まちづくりに関する意見交換会をリポート

「第3回 住宅団地再生連絡会議in高蔵寺ニュータウン」シンポジウムの後、多世代交流拠点施設「グルッポふじとう」に場所を移して意見交換会が行われた。

①「団地再生のためにまず取り組むべきこと」②「地域住民から発信するまちづくり」③「交流拠点施設から発信するまちづくり」④「空き家流通に関する取り組み(DIYなど)」⑤「多様なモビリティを活用したまちづくり」と5つのテーマに参加者が振り分けられた。

筆者は、会場となった「グルッポふじとう」での取り組みから考える③の意見交換会を見学させてもらった。

意見交換会のリポートの前に、「グルッポふじとう」について簡単に紹介したい。こちらは、統廃合により使われなくなった高蔵寺ニュータウン内の旧藤山台東小学校施設をリノベーションし、2018年4月1日に開所。「まなび」「交流」「居場所」をコンセプトとした多世代交流拠点施設で、図書館、児童館、コミュニティカフェ、地域包括支援センター、こどもとまちのサポートセンターなどがある。

今回のテーマでは、この施設のなかで活動するNPO法人まちのエキスパネット・治郎丸慶子代表がアドバイザーとなり、取り組みを紹介してから、参加者である県や市、企業の担当者がそれぞれの課題などの参考となることを目指した。

高蔵寺ニュータウン内にある多世代交流拠点施設「グルッポ ふじとう」高蔵寺ニュータウン内にある多世代交流拠点施設「グルッポ ふじとう」

「グルッポふじとう」での活動経緯

「グルッポ ふじとう」内にある児童館。乳児、幼児、小中高生など年代ごとに4部屋に分けられている「グルッポ ふじとう」内にある児童館。乳児、幼児、小中高生など年代ごとに4部屋に分けられている

治郎丸代表は、NPOの活動自体は20数年続けており、まちづくりの法人となってからは12年活動している。「高蔵寺の宝物をつくる」というテーマを抱いて活動してきたという治郎丸代表。「課題というのは、高齢者の問題、子どもの問題、障がい者の問題、生活困難者の問題というのは日本中一緒だと思いますが、まずは、このまちにあるもの、ないものを整理した上で、提案型でいこうと。ないものは数えたらきりがないですから、とにかく作っていこうというのがテーマでした」と語った。

産業のない高蔵寺ニュータウンのまちでは、NPO活動や市民活動が活発だったという。そんな中で取り組みのひとつとして、年1回の音楽イベントを開催し、10年間で1万人が参加するまでに成長した。ほか、映画祭などの企画も成功したが、「イベントは一瞬で消えてしまうので、なにか日常的にできないかなということを考えつつやってきました。そんなとき、小学校が廃校になるという噂をちらりと聞いて、これは大変だ、大いなる空き家じゃないかということで、行政の方ともいろんなことを考えて、その方向性がたまたまピタッとあって、『グルッポふじとう』という多世代の交流と賑わいの施設になったと思っています」。

この「グルッポ ふじとう」での活動が、「集大成でもある」と語る治郎丸代表。「0歳から100歳まで誰一人はじかれることがないという隠れコンセプトがあります。図書館と児童館は最初に入ることが決まっていて、あとどんなものができたらだれでも来られるような施設になるだろうと考えました。楽しいものはいっぱいなんですけれど、課題を持った人、不安で生活をしている人、そういう人たちもここに来られたらいいなと思いました。そして、子どもから高齢者まで相談する機能を入れたらどうか」ということで、先に紹介した通りのさまざまな機能の集合体となった。

相談窓口になるコミュニティカフェ

そんな中、施設の玄関口となっているのが1階に設置されたコミュニティカフェだ。コーヒーやランチなどを提供する飲食店としてだけでなく、コンシェルジュを配置して訪れた市民の相談窓口になるという。受け止めた相談事、問題は、施設内の地域包括支援センターやこどもとまちのサポートセンターとも連携し、「必ず寄り添ってリターンしてつないでいくという機能を、手をつないでやっております。ですので、例えば家族の問題がきてもここじゃわからないわ、ということにしないということですね」。

また、積極的に意見を求め、聞いた市民の声はすべて日報で上がり、一つ一つ実現していっているとのこと。「住民とみんなで育てていく、成長し続けていく施設であればいいなと思っています」と治郎丸代表。

ほかにも、「Cha no Marche」と題し、例えば何かを販売するなど市民の希望を実現する場を提供したり、コミュニティカフェの一室で、たまり場ルームと呼ばれるところでは、元々理科の実験室だった6人用の机を1日500円で貸し出して出店の場としたりということも。オープンスペースで活動することで交流が生まれる仕組みを作り上げている。

「グルッポ ふじとう」内のコミュニティカフェ・g café Fujito。カフェとして憩いの場であると共に、まちの情報を受発信する場としての役割も担う「グルッポ ふじとう」内のコミュニティカフェ・g café Fujito。カフェとして憩いの場であると共に、まちの情報を受発信する場としての役割も担う

交流拠点施設としての大きな役割

多機能、多世代の交流拠点からのまちづくり取り組みについて意見交換が行われた多機能、多世代の交流拠点からのまちづくり取り組みについて意見交換が行われた

この取り組みを聞いた参加者からは、「コンシェルジュの役割が大きいと思うが、専門の方なのか」という質問があった。治郎丸代表は、「一般公募した普通の方です。おせっかいで、世話好きで、ちょっとおしゃべりな人がいいなと。素敵な笑顔で話しかけられたら、話しやすいですよね。話し相手を身構えさせない人を募集しました」とのことで、30代2名、50代1名の女性が活躍しているそうだ。

また、「地域の困っている声が元々あってこの施設を作ったのか」という質問には、「なぜ小学校が廃校になるかというと、少子高齢化で必要がなくなったから。けれども、廃校となった小学校がどういう場所だったかというと、コミュニティへの最初の単位だと思うんですね。もし小学校がなくなったらどんな弊害が起こるかを考えると、みんなふらっと行く場所もない、話す場所もないと、コミュニティが崩壊するんじゃないかという危機感があった」と語られた。そして、図書館、児童館に加えて、多彩な人々が集うことができる世代交流の施設になった。

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シンポジウムの時間延長で限られた時間となったが、交流拠点を発信源としたまちづくりに期待がもてた。団地だけでなく、どのまちでも取り入れることができるのではないだろうか。今後の展開もぜひ見ていきたい。

取材協力:春日井市 まちづくり推進部ニュータウン創生課

2019年 02月10日 11時00分