団地の緑が豊かな訳

前身の日本住宅公団の発足から約半世紀……日本の集合住宅供給を初期に牽引してきたのは、間違いなくUR都市機構(以下、UR)である。戦後の住宅不足、高度経済成長期の経済を支える働き手を都市に集めるため、日本住宅公団時代からこれまでに約151万戸の住宅供給をしてきている。

開発された団地は、都心の土地の効率を高めるための建ぺい率容積率を最大まで利用した民間の集合住宅と違い、低建ぺい率・低容積率で緑豊かな敷地を擁するものが多く、URの団地の一つの特徴となっている。住民のための遊歩道や遊具を備えた公園、四季を感じさせるかだん植栽などもあり、団地の供給初期、国内に集合住宅のノウハウがまだない中、環境共生を含めた居住性を追求してきた証拠ともいえるだろう。

代表的なのは、千里ニュータウンにある千里青山台団地などで、その豊かな緑のある住環境がまちの景観のひとつとなっている。

団地の緑あふれる環境を守る役割の職種がURにはある。それが、グリーンマネージャーだ。今回は、住宅環境のひとつ"団地の植栽"を支えるグリーンマネージャーに話を聞いてきた。

美しい景観に込められた緑豊かな住環境への想い

今回お話を伺ったのは、URコミュニティの岡田さんと遠藤さん。

そもそも「緑豊かな団地」はどのように生まれたのだろうか。
「特に高度成長期、都心で働く人々の住宅を大量に確保するため、団地の郊外建設が相次ぎました。その際、既存林やその地形や風土から住環境を考えるといった取り組みを行っていたようです。子育て世代が多く住んだ当時では、子ども達が安全に遊べる広場や芝生、住民が行き交う住居棟をつなぐ役割を持つ遊歩道などの設計の際、それぞれの役割で四季を感じる自然との共生を考え、多くの植栽が植えられました。今では、その自然が育っていき、地域の方々のオアシスとなっている団地もあります」(岡田さん)。

「多くのURの住宅では『緑化』に力をいれていますが、風の通り道の確保や木陰のつくりだす涼しさや土が熱を放出したりすることでヒートアイランド現象の緩和(1~2℃変わります)という面や、緑があることでの生物多様性が生まれたりと自然環境に効果があり、それが住環境の改善にも役立っている面があると思います」(遠藤さん)。

URが団地の供給をはじめて約半世紀、今では立派に育って団地のシンボルツリーとなっている樹木もあるようだ。
「東住吉のサンヴァリエ針中野の樫の木、城東区の森之宮第二団地のジャカランダ、枚方市の香里ヶ丘けやき東街のセンペルセコイヤなど地域の方々に愛されている樹木もあります。ジャカランダの花は和名が"紫雲木"というように、薄紫色の美しい花をつけます。それぞれが団地の特長として語られると嬉しいですね」(岡田さん)。

6月ごろに花の見頃を迎える、ジャカランダ(森之宮第二団地)6月ごろに花の見頃を迎える、ジャカランダ(森之宮第二団地)

グリーンマネージャーの仕事は、セキュリティや安全面にも配慮

団地に植えられている緑はどういった設計で植えられているのだろうか。
「UR団地は、とても木の種類や植物の種類が多いんです。約100種類くらいが植えられていますかね。樹木も低木・中木・高木と場所や植栽設計によって、意図して植えられているんです。そういった植栽が都会でも四季を感じられるような環境の手伝いとなっていて、例えば、春なら桜や椿、夏はつつじや藤、さるすべり、冬にはさざんかやロウバイ、夏には花を冬には赤い実が美しい南天などが植えられています」(遠藤さん)。

そんな緑を管理するグリーンマネージャーの仕事とは。
「グリーンマネージャーの仕事は団地の造園の管理です。西日本でいうと500余りの団地を7つの住まいセンターで管理をしているのですが、各センターに1~2名配属されています。管理の内容は、年4回の検査や剪定などの発注で、それぞれの団地の計画から検査実行までに責任をもちます。現在は9名で西日本のUR団地の植栽管理をするので、意外と忙しいです(笑)。剪定の目的は景観や虫などがつかないように…という目的もありますが、暗がりをつくらないことや、目線を遮らないような防犯の面もあるんです」(岡田さん)。

写真上)剪定前の団地の植込み。生い茂っている樹木も2階からの目線が届かず入口も暗い</br>写真下)剪定後の植込み。すっきりと整えられて明るい印象となっている写真上)剪定前の団地の植込み。生い茂っている樹木も2階からの目線が届かず入口も暗い
写真下)剪定後の植込み。すっきりと整えられて明るい印象となっている

緑を通じた住民とのコミュニティづくり

1人で複数の大型団地の植栽を管理することも多い、なかなかに忙しいグリーンマネージャーの仕事。しかし、せっかくの緑をもっと住民に楽しんでもらおうという取り組みもしているようだ。
「各団地で自治会を中心に樹木の自然観察会や、各種イベントなども行っています」。

2018年7月には、兵庫県西宮市の浜甲子園団地自治会主催の「はまこう夏まつり」で、資源の有効利用と廃棄物の削減を目的に「竹細工体験」のイベントが行われ、グリーンマネージャーも補助として参加した。ちょうど夏休み中ということもあり、子どもたちも多く参加、団地内で伐採した竹に絵や飾りをつけた工作を行ったようだ。

どんな環境に住みたいか……人それぞれの理想はあると思うが、広さや間取り・アクセスだけでなく、住まいのスペックとして緑の近くに住むことの豊かさについても考えてみてはどうだろうか。

自然観察会の様子自然観察会の様子

2018年 12月24日 11時00分