居住者の高年齢化が進むUR 北海道で初めてカスタマイズURの募集を開始

今回、北海道で初めてカスタマイズUR賃貸の募集が開始された札幌市「澄川団地」</BR>
地下鉄南北線 澄川駅から徒歩11分の立地にあり、住戸数は394戸、管理開始年度は昭和53年~57年である今回、北海道で初めてカスタマイズUR賃貸の募集が開始された札幌市「澄川団地」
地下鉄南北線 澄川駅から徒歩11分の立地にあり、住戸数は394戸、管理開始年度は昭和53年~57年である

住み替え先を検討している人で、「団地」を選択肢の一つに入れている割合はどれだけいるだろうか。
UR都市機構(以下:UR)が持つ賃貸住宅全体のうち、高齢者(65歳以上)のいる世帯は全体の38.9%で、平成22年国勢調査の高齢者(65歳以上)のいる世帯の37.8%と比較して全国平均を上回っている。
団地は一般的な賃貸住宅と比較して、築50年以上と古い物件が多い点や、やや郊外にある立地、和室が中心の間取りなど、昨今の若年層のライフスタイルの変化やニーズへの対応が不十分である点が、若年層の世帯数が低い理由のひとつとして挙げられる。団地における居住者の高齢化、過疎化は、コミュニティの弱体化による居住者の孤立や、空き部屋増加による治安問題などの問題を招く恐れもあり、団地への若年層の流入による活性化はURの課題のひとつといえる。

URは、そうした課題に対する新たな取組みとして、北海道札幌市にある澄川団地の3戸で、全国では4番目、北海道では初めてとなる"カスタマイズUR"の募集を2016年2月より開始をしている。2016年5月現在、2戸の申込の他、1件は既に契約済に至っているといい、今後、澄川団地内にカスタマイズが可能な住戸の追加も検討しているという。

これまでURでは、DIYができる賃貸住宅として「DIY住宅」と「カスタマイズUR住宅」という2タイプの部屋を展開しており、現在は日本全国でDIYができる団地は54団地、そのうちカスタマイズURは3団地で展開されている。
「DIY住宅」は、住戸内の壁や床など建物の構造部分(躯体)以外の広範囲に渡って原状回復を免除としており、前入居者が退去した際の空家補修や設備関係の修繕も最低限に留めているのが特徴である。
一方、「カスタマイズUR住宅」は、壁紙を貼る、色を塗る、棚をつけるといった、自由にできる壁(フリーウォール)を一部分に限定して設置し、その部分のみの原状回復義務を原則免除にしている。

2月のオープニングイベントでは、URの社内横断プロジェクトチームである「UR DIY部」を立ち上げ、部長を務める西日本支社大阪エリア経営部の小正茂樹氏と、北海道初の輸入壁紙とDIY専門店Wall Deco Kabeya(ウォール・デコ・カベヤ 以下:Kabeya) の矢野清貴氏によるトークセッションが行なわれた。また、イベント参加者がプロの手ほどきを受けながら実際に壁紙を貼る体験教室が開催された。

DIY初心者にはぴったり 気軽に始められるフリーウォールのカスタマイズ

イベント冒頭に行なわれたUR小正氏とKabeya矢野氏のトークセッションでは、これまでURが取組んできた"カスタマイズUR"の実例や、両氏が感じているDIY人気について語られた。

小正氏は、DIY住宅とカスタマイズURが展開される中、今回澄川団地でカスタマイズURを提案した背景として、お客様からの声の中に課題があったと語る。
「"賃貸住宅であっても、自分らしく部屋をカスタマイズしたい。でもDIYの経験もなく、時間や費用もあまりかけたくない"というお客様からのニーズを感じていました。これまでURでは、居住内の幅広い範囲のDIYが可能なDIY住宅を主に提供してきました。しかし、部屋のすべてを自分好みにカスタマイズできるDIY住宅の場合、時間や費用、技術が必要となるなど、気軽にDIYを楽しみたいと考えるお客様にとっては敷居が高いものでした。
それならば、見た目がぱっと変わりやすい壁の一部だけを原状回復義務の免除とするカスタマイズURの方が、少ないコストで部屋の印象を変えやすいため、多くの方々にDIYを気軽に始めていただけると思ったんです」。
また、矢野氏は、「もともと大阪の輸入壁紙のインターネットショップとして人気の高かった壁紙屋本舗社長の濱本廣一さんとの出会いがきっかけでした。当時、濱本社長からの依頼として、実際に壁紙を買ったお客様から、"壁紙の上手な貼り方がわからない"という悩みが多いため、全国で壁紙貼りの体験教室を開催して欲しいというお話がありました。全国を回っていると、今度は実際に輸入壁紙の実物が見たいという声が多くあがり、輸入壁紙を取り揃えた実店舗のオープンに至りました。オープン当時、わざわざ遠方から来てくださる方も多く、北海道では"壊れたものを直す"というイメージが強かったであろうDIYが、自分で住まいを楽しくする方法としてここまで浸透しているものなのかと驚きました」と語った。

