許可が必要です。
不動産の所有者が1人であれば、売却が難しくなることはほとんどありません。不動産会社に仲介を依頼し、販売価格を自分で決めて売却できます。
しかしながら、例えばAさんとBさんの2世帯が連棟式建物に住んでいる場合、建物全体を売却するには2名の同意が必要です。
売却だけでなく、リフォームやリノベーションなどを行う場合も同様に、所有者全員の許可が必要となります。所有者全員の同意がなければ、大規模な改修工事を実施できません。
住人全員が納得できる提案を行う
連棟式建物が1年以上売れない場合、住人全員が納得できる提案を行うという選択肢もあります。まずは住人全員と話し合い、各自の希望や懸念を明確にすることで、共通の課題や個別の問題を把握できるでしょう。
次に、プロのアドバイスを受けることを検討しましょう。例えば、不動産会社などに相談し、現状を改善するための具体的な提案をもらいます。物件のリフォームやリノベーションを提案し、見た目や機能を向上させることで、購入希望者の関心を引けるかもしれません。
価格の見直しも重要であり、市場調査によって適正な価格設定を行うことで購入希望者が見つかりやすくなります。価格を下げることが難しい場合は、物件のメリットや魅力を全面的に伝える必要があります。
また、広告戦略の見直しも検討すると良いでしょう。例えば、魅力的な写真や詳細な説明を掲載することで、集客力の強化が見込めます。
以上の総合的な対策を実施することで、住人全員が納得できる形で物件を売却できる可能性が高まります。
他の部屋を買取してから建物全体を売却する
前述した通り、連棟式建物は複数の所有者がいることで解体や再建築を行う際に、全員の許可と承諾が必要です。
そこで、他の部屋をすべて買取して、所有者を自分のみにする方法があります。これにより、連棟式建物を1つの住宅として扱えるため、次のようなメリットが生まれます。
- 所有者が1人になることで、すべての決定を自分で行える
- 大型物件として売却を検討できる
- 一部を賃貸物件として運用することが可能になる
- 解体して再建築することが可能になる
- 再建築不可物件でも、内部をリノベーションできる
決定権を1人にすることで、住宅の利用方法に幅が広がり、物件の価値を向上させられます。
ただし、住人全員の承諾を得て他の部屋を買取するのは容易ではありません。他の住人が自分と同じタイミングで住み替えや売却を検討しているケースであれば、実現性の高い方法だといえます。
連棟式建物の売却に関するよくある質問
連棟式建物の売却に関するよくある質問を紹介します。
- 連棟式建物の切り離しに費用はかかる?
- 連棟式建物はリフォームできる?
- 連棟式建物が再建築不可になる理由は?
連棟式建物の切り離しに費用はかかる?
連棟式建物では、補強などの費用をある程度負担するケースがあります。なぜなら、連棟式建物の切り離し作業は非常に複雑であり、切り離された部分が構造的に弱くなるからです。
さらに、切り離された建物が建築基準法に違反しない構造にしなければなりません。
トラブルを避けるためには、区分所有法第62条に規定される同意(連棟式建物の所有者の4/5以上の同意)が必要です。
連棟式建物はリフォームできる?
前述した通り、連棟式建物のリフォームは一般的に可能です。
ただし、リフォームする際には、費用対効果をしっかり考慮することが重要です。一般的には水回りや壁紙など、効果的な部分に対してリフォームするのが基本です。
建物の状態によっては、耐震補強などの大規模な工事が必要になる場合もありますが、建物全体のバランスが崩れ、逆に弱くなってしまうリスクがあります。状況次第では、結果的に建物全体の工事が必要になることもあります。
工事を実施する場合には、隣の建物やすべての建物に対して調整が必要となり、住人全体の協力が必要です。
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連棟式建物が再建築不可になる理由は?
連棟式建物が再建築不可になる理由は、切り離しが一般的に困難な点です。
隣の建物と切り離すケースをはじめとした再建築をしようとすると、接道義務を満たせなくなる場合があります。
連棟式建物の売却にはある程度の工夫が必要

連棟式住宅の売却にはさまざまな方法や、メリット、リスクが存在するため工夫が必要です。スムーズに売却活動を進めるには、住人との話し合いや、査定を依頼する不動産会社の見極めが非常に重要となるでしょう。
不動産会社による仲介で売却を検討するのであれば、複数の査定を受けることで、適正価格や査定価格の根拠が把握しやすくなります。
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記事執筆・監修
監修者:山口 貴弘(やまぐち たかひろ)
金融系に特化したライター。2級FP技能士として執筆業を中心に活動中。マーケティング会社でWebディレクターを経て、現職は生命保険会社。資産運用や不動産、保険の記事を中心に編集・監修も担当。