住宅ローンの借り換えは約3兆円の市場規模

住宅ローンを借りてマイホームを取得した後、30年、35年などの長期にわたって、ただ漫然と返済し続ければよいというものではない。自分の家計状態や金利動向を適宜見直して「住宅ローンのメンテナンス」をすることが大切だ。

国土交通省がまとめた「平成25年度民間住宅ローンの実態に関する調査」(調査対象:2012年度・平成24年度の融資実施分)の結果によれば、住宅ローンの借り換え実績(単年度集計)は15万3,700件で、金額は2兆9,512億円にのぼる。ほぼ3兆円の市場規模であり、これは住宅ローンの新規貸出額(17兆1,532億円)の6分の1を超えているのだ。かなり多くの人が借り換えに動いていることが分かるだろう。

国土交通省の調査に対して回答をした金融機関数そのものが年々増えている(2004年度は250、2012年度は612など)点は考慮しなければならないが、2004年度と2012年度を単純に比較すれば、件数は約3.6倍、金額は約3.5倍である。

国土交通省「民間住宅ローンの実態に関する調査」をもとに作成国土交通省「民間住宅ローンの実態に関する調査」をもとに作成

借り換え後は「固定期間選択型」が約半数

実際に借り換えをした人は、どのような金利タイプを選んでいるのだろうか。住宅金融支援機構がまとめた「2013年度民間住宅ローン借換の実態調査」によれば、借り換え後の金利タイプは約半数(49.8%)が「固定期間選択型」であり、32.2%が「変動型」、17.9%が「全期間固定型」となっている。ここ数年では「固定期間選択型」が増えるとともに、「変動型」は減少傾向にあるようだ。調査対象の2013年度には一時期、金利上昇が懸念される状況が生まれたことも影響しているだろう。

また、借り換え前が「全期間固定型」だった人のうち33.5%は同じく「全期間固定型」に、借り換え前が「変動型」だった人のうち54.0%は同じく「変動型」に借り換えている。同様に「固定期間選択型(5年)」から「固定期間選択型(5年)」に、「固定期間選択型(10年)」から「固定期間選択型(10年)」に借り換えている人も、それぞれの属性の中で最多区分となっていて興味深い。

借り換えまでの経過期間をみると「5年超10年以内」の人が42.0%を占め、次いで「10年超15年以内」の人が24.5%、「3年超5年以内」の人が13.1%などとなっている。すでに低金利水準で借りていると思われる「3年以内」の人も8.3%であり、比較的早い段階から積極的に住宅ローンの見直しをしている様子がうかがわれる。

住宅金融支援機構「2013年度民間住宅ローン借換の実態調査」をもとに作成住宅金融支援機構「2013年度民間住宅ローン借換の実態調査」をもとに作成

借り換えの目安をどう考えるか

住宅ローンの金利は少しでも安いほうがよいだろう。たとえば、3,000万円を35年返済で借りたとき、適用金利が0.5%違うだけで総返済額は約300万円の差になる。ところが、少しでも安い金利に借り換えれば、それでトクになるというわけではないのが難しいところだ。

以前には借り換えの目安として、借り換え前後の金利差が1.0%以上、返済の残り期間が10年以上、ローン残高が1,000万円以上、の3つが挙げられることも多かった。これは住宅ローンを借り換えるときに、それなりの費用がかかるためだ。借り換えの際に、従前の住宅ローンに対しては一括繰上返済手数料や抵当権抹消費用などがかかり、新たな住宅ローンに対しては融資手数料や事務手数料、保証料、団体信用生命保険料、印紙税、抵当権設定費用などがかかる。そのため、これらの費用を上回る効果がなければ借り換えをするメリットがないことになる。

しかし、現在はさまざまなタイプの商品が登場しているほか、借り換えに伴う諸費用が少なくて済む金融機関も増えつつあるため、一概には判断できない。いまなら前後の金利差が0.5%程度でもトクになるケースは多いだろう。インターネットを使ってさまざまなシミュレーションができる環境も整えられ、新規に借りるときのように時間の制約に縛られることもないので、じっくりと検討することも可能だ。諸費用分をしっかりとチェックしたうえで、借り換えでどうなるのかを判断したい。

