斬新なデザインのカプセルホテルが、観光客で賑わう浅草にオープン
2018年9月21日にオープンした「ナインアワーズ浅草」。外観に巻き付くように設置された外階段が特徴的な、観光客で賑わう浅草に登場した斬新なデザインのカプセルホテルだ。同ビル1階には、ノルウェーの人気カフェ「FUGLEN」の日本2号店が同時オープン(Photo: Nacasa & Partners)訪日外国人観光客を指す「インバウンド」という言葉をよく聞くようになった昨今。まちや電車内で見かける外国人観光客も明らかに増えたように感じる。
日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数データによると、2012年が835万人(1,000人以下切り捨て。以下同)、2013年が1,036万人、2014年が1,341万人、2015年が1,973万人、2016年が2,403万人、2017年が2,869万人、2018年は1月から6月までの半年間で1,589万人と、近年激増している。ちなみに、2005年は672万人、2000年は475万人と、訪日外客数の急増ぶりがわかる。
その理由として考えられるのが、日本で開催される国際的なイベントに興味を持った人の来日や、円安が進み日本に旅行しやすくなったこと、近年の和食ブーム、また経済成長が著しい中国人旅行客の増加などだろうか。
訪日観光客が増え、課題となっているのが宿泊施設の不足。これは外国からの旅行客だけでなく、国内の旅行客やビジネスでの利用でも同様だ。仕事仲間も「出張の際、なかなかホテルが取れなくて困っている。価格も高くなった」と嘆いていた。
日本の宿泊施設では旅館が減少する一方、ホテルは施設数、室数ともに増加。その中でもリーズナブルに宿泊できるカプセルホテルのニーズが高まっている(カプセルホテルが含まれる「簡易宿所」の施設数は、2011年度24,506件、2012年度25,071件、2013年度25,560件、2014年度26,349件。※厚生労働省「生活衛生関係営業施設数の年次推移(実数)」データより)。
そこで、近年カプセルホテルの人気が高まっている理由を探しに、「都市生活にジャストフィットする宿泊の機能と、世界に類を見ない新しい滞在価値を提供」することをコンセプトに、洗練されたデザインで注目を集めているカプセルホテル「9h(ナインアワーズ)」を取材した。
宿泊とシャワー、身支度に徹底的にフォーカスすることで、人気のカプセルホテルに
ナインアワーズ浅草について説明する、建築家の平田晃久氏。「ナインアワーズでは、カプセルのフロントパネルにスチールのプレートを使ってシャープなイメージにすることが多いのですが、ナインアワーズ浅草では木目のある木を使いました。サインの照明も色温度を低めにして、まわりの感じに合わせています。浅草のまち、FUGLENとの調和を考えながら、ナインアワーズのデザインチームとディスカッションを重ねて設計を進めました」ナインアワーズは、宿泊とシャワー、身支度に徹底的にフォーカスしたカプセルホテル。1時間のシャワー+7時間の睡眠+1時間の身支度=9hがコンセプトだ。このもっともシンプルな宿泊の概念を元につくられた都市型の宿泊施設で、全国に10のカプセルホテルを運営。また、部屋という空間概念を捨てて身軽に使いこなすことで街とダイレクトにつながり、都心ならではの宿泊・トランジットスタイルを提案している。
2018年9月に開業したナインアワーズ浅草の建築・設計は、竹橋(2018年3月開業)、赤坂(2018年5月開業)に引き続き、建築家の平田晃久氏が担当。カプセルユニットが岩山のように積み上げられた外観には、形状、葺き方、色味などが異なる14種類の屋根が取り付けられ、時代や商いによってそれぞれの装いをもつ商店がカプセルホテルにからみ付いたようなイメージを具現化した。
「ナインアワーズ浅草は敷地の形が細長く、カプセルを入れるのが難しい敷地でした。カプセルを規則正しく設置しようとしてもなかなかできない。逆にカプセルを並べた時に隙間ができたので、発想を転換。カプセルで岩山のようなものをつくり、浅草寺の西参道や通りと立体的にからみ付いているような、岩山を登っていけるような道をつくる案はどうかと考えました」と平田氏。
色味に関しては、ナインアワーズの色に赤などの浅草のまちの色、1階に入るノルウェーの人気カフェFUGLENの自然素材を使った壁紙などの色を融合。9階はナインアワーズカラーが強いものの、下りていくにつれてFUGLENカラーが強くなるように意識したという。
宿泊以外に、仮眠やシャワーだけでも利用可能
ナインアワーズ浅草の利用者は、浅草のまちを一望できる9階のレセプションでチェックイン後、館内のエレベーターのほか、外階段で各階のフリースペースに移動する。階段を下りていく際には浅草寺や花やしきなど、浅草のまち並みが見渡せる。
客室数は183室(男性80室、女性103室)。8階にはパソコンの利用が可能なデスク、7階と6階にはくつろぐためのチェアやハイカウンターのある飲食が可能なラウンジ、5階にはランニングマシーンを設置したジム等、浅草の街を眼下に眺めながら利用することができる。
利用料金は、宿泊が4,900円~(13時チェックイン、10時チェックアウト)。さらに、仮眠(最初の1時間が1,000円、以下1時間ごとに500円加算。利用可能時間は13時~21時まで)、シャワー(1時間以内の利用で700円。24時間利用可能)などの利用も可能で、宿泊だけでなく24時間自分の都合に合わせて使えるのが特徴だ。
日本人と外国人の宿泊者比率は約50:50。男女比は約55:45
ナインアワーズの評判、また宿泊者の属性などについて担当者にうかがった。
「当ホテルの評価としては、開放感とスタイリッシュな空間や、価格に対して空間の快適性と清潔感に満足してくださるお客様が多いように感じています。隣のカプセルの音の問題やスペースが狭いなど、通常のホテルのシングルルームと比べるとプライベートスペースはありませんが、まちとダイレクトに繋がる旅のスタイルを求めている方にとっては、コストパフォーマンスの高い旅の道具として、利用価値を感じていただけていると認識しています。ナインアワーズ全体の日本人と外国人の宿泊者比率は、およそ50:50。男女比は55:45ほどです」
都市のトランジットサービスとして、宿泊の為の最低限の要素である「睡眠」「シャワー」の機能性の高さを追求するナインアワーズ。仮眠やシャワーだけでも利用できるため、旅行だけでなく、日々の仕事の休憩にも活用できそうだ。「ゆったり過ごす」という利用方法ではなく、観光やビジネスなどホテルで過ごす時間以外を充実させたいユーザーには、ナインアワーズ浅草は十分すぎる魅力を持っているように感じた。カプセルホテルを宿泊の選択肢に入れていなかった人の需要も掘り起こすような、ナインアワーズをはじめとする新しい時代のカプセルホテルが、今後さらに増えていくのではないだろうか。
■9h(ナインアワーズ)ホームページ
https://ninehours.co.jp/
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