年50社以上が立地する福岡市が東京で企業誘致セミナーを開催

会場に加えて、オンライン配信も行われた会場に加えて、オンライン配信も行われた

7月26日、企業誘致セミナー「福岡進出 ―年50社以上が立地する商都のポテンシャル―」が東京・大手町の日経ホールで開催された。福岡市長・高島宗一郎氏による「市長プレゼンテーション」に始まり、福岡のポテンシャルを分析する「トークセッション」、福岡市内でビル開発を手がける8社が次々と登壇する「ディベロッパーピッチ」という豪華なプログラム。最後は、ロビーに設置されたブースで自由にビジネスマッチングが行われた。「福岡の今」が見える、舞台で繰り広げられた3つのプログラムの内容をお届けしたい。

まずは福岡市長の高島氏が、生まれ変わる福岡市の状況と魅力、方向性について熱く語った。福岡市は「人と環境と都市活力の調和がとれたアジアのリーダー都市」を目指し、3つの成長戦略を描いている。短期で「交流人口の増加」、中期的に「知識創造型産業の振興」、長期的には「支店経済からの脱却」を掲げ、さまざまな取り組みを進めてきた。

交流人口の増加に関しては、MICE(国際会議)の開催回数が政令指定都市1位(2009~16年)、観光入込客数は過去最高の2,100万人を突破(2019年)。第三次産業が9割の福岡市にとって、効果は大きい。

「知識創造型産業の振興」と「支店経済からの脱却」を目指す

知識創造型産業の分野では、ゲームや音楽などクリエイティブ全般について、産学官が連携して振興を図ってきた。結果として、市内のゲーム産業事業所は17(2010年)から36(2022年)に増え、従業員数も約3倍に。エンジニアが学び合う拠点も作り、クリエイティブ人材が福岡に集まってきている。

支店経済からの脱却を図る戦略には、福岡市でビジネスを生み出すスタートアップと、外から高付加価値なビジネスを呼び込むという2つの柱がある。福岡市は2012年にスタートアップ都市宣言を行い、日本最大級のスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」を開設。2014年から多種多様な801社が起業し、累計資金調達は365億円に。開業率は政令指定都市で4年連続1位(2018~21年)、地価上昇率も政令指定都市トップで、昨年の市税収入は過去最高の3,583億円を更新した。

2010年、当時最年少で市長に就任した高島氏。常にトップに立って市をアピールしてきた2010年、当時最年少で市長に就任した高島氏。常にトップに立って市をアピールしてきた

全国的に少子高齢化が進むなか、福岡市の人口は右肩上がりに増えて現在163.9万人。人口増加数・率ともに政令指定都市1位だ。中でも0~14歳の増加数・率、若者の割合(15~29歳)が政令指定都市1位で、大学や専門学校が多く、理系学生を毎年7,000人輩出していることは注目すべき点といえる。

また、市民へのアンケート(2022年)によると、「住みやすい」96.2%、「住み続けたい」92.7%と満足度の高さが際立つ。ビジネスマンが選ぶ「住みよかった所」全国1位、通勤・通学時間(の短さ)が7大都市圏1位という結果もあり、コンパクトなエリアに住み働き、すぐ近くに山や海があるのも特徴だ。

「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」を進行中

圧倒的なビジネス環境のよさも魅力の一つ。空港から博多駅まで5分、天神まで11分で、東京往復1日56便、アジアに行くのも便利だ。南海トラフ巨大地震が発生したとしても、首都圏との同時被災のリスクが低く、BCPの観点で福岡に拠点を作る企業が増えており、10年連続50社以上が福岡に立地し、2022年度は過去最高の65社にのぼった。

セミナーにはオンラインを含めて約1,000人が参加したセミナーにはオンラインを含めて約1,000人が参加した

高島氏が市長に就任した2010年には11%だった空室率が2019年1.2%まで下がり、福岡に来たくてもオフィスがないという課題が浮上した。そこで福岡の都市機能をアップデートするために生まれたプロジェクトが「天神ビッグバン」だ。国家戦略特区によって航空法の高さ規制を緩和し、建て替え前よりも高い建物や大きな建物を建てることが可能になった。さらに福岡市独自の容積率の緩和などのパッケージを作ったことで、2026年までに天神交差点を中心とした500mのエリアで70棟、さらに「博多コネクティッド」として2028年までに博多エリアで20棟のビルが建て替わる予定だ。

コロナ禍には産学官で「TEAM FUKUOKA」を結成し、国際金融機能の誘致に力を注いだ。結果として、3年弱で19社の誘致に成功。スタートアップや環境関連ビジネスなどにグローバルなお金を入れて、より早く大きく成長させる後押しをしている。

市では現在、立地交付金を大幅に拡大して、福岡進出を強力に推進中。高島氏は最後に「福岡をより大きな夢が叶うまちにしたいという思いで、続々とチャレンジしまくっています。動き続ける福岡市の仲間として、皆さんの企業のお越しを心よりお待ちしています」と呼びかけた。