(写真左)ワークショップが開催された部屋の玄関には、「UR×KABEYA みんなで一緒にDIYしませんか」のメッセージ</BR>
(写真右上)UR都市機構 DIY部部長小正茂樹氏(左)、KABEYA矢野清貴氏によるカスタマイズURの概要説明</BR>
(写真右下)部屋とは別に、集会場も壁紙を貼るワークショップの会場として使用された(写真左)ワークショップが開催された部屋の玄関には、「UR×KABEYA みんなで一緒にDIYしませんか」のメッセージ
(写真右上)UR都市機構 DIY部部長小正茂樹氏(左)、KABEYA矢野清貴氏によるカスタマイズURの概要説明
(写真右下)部屋とは別に、集会場も壁紙を貼るワークショップの会場として使用された

団地の和室が、DIYによってカフェ風のリビング・ダイニングに様変わり

(写真上)カスタマイズ前の実際に賃貸する住宅の様子</BR>(写真下)カスタマイズ後のモデルルーム</BR>※モデルルームのため、実際に賃貸する住宅とは異なり、原状回復義務のあるフリーウォール以外の部分にも壁紙を貼っている(写真上)カスタマイズ前の実際に賃貸する住宅の様子
(写真下)カスタマイズ後のモデルルーム
※モデルルームのため、実際に賃貸する住宅とは異なり、原状回復義務のあるフリーウォール以外の部分にも壁紙を貼っている

今回のイベントでは、カスタマイズURのモデルルームとして、和室(6畳)の一室に輸入壁紙を貼りつけ、カフェ風に仕立てた部屋も開催された。このモデルルームは、実際にKabeyaのアドバイスやサポートを受けながら、DIY初心者の女性が壁紙貼りなどを実施して仕上げた部屋だという。

このモデルルームのカスタマイズでは、フリーウォールに壁紙を貼るだけでなく、ネジを使用して棚を設置し、その天板はモールテックスと呼ばれるコンクリート風のデザインを施している。また畳の上に市販のウッドカーペットを敷きつめることで、大掛かりな工事をすることなく、和室から洋風の部屋へと雰囲気を変えている。
なお、この北海道カスタマイズURのサポート事業者でもあるKabeyaは、カスタマイズURの住人に対して、カスタマイズのアドバイスや手伝いといったサポートを無料でおこなっていくというから、たとえDIYの初心者であっても、安心して自分好みの空間に近づけることができるのではないだろうか。

ちなみに今回のカスタマイズにかかった施工費用としては、レンガ柄、木目柄、植物柄の3種類の壁紙の合計6ロールで3万6,000円、8畳用のウッドカーペットが3万6,000円、壁紙を貼るための専用糊が900円で、合計7万2,900円(税込7万8,732円)だそうだ。

「もっとおもしろくしたい」という想いによって変わる賃貸の未来

UR住宅を一般的な賃貸住宅と比較した場合の違いとして、敷金礼金、契約更新料、さらには保証人までも不要であり、民間企業による賃貸住宅に比べ専有面積が広く、緑地が多く住環境が整っていることなどがあげられる。

一般的に同じ和室しかないというイメージの団地も、今回の北海道カスタマイズURの事例のように、比較的簡単にオリジナリティのある住環境に生まれ変わらせることが可能である。
これまで制約が多かった「団地」という住環境が、カスタマイズできるようになることで、実は想像以上に自分らしい住生活を送ることのできる存在になりえるのではないだろうか。

小正氏と矢野氏に共通した想い、それは、「賃貸をもっとおもしろくしたい」ことだという。
実際にカスタマイズURの住戸に住む人が、こうした実体験を元に「賃貸はもっとおもしろい」と思うことで、今後、賃貸に対する考え方、住まい方が変わっていくことを期待したい。

2016年 06月05日 11時00分