横浜・石川町駅から徒歩約10分、築55年のアパートを改装した「ブラフテラス」

ブラフテラス外観ブラフテラス外観

シェアハウスが日本でも一般的に知られるようになった昨今。住居スペースをシェアするという意味にプラスアルファの価値を加えた、様々なコンセプトのシェアハウスが続々と登場している。2016年、横浜市南区にオープンした「BLUFF TERRACE (※以下「ブラフテラス」)」もその一つだ。

JR石川町駅から中華街と逆方面の元町口を出て、徒歩約10分。高台の住宅街に、築55年の空きアパートを改装した「ブラフテラス」はある。「ブラフテラス」はシェアハウスとしての機能に加え、スモールビジネスを始めようとする人達にチャレンジの場としてシェアカフェを提供。地域の空き家活用の担い手となる人達を増やしていくことを狙っている。

手がけるのは地域コミュニティの課題を解決する事業を行う、コトラボ合同会社。横浜市中区や寿地区の簡易宿泊施設を再活用した「ヨコハマ・ホステル・ヴィレッジ」などの地域活性化プロジェクトを多数手がけており、そこでの知見を活かし「ブラフテラス」は誕生した。

スモールビジネスを支援するシェアカフェを併設

「ブラフテラス」の1階部分は、曜日ごとに店長が入れ替わる日替わりのシェアカフェ。インターネットでカフェ出店者を募集し、現在は挽きたての美味しいコーヒーや天然酵母パンが味わえるカフェ、クレープやガレットを提供するカフェなど、多種多様なカフェ店長が日替わりでお店を切り盛りする。

「これまで飲食店をやりたいけれども初期費用や維持費用がネックで、はじめの一歩が踏み出せないという人に多く出会いました。はじめの一歩を後押しできる環境を作れば、空き家活用もスムーズに進むのではないかと考えたのがきっかけです。また、この近辺には飲食店がなく、元々近くに住んでいたときから、この辺にカフェのようなスペースがあればいいのにと思っていたのも理由の一つでした」そう語るのはコトラボ合同会社代表の岡部友彦さん。「ブラフテラス」を運営するコトラボ合同会社がカフェの設えを作り、飲食営業の許可を取得。出店者は月17,000〜24,000円払うだけで手軽にお店を出すことができ、スモールビジネスを始めやすい環境を整えた。ちなみに夕方5時以降は住民専用のリビング、ダイニングに様変わりする。

元々カフェスペースは、6畳の住居スペースでキッチンもなかった。岡部さん自身が壁や板を張り替え、他の部屋で使用されていた押入れの棚板で扉を作り、他の部屋の照明を直してカフェスペースで使用。使われていなかった勉強机や製図台をアレンジし、カフェカウンターやテーブルを作ったというから驚きだ。そのお陰か築55年ながら古びた雰囲気はなく、古民家ならではの味を残したおしゃれな空間へとリノベーションされている。

現在では近隣に昔から住む人たちや、遠方からこのシェアカフェを目指して訪れる人など、多種多様な人々が集まる場に。カフェ店長主催のイベントだけでなく、住人主催のイベントが開催されることもあり、これまでヨガ教室、占い、ヒーリングなどのイベントも開催された。

「ブラフテラス」シェアカフェ部分のリノベーション前後の写真<br>
画像上左:リノベーション後のシェアカフェ入口外観<br>
画像上右:リノベーション後のシェアカフェテラス部分<br>
画像下左:リノベーション後のシェアカフェ内観<br>
画像下右:シェアカフェ部分はリノベーション前、6畳・キッチンなしの和室だった<br>「ブラフテラス」シェアカフェ部分のリノベーション前後の写真
画像上左:リノベーション後のシェアカフェ入口外観
画像上右:リノベーション後のシェアカフェテラス部分
画像下左:リノベーション後のシェアカフェ内観
画像下右:シェアカフェ部分はリノベーション前、6畳・キッチンなしの和室だった

住居部分はアーティストやクリエイターがリノベーション

1階奥に男性用住居1部屋、シャワーブース、事務所があり、2階部分に女性専用住居4部屋を設置。アパートは高台に位置していることもあり、2階の部屋からはみなとみらいエリアをはじめとした横浜中心部や、一部海を望むこともできる見晴らしの良さだ。勝手口をカフェ用の入口に、玄関を住人用の入口にし、それぞれの動線もしっかり確保されている。

