賃貸物件の契約条件では、退去時の原状回復(原状復帰)を行うのが一般的です。そのため長い間「賃貸住宅に住む以上インテリアは我慢するしかないという風潮が広く浸透していました。それでも近年はインテリア意識の高まりから、貼って剥がせる壁紙・釘や接着剤で固定する必要のない床材など、原状回復が可能なリフォーム用品が人気を集めています。そしてさらに、原状回復の義務がない、DIY可の賃貸物件も登場してきています。
カスタマイズ可の物件

原状回復とは、借りた部屋を退去する際に、住み始める前と同じ状態に戻すことです。とはいえ毎日普通に暮らすだけでも家は汚れたり傷つくものですから、完全に元の状態を保つのは難しいもの。
国土交通省のガイドラインでは、通常の使用による床の細かな傷や、紫外線による壁紙の色あせ、画びょうの穴などは、原状回復の範囲には含まれないと定められています。
もちろん壁紙を張り替えたり、壁や柱に棚をネジ止めしたりといったリフォームは自由にできません。

 

画鋲くらい刺してもいいんです…!

画鋲くらい刺してもいいんです…!

少子高齢化を迎え人口がゆるやかに減少する日本国内では、空き家の増加が社会問題化しています。
築年数の浅い物件やリフォーム済みの物件は入居者が決まりやすいですが、築年数の古い物件やリフォームされていない物件は敬遠される傾向があります。人が住まない家は劣化の速度が速いため荒れていき、ますます借り手が見つかりにくくなるといった悪循環に陥りがちです。
そこで古い賃貸物件の有効活用のために登場してきたのが、退去時に原状回復の義務がない「DIY可物件」です。近年のDIY人気の高まりもあり、新しい賃貸住宅の契約形態として注目されています。

 

DIYで理想のインテリアに近づける

DIYで理想のインテリアに近づける

カスタマイズ可の物件

2014年3月に国土交通省が「借主負担DIY型」の契約形態のガイドラインを発表しました。UR都市機構(旧住宅公団)でも、いくつかの団地でDIY可物件の提供を始めています。一般的な賃貸住宅は「貸主負担」が基本で、貸主(大家)が入居前のハウスクリーニングや修繕の費用を負担します。また、入居中に配管や設備などが故障した場合も原則的に貸主負担で修繕を行います。その代わり、借主(入居者)には原状回復の義務があるので、自由なリフォームはできません。

 

一方、新しいガイドラインによる「借主負担DIY型」の契約形態では、入居中は借主が費用負担して自由にリフォームを行うことが可能で、退去時の原状回復義務もありません。また、入居前のハウスクリーニングを行わずに現状のまま貸すことができるため、貸主の負担も軽減でき、安い家賃を設定することも可能になります。

 

※出典:国土交通省が「借主負担DIY型」の契約形態のガイドライン-国土交通省 2014年3月20日

 

国も後押しするDIY賃貸

国も後押しするDIY賃貸

住みながら少しずつ手を加えていけるのが、DIYリフォームの魅力です。DIY初心者の人には、まずは壁紙の張り替えがおすすめ。壁紙は多少シワができたり貼り合わせがずれたりしても、機能的にはさほど問題がないからです。まずはトイレやクローゼットの中など、面積の狭い部分から始めると良いでしょう。

 

また、どんな作業にも共通する成功のポイントが下準備です。壁紙を張り替える場合は既存の壁紙をきれいに剥がして下地をパテなどで平坦に整え、ペンキを塗る場合には養生テープなどで塗料のはみ出しや飛び散りを防ぎましょう。メインの作業に早く取り掛かりたいと思いがちですが、下準備に時間を掛けて丁寧に行うことで仕上がりの美しさに差が出ます。
もちろんDIY可物件だからといって、すべての作業を自分で行うことにこだわる必要はありません。難易度の高い作業はプロに依頼し、できる範囲だけを自分で行うというのも良いでしょう。特殊な工具や職人の技術が必要な部分を施工し、仕上げ作業は残す「DIY支援」を行う工務店も増えています。特にお風呂やトイレなど水回りの設備の交換といった大掛かりなリフォームを考えている場合は、住み始める前に調べておくと良いでしょう。

 

プロに依頼するのもアリです

プロに依頼するのもアリです

カスタマイズ可の物件

DIY可能物件の多くは、施工を行う前にリフォームの内容を貸主に伝え、了承を得る必要があります。リフォームの可能な範囲が定められていることもあるので、事前に確認しましょう。

 

自由なDIYが可能といっても、注意しなければいけないポイントもあります。電気のコンセントを増設したり配線を分岐したりする作業は、電気工事士の資格を持つ人が施工を行うことが法律で定められています。素人による間違った作業が原因で漏電が起き、火事にもつながることもあるので、電気工事は必ずプロに依頼しましょう。なお、照明器具を交換する程度の作業であれば無資格者でも問題ありません。

 

工具を使用する作業で大きな音が出ることもあるので、周囲への騒音には注意しましょう。深夜や早朝の作業は避け、集合住宅であれば隣家の住人にリフォームを行うことを伝えておくとトラブル防止になります。
また、部屋を広くしたいからといって、柱や壁を勝手に撤去してはいけません。構造躯体(骨組み)の支えになっている部分を壊してしまうと、建物の強度に支障をきたすおそれがあります。撤去できるかは建物の構造によって異なるので、作業を行う前に専門家に相談しましょう。

 

構造を壊さないように気をつけて…!

構造を壊さないように気をつけて…!

カスタマイズ可の物件

更新日: / 公開日:2016.10.20