高齢化などの問題が進行する住宅団地の再生を図るシンポジウムが開催

「第3回 住宅団地再生連絡会議」が愛知県の高蔵寺ニュータウンで開催された「第3回 住宅団地再生連絡会議」が愛知県の高蔵寺ニュータウンで開催された

郊外住宅団地の再生を図るため、地方公共団体、民間事業者などの関係者が調査・意見交換などを行う「住宅団地再生」連絡会議が2017年に設立された。

その第3回の連絡会議が、愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンで2018年11月5日に行われた。「入居開始50年を迎え、更なる魅力向上を目指すまちづくり」を副題に、初の地方での開催。その後に行われた意見交換会も合わせてリポートする。

まず国土交通省からの情報提供があった。住宅団地は全都道府県に約3,000が所在するという。高齢化の進展により、交通手段の維持が困難になるなど、居住者の生活環境が悪化。若い世代の流入が望めず、空地や空き家が増加する可能性があることから、再生のための支援策が講じられている。

そのひとつが、平成30年度創設の「住宅市街地総合整備事業 住宅団地ストック活用型」。社会資本総合整備交付金のなかで、主に地方公共団体を通じて事業を支援するというもの。ソフト事業では整備計画策定や協議会活動への支援、ハード事業では高齢者支援施設や子育て支援施設などの整備、バリアフリー化などを行う地区公共施設などの整備に活用される。

また、「スマートウェルネス住宅等推進モデル事業」では、住宅団地再生部門が平成30年度からスタート。民間事業者を中心とした住宅団地再生のための先導的な提案や取り組みに対して、国が支援をする。神奈川県相模原市の相武台団地など、平成30年度は4つの事業が採択され、モデル事業として推進していくとのことだ。

高蔵寺リ・ニュータウン計画とは?

春日井市市政アドバイザーを務める中部大学・服部敦教授が「高蔵寺リ・ニュータウン計画」をテーマに基調講演春日井市市政アドバイザーを務める中部大学・服部敦教授が「高蔵寺リ・ニュータウン計画」をテーマに基調講演

今回の会場となった高蔵寺ニュータウンは、入居開始から50年を迎えた。こちらも他の住宅団地と同様に問題を抱えている。主な課題として5つが挙げられた。
①世代間の均整を目指した若い世代の居住誘導
②計画的に整備された道路などのインフラ、多様で豊富な住宅ストックなどの既存資産の活用
③中古住宅の流通促進、空き家のリノベーション
④高齢化に伴い、坂道の移動困難性の克服
⑤オールドニュータウンと呼ばれ、元気のないまちと思われがちなイメージの再生

その課題解決に向け、春日井市では2016年3月に「高蔵寺リ・ニュータウン計画」を作成。春日井市市政アドバイザーとしてその計画に携わっている、中部大学の服部敦教授の基調講演では、高蔵寺ニュータウンが持つ財産を生かしたまちづくりをするにはどのように行ったらいいかという視点の話があった。

高蔵寺ニュータウンは、日本住宅公団(現在のUR都市機構)が手掛けた最初のニュータウン開発事業だ。ワンセンター方式が採用されており、中央付近にセンター地区と呼ぶ商業地区が集積されている。また、計画的に整備された道路には、歩行者専用道路や緑道がある。

「当初のマスタープランがそのまま実現されてはいませんが、その意図を汲んだ非常に豊かな空間です」と服部教授。「建物をリノベーションしたりするときに、何が大事かというと設計図です。今、我々のような住宅団地を扱っている人たちに必要なのはイノベーションですが、高蔵寺ニュータウンが素晴らしいのは、まちの設計図が残っている事です。それを理解してどう生かすかを考えられるのは住宅団地ならではないかと思います」。

リ・ニュータウン計画では、基本理念として、成熟した資産を生かして、新たな価値を生み続けるニュータウンにしていくことをうたっているという。

そんな中で、さまざまな事業が進められており、2018年4月には、旧小学校施設をリノベーションした多世代交流拠点「グルッポふじとう(高蔵寺まなびと交流センター)」がオープンした。また、余裕空間のある幹線道路では自動運転等実証実験も始まっている。

最後に、服部教授は「計画されない資産=人」も非常に重要だと語った。地域の人々のつながりも、まちづくりには大切な財産の一つ。住民と自治体やまちづくりの事業者が協力し、発展していくことを期待するとまとめた。

