オンライン内見とは
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、賃貸物件を借りるプロセスに大きな変化が生じている。2020年の4月~5月にかけて緊急事態宣言が発出されたときは、不動産会社への来店数や物件の内見数は大きく減少した。物件の内見数が大幅に減少したことを受け、不動産各社が取り組み始めたのが、非対面型のサービスだ。
非対面サービスの中でも、特に多用されているのは「オンライン内見」だ。オンライン内見とは、営業担当者がWebカメラを用いて現地から物件を紹介し、内見希望者に視聴してもらうサービスだ。360度ビューイングや動画等による「セルフ内見」とは異なり、営業担当者が直接現地から案内をしてくれるため、従来の対面型の内見に近い。
不動産会社も特に特殊な設備を導入しなくてもよく、従来どおりのノウハウでサービスを提供できることから、オンライン内見を導入している会社は多い。Webカメラが内見希望者の「目」となってくれるので、見たいところをじっくりと確認することができ、営業担当者に質問をしながら内見できるため、内見希望者にも安心感がある。
オンライン内見は、内見希望者にとっても便利であることから、アフターコロナにおいても存続していくと見込まれる。
オンライン内見のメリット
オンライン内見は、内見希望者にも以下のようなメリットがある。
・時間の節約ができる
・現地までの交通費を削減できる
・遠方の物件でも内見ができる
1つ目のメリットは、時間の節約ができるという点だ。従来、賃貸物件の内見は、休日を丸一日潰して複数物件を回るケースが一般的であった。一日仕事となるため、休日をすべて内見に充てる必要があり、ストレスを感じる人も多かったと思われる。オンライン内見であれば、例えば平日の空いている時間にも利用できる点がメリットだ。平日の昼休みや定時後に見ておけば、休日を確保することができるため、時間を有意義に使うことができる。
2つ目のメリットは、現地までの交通費を削減できるという点だ。内見は現地まで行けば不動産会社の営業車を使って回ることが多いが、現地までの交通費は自己負担となる。オンライン内見であれば、現地に行く必要はないため、自宅から現地までの交通費を節約することができる。
3つ目のメリットは、遠方の物件でも内見ができるという点だ。オンライン内見は、遠方の物件を探している人にはメリットは大きい。就職や進学で遠方に引越しをする場合、オンライン内見で物件を探せることはかなり便利だ。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、特に都市部の不動産会社の多くはオンライン内見を導入したことから、これから上京する人にとっては物件を探しやすくなったといえる。
オンライン内見で聞くべきこと
オンライン内見で聞くべきことは、主に以下の点が挙げられる。
・部屋の寸法
・コンセントの位置と数
・室内の設備の有無と設置の可否
・収納スペースの広さ
・バルコニーからの眺望・見合い
・柱と梁の位置
1つ目は、部屋の寸法である。1人暮らしでワンルームを借りる場合、最も大きな家具であるベッドを置けるかどうかが重要となってくる。まずはベッドが置けるか、ベッドを置いた後に机等を配置できるスペースがあるかを確認しておきたい。間取り図で置けると思っていても、壁面に柱が飛び出ていてベッドが配置できないケースもある。ベッドの想定位置をしっかり映し出してもらい、寸法を測ってもらうことがポイントだ。
2つ目は、コンセントの位置と数も確認しておきたい。昨今は自宅にパソコンを置くことも多いが、パソコンは本体やディスプレイ、プリンター、その他の周辺機器等で多数の電源を必要とする。タコ足配線を極力避けるためにも、パソコンの想定位置の近くにコンセントがあることが望ましい。
また、夜間に携帯電話を充電する人も多いが、便利な位置に充電に使えそうなコンセントがあるかも確認しておくことがポイントとなる。
3つ目は、室内の設備の有無と設置の可否である。エアコンや温水洗浄便座、浴室乾燥機等の設備があるかを確認する。エアコンや温水洗浄便座がない場合、取り付け可能かどうかを聞くことがポイントとなる。また、浴室乾燥機がない場合には、室内干しができるかどうかも確認しておきたい。室内干し用の補助器具が備え付けられている物件もあるため、補助器具の有無も確認することをおすすめする。
4つ目は、収納スペースの広さである。クローゼットの幅や奥行きを営業担当者に測ってもらい、希望どおりの容量が確保できるか確認することもポイントだ。
5つ目は、バルコニーからの眺望と見合いだ。営業担当者にバルコニーに出てもらい、眺望を映し出してもらう。
自分の部屋から見える眺望だけでなく、他の物件から見られる「見合い」についても確認しておきたい。近接物件から覗かれるようなイメージの物件であれば暮らしにくいので、きちんと周辺を映し出してもらうことがポンとだ。
6つ目は、柱と梁(はり:柱と柱をつなぐ横架材)の位置を確認しておきたい。鉄筋コンクリート造の物件は、部屋の四隅に柱が大きく突き出ていることがある。柱によって室内形状が不整形となり、使いにくくなっている可能性もあるため、チェックしておきたい。
また、梁は天井に飛び出ているため、天井もしっかり映し出してもらうことが必要だ。特に、背の高い書棚を設置したい場合は、梁が邪魔をして置けないケースがあるため、梁下の高さも測ってもらうことが大切だ。
注意点1:事前に間取り図をしっかり見ること
オンライン内見をするにあたっては、事前に間取り図をしっかり見ておくことがポイントとなる。間取り図を見たら、あらかじめベッドや机の配置を想定しておくことが望ましい。
家具配置を想定しておくと生活をイメージすることができ、オンライン内見で質問したいことも明確になってくる。
注意点2:質問事項をまとめておくこと
オンライン内見は視野がWebカメラの範囲しかないため、さまざまな点に気づきにくいという点がデメリットとなる。営業担当者にカメラの向きを変えてもらう必要があるため、あらかじめ質問事項をまとめておくと見逃しを減らすことができる。
知りたいことは事前に紙に書き出し、チェックしながらオンライン内見を進めていくことが適切な対応といえる。
注意点3:オンライン内見では分からないことを知っておくこと
オンライン内見では、以下のような点は分からないということを知っておくべきである。
・騒音や振動、臭気
・日当たりや部屋の暖かさ・寒さ
・キッチンやバスのシャワーの水の勢い
・室内の歩行感
・扉や窓を開閉したときの使用感
・Webカメラに映し出されない細かい傷や汚れ
・携帯電話の電波状況
・最寄り駅から物件までの周辺環境
上記のような点が気になるようであれば、最終的には現地を実際に内見しにいくのがいいだろう。
IT重説の浸透
賃貸物件ではオンライン内見のほか、IT重説(重要事項説明)も浸透している。借主に対する重要事項説明は、法律上行わなければならないものであるが、テレビ会議等のIT技術を活用したオンラインによる重要事項説明の方法が認められている。
IT重説は、賃貸借契約を締結する前に借主の意思決定の判断材料とするために行うものである。賃貸物件に関するIT重説は2017年10月から制度が開始されており、新型コロナウイルスの感染が拡大する前から行われている。運用開始当初はあまり普及しなかったが、新型コロナウイルスによってIT重説も一気に浸透した状況にある。
オンライン内見を実施したか否かにかかわらず、IT重説は行われる可能性はある。オンライン内見時は、物件に関し不安な点や不明な点があれば質問し、有意義に活用するようにしてほしい。
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