近居という住まい方について

世帯に変化があるようで…?世帯に変化があるようで…?

結婚をするとどちらかの親との「同居」について考える人は多いと思う。以前と比べて家を継ぐという意識が下がったためか、同居する率は低くなっているようだ。

同居が減っている一方で、「近居」という新しい住まい形態が出てきているのはご存じだろうか。近居とは、国土交通省が平成18年で行った調査で「住居は異なるものの、日常的な往来ができる範囲に住居することを指すもの」と言っている。別名“スープの冷めない距離”とも呼ばれ、交通手段を問わず10~30分以内の移動時間で行けることをいうようだ。

同居ではなく何故、近居が最近注目をされはじめているのだろうか?UR都市機構が率先して提唱している「近居」について発表があったので、今回時代の世帯変化とともにお届けしたい。

近居の取り組みについて

近居については平成27年3月に閣議決定された「少子化社会対策大綱」で、「世代間の助け合いを目的とした『三世代同居・近居』の促進」という旨が盛り込まれている。とはいえ、同居は先ほども述べたが抵抗感ある人も多く、そのため近居という住まい形態を最近選ぶ人が多いようだ。

神戸大学の平山洋介教授によると「戦後の住宅政策は核家族の世帯に対して近代的な住宅を供給することでした。しかし、時代を経るにつれて核家族も少なくなり、個人化と家族化が進んだと言えます」ということだ。

ここでいう個人化は未婚の増大や単身世帯の増大を指す。家族化はここでは世帯内単身者の急増、いわゆる高齢者の単身世帯増大を指す。戦後、世帯形式と言えば核家族が代表的な言葉だったが、こうした世帯形態も徐々に変化しているようだ。その世帯変化により、家族のつながりも変化しているという。

「子世帯は親世帯に子育てを手伝ってもらう傾向にあります。子育てだけでなく将来的には介護など、ライフステージのある場面でお互いの世帯が相互援助できるような距離感が特徴です。特に正規雇用の女性は、親世帯との近居が目立ちます。ただそれは夫側ではなく妻側の親世帯との近居が特徴です」

少子高齢化、女性の社会進出など様々な要素が絡みこうした子世帯と親世帯の距離感にもつながったのだろう。

平山洋介教授の「親子近居」配布資料より抜粋平山洋介教授の「親子近居」配布資料より抜粋

近居に対する優遇制度も

こうした新しい住まい方として注目されている近居だが、既に助成を始めている自治体もある。福井県小浜市、兵庫県川西市、大阪府高槻市、岐阜県大垣市など。それぞれの自治体により助成制度の名称や内容は異なる。購入のために助成金をもらえる制度や、転居、登記などの費用を助成する制度など多岐にわたっている。近居を検討している人は、考えている場所の自治体情報を一度チェックしたほうがいいと思う。

こうした中で、平山教授の言葉を借りると核家族に近代住居を提供していた住宅公団こと現在でいうUR都市機構も時代にあった近居を後押しするため、既に2013年から近居に対する優遇制度を行ってきた。この時点での制度は同一団地内の近居あるいは半径2km以内の2団地間の近居だったが、今回近居割WIDEという制度をつくった。片方の世帯がURに住んでいるのなら、もう片方の世帯は概ね半径2km以内ならUR賃貸以外の住まいでいいというサービスだ。多摩ニュータウンや高島平をはじめとして、全国10エリアにてこのサービスは適用される。

UR都市機構が開催したセミナー「近居会議」。セミナーに登壇した、左からモデレーターであるフリーキャスターの根本美緒氏、神戸大学の平山洋介教授、UR都市機構の副理事長の花岡洋文氏、UR都市機構の経営部次長の由利義宏氏UR都市機構が開催したセミナー「近居会議」。セミナーに登壇した、左からモデレーターであるフリーキャスターの根本美緒氏、神戸大学の平山洋介教授、UR都市機構の副理事長の花岡洋文氏、UR都市機構の経営部次長の由利義宏氏

団地に求められる変化は?

UR都市機構はこうしたサービスを活用して、子育て世帯や高齢者世帯をはじめ様々な世帯が団地からまちづくりをするようなことを複合的に言い現わした言葉として“ミクストコミュニティ”を掲げている。

1960-1970年代、団地は最新の住まいであったが、時を経て今の時代にあわせた変化が求められている。しかし、団地リノベやこうしたミクストコミュニティのように団地を起点とした、新たな住まいづくりが行われている。

ちょうど今、世帯変化を経て住まいのあり方が変わっているときなのかもしれない。ある意味で色々な施策が乱立して選択肢に困るときかもしれないが、冷静な視点で自分自身の住まい方にあったものを選びたいものだ。

2015年 10月16日 11時07分