愛知県「菱野団地」、大阪「泉北ニュータウン」などの取り組み事例

その後は、第2部として3つの都市と2つの団体によるまちづくりの取り組みの事例発表が行われた。順に概要をご紹介する。

まず、愛知県瀬戸市は、新たなコミュニティ交通「菱野団地住民バス」の取り組みについて。昭和41~53年度にかけて開発された菱野団地も例にもれず、人口減少と高齢化の急速な進行が問題となっている。高齢化に関しては、市全体の高齢化率を大きく上回っているという。そんな中で、地域主導型の「菱野団地住民バス」社会実験を2017年7~12月に実施した。バスの運転手には、“菱野団地の5年、10年先を心配している方”を要件に組み込んで募集し、15名が有償(500円/時間)ボランティアとして参加。すると、運行日数123日間で、のべ4,966人が利用。買い物や通院など日常生活を支える移動手段であると共に、車内でおしゃべりがはずむなど、地域のコミュニティの場にもなったそうだ。課題として収益を上げる仕組みも挙げられたが、運行再開を求める声も多く届き、2018年8月から運転手、事務員をあらためて公募して、運行がスタートした。菱野団地再生に向け、日ごろ感じていることなどを語る住民ワークショップも開催されており、住民参加型の取り組みが進められている。

次に、大阪府堺市は、府内最大のニュータウンである泉北ニュータウンのまちびらき50周年事業について発表した。大阪府やUR都市機構などが参加する実行委員会としての取り組みだけでなく、市民自らが企画運営する事業を行ったのが大きな特徴だ。市民企画事業では11人の企画が選考され、期間中通じて26の取り組みが行われた。そのうちのひとつは当サイトでも取材しているので、ぜひ参照していただきたい(泉北ニュータウンで始まった住民主導のプロジェクト。「泉北レモンの街ストーリー」の取り組みを聞いてきた)。そんな“51年目以降も継続して実施できる”ことを目指した市民プロジェクトと共に、市民、企業、大学、行政がともに主体となったまちづくりを進めていきたいと語られた。

愛知県春日井市は、「高蔵寺ニュータウンにおける先導的モビリティ(移動性)を活用したまちづくり」を発表。坂道の移動困難性の克服や、高齢者の外出機会の減少など、課題のひとつとなっている交通に関する取り組みだ。平成29年度は、トヨタ自動車との連携で電動車いす形のモビリティを使った「歩行支援モビリティサービス実証実験」のほか、警察庁新ガイドライン遠隔型自動運転実証実験、名古屋大学COIとの連携によるゆっくり自動運転(R)実証実験などが実施された。そして、平成30年度は、春日井市の「高蔵寺ニューモビリティタウン構想事業」が内閣府の「近未来技術等社会実装事業」の一つに選定。先導的モビリティを活用して、高齢者が気軽に外出できる、そして子育て世代が車に頼らず暮らせるまちづくりを、先進市として目指していきたいという。

交通手段や市民プロジェクトで団地の活性化を図る取り組みが発表された交通手段や市民プロジェクトで団地の活性化を図る取り組みが発表された

住民、地域主体のまちづくり事例

高蔵寺ニュータウンの押沢台北町内で行われている取り組みと、名古屋市の錦二丁目・長者町地区の取り組みの発表高蔵寺ニュータウンの押沢台北町内で行われている取り組みと、名古屋市の錦二丁目・長者町地区の取り組みの発表

続いて、住民によるまちづくり事例として、高蔵寺ニュータウンを構成する7つの地区のうち、押沢台の押沢台北町内会のエリアで実施している「押沢台北ブラブラまつり」の発表があった。高蔵寺ニュータウンでは最も遅くに開発された地域で、現在は1,720ほどの世帯数。このような地域で2018年に7回目を迎えたこのイベントは、自宅の駐車場を利用したガレージセールや、庭や玄関先を利用した模擬店、コレクション展示などを住民が行う。町内外から多くの人が訪れて、毎年賑わいを見せている。これにより、住民のつながりが広がったほか、このイベント時だけでなく家先に花などを飾ったりベンチを置いたりと、地域に変化が生まれた。また、1年に1回のイベントでは寂しいと、毎月どこかの民家でカフェが開かれるようにもなったという。歴史や資源などがなくても、まちのにぎわいにつながる好例だった。

最後は、名古屋市中区にある錦二丁目・長者町地区のまちづくりについて。地域主体の構想づくりとその実践が紹介された。この地域は、戦後に日本三大繊維問屋街として栄えたが、繊維産業が衰退すると共に空きビルも増加し、まちの衰退も見られた。そんな中、繊維産業の組合によるイベント実施や、まちの有志たちによる空きビルの再生が行われた。そこからやがて、エリア全体で考える組織ができ、まちづくりの拠点として「まちの会所」を作ったのをはじめ、“都市の木質化”を考えて木製のベンチを設置したり、そのメンテナンスやゴミ拾い活動をしたりといったことも行っているという。そうやって活動してきたまちづくりを持続的に展開するため、事業化。2018年3月にエリアマネジメント株式会社を設立し、今後の発展を担う。

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各市のニュータウンやエリアでのまちづくりの取り組みは、それぞれの特色を生かしていてとても興味深いものだった。今後もそれらが発展していくことを大いに期待したい。

シンポジウムの後は、会場を移して意見交換会が行われた。そちらはあらためて別記事でリポートする。


取材協力:春日井市 まちづくり推進部ニュータウン創生課

2019年 02月04日 11時00分