また、借り換えを考えるときにはその目的を明確にしておくことも大切だ。総返済額を減らしたいのか、毎月の返済額を減らしたいのか、あるいは金利上昇リスクを軽減したのかによっても、借り換えのメリットや選択肢は異なる。金融機関によって年収や年齢、借り換え前の住宅ローンの残存期間などの要件は違うが、「借り換え専用」の住宅ローンで金利優遇幅を大きくしている場合もあるほか、従前の住宅ローンの残存期間よりも長く借りて毎月の支払い額を減らすことが可能な場合もある。一定の要件を満たせば、住宅金融支援機構の【フラット35】へ借り換えることも可能だ。さらに返済の残り期間が少ないなら、超低金利状態の変動金利タイプに借り換えてもリスクは小さいだろう。

住宅ローンの返済をしながら数百万円の貯蓄をすることはなかなか難しいだろうが、借り換えによってトータルで数百万円を浮かすことができる場合もある。あくまでも個人の条件次第だが、すでに住宅ローンを借りている人は定期的なチェックを心がけたい。がんばって繰上返済をして手元の資金を無くすよりも、借り換えのほうがメリットは大きい場合も多いのだ。

借り換えをした場合に住宅ローン控除はどうなるのか、そもそも借り換えはできるのか

住宅ローンを借りた人の大半は、入居から10年間の住宅ローン控除を受けているだろう。これを借り換えたときにどうなるのか気になるかもしれないが、「新しい住宅ローン等が当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること」および「新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど住宅借入金等特別控除の対象となる要件に当てはまること」の2点を満たせば、住宅ローン控除は引き続き適用される。

また、これまで住宅ローン控除の要件を満たさなかった住宅借入金を返済する目的で新たな住宅ローンに借り換えたとき、新たなローンが要件を満たせば控除の適用が受けられる。ただし、適用期間(入居から10年)の延長はなく、入居からすでに5年経過していれば、控除を適用できるのは残りの5年分だ。

一方で、住宅ローンの借り換えを検討するときには一定の注意も必要である。一般的に借り換えの審査条件は、新規に借りるときよりも厳しくなりがちだ。住宅を購入してから借り換えまでの間に転職などをしていると審査に通らないこともある。年収や勤務先などの条件が悪くなっている場合も同様だ。また、新規借入れのときに妻と収入合算をし、現在は妻が仕事を辞めているようなときも難しいだろう。

これから数年後には景気が回復すれば金利上昇、経済政策が失敗に終わっても金利上昇という局面が訪れる可能性は高い。金利が上昇し始めてから、慌てて借り換えを検討してもうまくいかないことがある。将来的に子どもの進学や妻の離職などで家計が苦しくなる可能性のある人は、いまのうちに借り換えを検討することも考えてみるべきだ。

借り換えではなく、金融機関と金利引き下げ交渉をする選択肢もある

住宅ローンをめぐる金融機関同士の競争は年々激しくなり、借り換えで他行へ顧客を持っていかれる状況を傍観しているばかりではない。最近では、既存顧客からの金利引き下げ交渉に応じる金融機関も表れ始めたようだ。優良顧客に対しては、金融機関のほうから金利引き下げの提案をしてくることもあるという。

すでに借りている住宅ローンの適用金利引き下げであれば、借り換えに比べて費用や手間がかからず、その手続きも簡単だ。しかし、「金利交渉を受け付ける」と表立って営業しているわけではないため、あくまでも金融機関と顧客との関係で成立するものと考えておくべきである。

金融機関によってスタンスは異なるが、年収が高い、安定した仕事である、社会的地位が高い、将来的に他の金融商品を買ってくれそうなど、金融機関にとってあなたが「手放したくない優良顧客」の場合に使える選択肢だ。

「返済が苦しいから金利を下げてほしい」は通用しないが、何らかの悪い条件を抱えていなければ、金融機関に対して「住宅ローンの借り換えを考えているけど、相談に乗ってくれますか」程度のニュアンスで反応を探ってみるのもよいだろう。

2014年 12月13日 11時09分