DIYブームの浸透と盲点
2014年冬、東京・表参道に4日間限定でホームセンターの『カインズ』がプロデュースした『CAINZ LiveGreen STORE』がオープンした。都心エリアに期間限定ショップを出すのは、ホームセンター業界初の試みだ。郊外ホームセンターのイメージが強いカインズが“超都心”にショップをオープンした理由とは? 急速に広がるDIYブームで、ホームセンターの役割は変わるのか――?
『CAINZ LiveGreen STORE』は、ショップをマンションの1室に見立て、リビング・キッチン・ベランダなど各シーンのDIYアイディアを体感できるようにし、都会暮らしでも簡単に育てられる植物やDIY初心者に向けたキットの紹介を行った。
「完成品では飽きたらず、自分だけのオリジナルをつくってみたいという潜在的なDIY要望を持っている感度の高い方が多く来店されました。狭い部屋でもグリーンを楽しめる多肉植物の寄せ植えや、塗装とワイヤーでDIYするタイルをつかったホワイトボードづくりなどのワークショップを行い、自分でつくるという意識を広げられたと思います。都心暮らしだとホームセンターに縁の無い方も多く、低価格な植物や雑貨に驚いていました」と株式会社カインズ広報室の西片章子さん。
『CAINZ LiveGreen STORE』は、最近のDIYブームで、つくり方の情報はあふれていても実際につくろうと思うと、材料費が高かったり気軽に相談できる人がいないという“都心DIY”の盲点にマッチしたようだ。
相談のしやすさがひとつの特長

2014年11月末にオープンした『カインズ船橋習志野店』は、カインズが“次世代型”と位置づけるホームセンター。12,200m2の広い売場面積の中心に「住まいのコンシェルジュカウンター」を置き、インテリアからDIYまで幅広く顧客の相談にのっている。
「ホームセンターは商品数は多いのですが、たとえばリビングルーム用品でも収納・カーテン・家電などがばらばらの売り場に置かれています。売場面積を生かしたトータルコーディネートの提案はこれからの課題ですが、コンシェルジュサービスでは、膨大な商品の中から最適なものを探して提案することで、ホームセンターと住まいの“繋ぎ役”になりたいと思っています」
また、店内にある『DIY Styleワークショップスタジオ』では、木製のラックやミニテーブルづくりなど初心者向けのDIY教室を開催している。これは、既製品の販売だけでなく自分でつくったからこそ愛せるモノ、という新しい価値の提案をしている。
「カインズは家事時短グッズのPB(プライベート・ブランド)商品にも力を入れています。これは、主婦の皆さんが家事の時短で空いた時間に、より暮らしが豊かになるような時間の使い方をしてもらうことにつながります。その時間のつかい方の提案のひとつが、DIY教室です」
“こだわりの暮らしが叶えられる”ホームセンターへ
『カインズ船橋習志野店』は、大工などのプロニーズに対応するため、木材や工具を揃えた『資材館』のオープン時間を6時30分にした。8時に現場に入りたい職人たちが、工具や木材を買いに来るそうだ。
初心者からプロまで、幅広いニーズ対応能力が郊外大規模ホームセンターの真骨頂だろう。ここに暮らし方の提案を付加した“次世代型”ホームセンターの真価が問われるのはこれからだ。
「ホームセンターならではのカテゴリーの広さを生かして、つくる・育てる楽しさ、植物がもたらす暮らしの豊かさ、ペットとの共生などの価値観を、ディスプレイやワークショップを通して提案していきます。様々な制約条件があり、都心ニーズに応えきれていないジレンマはありますが、ホームセンターに行けば自分のこだわりの暮らしが叶えられる、という存在になれば足を運んでもらえると思っています」
みんなと同じものよりも、オリジナルを自分でつくる方が価値が高いと感じ、その過程も楽しめるというのがDIY人気のひとつの要因だろう。“次世代型”ホームセンターは、必要なものを買う場所から、“つくる”を体験し身に付けることで、買うよりも満足度の高い“経験”を得られる場になっていくのかもしれない。
2015年 01月12日 15時00分