改装前は1階4部屋、2階4部屋のアパートで、風呂なし・共同便所という今の不動産市場だとなかなか借り手を見つけるのが難しい物件。しかし横浜中心地へのアクセスは良く、シャワーブースを置き、トイレも綺麗に改修するなど設備を充実させれば、活用できる物件でもある。大家さんとしてもずっと空き部屋にしておくより、安くても家賃収入が定期的に入る方が良いと岡部さんは考えたそう。

住居部分に関しては、部屋ごとに異なるアーティストやクリエイターにデザインを依頼。「ドゥイのこども造形教室」を運営しているクリエイター・ドゥイさんによる壁面に水彩絵の具を思わせる温かい赤色のコラージュが施されたお部屋や、鉄を使った作品を作るクリエイターFeさんによる、多彩なフローリングを組み合わせて作られたお洒落な床や、釘を活用した取っ手がつけられている部屋。横浜で建築設計事務所を営むアイボリィアーキテクチュアさんによる、壁一面に有孔版が使用された収納に便利な部屋など、個性に富んだデザインが魅力だ。

「工務店に頼むと費用がかさみ、オリジナリティもなくなってしまう可能性があります。部屋はそれぞれ違う方が面白い。クリエイターたちの活躍の場にもして欲しいし、これを実績にして欲しい」寿地区で行なった事業のときから一貫している岡部さんの考えだ。

現在住居部分は満室。横浜中心地から近く月4万円程度と安く借りることができるため、人気のようだ。シェアハウスの中にシェアカフェがあるということを面白がってくれる人も多く、住民同士やカフェ利用者などとの交流も盛んだと言う。

「ブラフテラス」シェアハウス部分のリノベーション前後の写真<br>
画像上左:アイボリィアーキテクチュアさんが設計、施工したROOM203<br>
画像上右:リノベーション前のお部屋<br>
画像下左:クリエイター・ドゥイさんがデザインしたROOM201<br>
画像下右:畳の小上がりとお庭がついたROOM103<br>「ブラフテラス」シェアハウス部分のリノベーション前後の写真
画像上左:アイボリィアーキテクチュアさんが設計、施工したROOM203
画像上右:リノベーション前のお部屋
画像下左:クリエイター・ドゥイさんがデザインしたROOM201
画像下右:畳の小上がりとお庭がついたROOM103

モノづくりではなくコトづくり。機能よりも人を軸に人が集まってくるまちへ

コトラボ合同会社代表の岡部友彦さんコトラボ合同会社代表の岡部友彦さん

岡部さんがこういった地域課題解決事業に取り組み始めたのは、建築系の大学院を出た2004年頃から。友人たちと緑化のプロジェクトを実施していた頃、「面白い緑化をやっている」と紹介され、個性的で多種多様な面白い人々が集まる寿町に惹かれたのが始まりだ。大学時代に都市論を専攻し、都市を一つの生き物と考えて都市の活動を研究していたと言う岡部さんは、生き物として寿町はどのような生態系をしているのだろう?と気になりこのまちに辿りついたと言う。

「最近はどのまちも均一化され個性がなくなってきています。一方で寿町は、都心にも関わらず挨拶が行き交い、顔の見える下町のような温かい雰囲気のまちでした。自分は最初、建築家になりたいと思っていましたが、建築家は建物を作って終わりになってしまうことが多い。しかしまちというのは何かを作って終わりではなく、継続していくもの。むしろモノを作るよりコトを作っていくことの方に興味がわき、そんな想いからコトラボを立ち上げました」

「ブラフテラス」を立ち上げる際も、ただリノベーションを行うのではなく、住民にヒアリングを行い、しっかりとリサーチを実施。この地域ではどんなものが求められているのか、どのような暮らしを人々が求めているのかという、ライフスタイルの部分を深掘りした。

「まちづくりってハードをどうこうするとかではなく、人間のライフスタイルの上に成り立つもの。人の動きの総体的なものがまちづくり、コトづくりになっていると考えると、人々の暮らしやライフスタイルを考えるのが大切だと思います。今後さらに人との関係性や、自分の生活の仕方が重要視されていく時代になるはずです。コトラボではその時代や環境に合わせ、どう緩やかにライフスタイルをデザインできるか考えていきたいと思っています」

2018年 08月29日 11時05分