セミナーにはオンラインを含めて約1,000人が参加した天神ビッグバン規制緩和第1号案件の「天神ビジネスセンター」は2021年に竣工した

「都市間競争の時代における福岡のポテンシャル」を語り合う

続くトークセッションでは、福岡市に拠点を置く3社などの5人が登壇。福岡地域戦略推進協議会の石丸修平氏がモデレーターを務め、3つのキーワードをもとに話を進めた。

パリバ証券の中空麻奈氏は、客観的な立場から、福岡市を金融の経済特区にしてはどうかと提案。働く所と遊ぶ所が近いのでヘッジファンドを呼び込みやすく、九州大学に技術が集積していてお金が集まりやすいと根拠を示した。

東日本大震災を機に福岡に営業所を設立したステート・ストリート信託銀行の豊田康信氏は、福岡を選んだ最大の理由は「都市のコンパクトさ」で、海外からのビジターに空港からのアクセスの良さを絶賛されると話した。また、スタッフの8割が自転車で通勤できる範囲に住み、平均の通勤時間が約35分と紹介。アジアに近い立地条件も強みであり、今後は海外の業務も福岡で担っていく予定であると述べた。

次に「人材の獲得」をテーマに、アクセンチュアの伊佐治光男氏が話をした。同社は30年以上福岡でサービスを提供し、拠点を作ったのは2019年。立地した背景として、人口増加率、なかでも若年層の人材が豊富であり、住みたいまちとして選ばれているためと説明した。また、福岡には事業を起こすタイプの人材が多く、スタートアップのコミュニティが非常に発達していることも魅力と力を込めた。

登壇者は写真左から石丸氏、伊佐治氏、永溪氏、豊田氏、中空氏登壇者は写真左から石丸氏、伊佐治氏、永溪氏、豊田氏、中空氏

「都市のコンパクトさ」「人材の獲得」「QOL」が魅力

3つ目のテーマ「QOL」について話したのは、ジャパネットホールディングスの永溪幸子氏。同社では20年近くコールセンターを福岡市に置き、2021年には業務部門のオフィスも設けた。コロナ禍に在宅勤務を取り入れるなか、関東では通勤が大きな負担という不満が露呈し、出社したくなるオフィスを作ろうと福岡市へ移転。通勤時間が激減してQOLが上がったと満足度が非常に高く、クリエイティブ人材の確保にもつながったと話した。

石丸氏は最後に「支店経済からの脱却を長く掲げてきて、最近は福岡支店が事業領域を広げたり、本社と共に新たなビジネスをしたりという動きが増えている。ハードも整ってきて動きが加速し、福岡が拠点として選ばれるところまで着実にきたと感じている。福岡進出に関して熟慮いただけたら大変ありがたい」と締めくくった。

「コンパクトシティなので、すぐに飲みに行ったり、スポーツやレジャーにも行くことができたりしてQOLが上がっている」と永溪氏「コンパクトシティなので、すぐに飲みに行ったり、スポーツやレジャーにも行くことができたりしてQOLが上がっている」と永溪氏

ディベロッパー8社が福岡市の最新物件を紹介

最後の「ディベロッパーピッチ」では、福岡市でビル開発を手がけるディベロッパー8社が、続々と誕生する最先端のオフィス環境を紹介した。

福岡地所は、天神ビッグバン規制緩和第1号案件「天神ビジネスセンター」(2021年竣工)をはじめ、2024~26年に竣工を予定している住友生命と共同開発の物件、西日本シティ銀行と開発する博多駅前の物件、天神ビジネスセンターの2期計画について説明した。NTT都市開発は「博多イーストテラス」(2022年竣工)の立地と取り組み、積水ハウスはザ・リッツカールトン福岡が入居する「福岡大名ガーデンシティ」(2022年竣工)の特徴を紹介。JR九州は、博多エリアの「コネクトスクエア博多」(2024年竣工予定)と「博多駅空中都市プロジェクト」(2028年竣工予定)について話をした。

リッツカールトン福岡やオフィス、レストランなどが入居する「福岡大名ガーデンシティ」。緑豊かなガーデンが広がっているリッツカールトン福岡やオフィス、レストランなどが入居する「福岡大名ガーデンシティ」。緑豊かなガーデンが広がっている

続いて、ヒューリックが天神エリアの「ヒューリック福岡ビル立替計画」(2024年竣工予定)、西日本鉄道が「福ビル街区建替プロジェクト」(2024年竣工予定)、日本生命は積水ハウスとの共同プロジェクト「天神一丁目北14番街区ビル(仮称)」(2025年竣工予定)について説明。最後に三菱地所が、天神で多くの市民に愛された「イムズ」の建て替え案件となる「天神1-7計画」などを紹介した。

ステージプログラムが終了後、ロビーの特設ブースではディベロッパー担当者と来場者が話し込む姿が多数見られた。福岡市への進出を検討する企業にとって、市の戦略から魅力、現在と未来、具体的な物件情報まで短時間で一気にインプットできる、とても有意義なイベントとなった。

リッツカールトン福岡やオフィス、レストランなどが入居する「福岡大名ガーデンシティ」。緑豊かなガーデンが広がっているディベロッパーが自社の物件について詳しく話をした

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