佐倉を愛する人たちから生まれた「SAKURABILITY(サクラビリティ)」

佐倉市在住の坂本ご夫妻がデザインした「SAKURABILITY」のロゴマーク。とにかく行動を初めて、動きながら考えようという意図が込められている佐倉市在住の坂本ご夫妻がデザインした「SAKURABILITY」のロゴマーク。とにかく行動を初めて、動きながら考えようという意図が込められている

千葉県佐倉市は、都内中心部から約40km、電車では東京駅まで約1時間。成田空港へ約20分とアクセスがとても便利な立地にある。江戸の風情を忍ばせる街並みや田園風景と都市部を合わせ持ち、誇るべき魅力や特徴がたくさんあるまちだ。しかしそんな佐倉も、多くの地方都市と同じ問題を抱えている。

人口は平成17年をピークに減少傾向にあり、今後はそれが加速すると見込まれている。高齢化の進んでいる地域では32%を超え、このままでは集落の維持も厳しくなるといわれている。空き家も増えてきており、昔にぎわっていた商店街にもシャッターが目立つ。「にぎわい」であったり、「元気」と言い換えることができる類のものが、この街の日常に足りないのもまた現実なのだ。

SAKURABILITY(サクラビリティ)は、「もっと、集まる街へ」をモットーに「千葉県佐倉市にできること」を、話し合い、実現し、持続するための集合体だ。意外と知られていない佐倉というまちの良さをもっと知ってもらおうというところからスタートした。
ゲストハウス、コワーキングスペース、レンタルスペースが共存した佐倉市新町にある「おもてなしラボ」を運営する鳥海孝範氏を中心に、建築家や行政書士など30~40代がメインとなり、アイデアを元に佐倉を元気にする活動を行っている。

はじまりは「おもてなしラボ」

おもてなしラボの外観。ガレージはイベントや地域の催し会場にもなるおもてなしラボの外観。ガレージはイベントや地域の催し会場にもなる

鳥海氏はどうして、SAKURABILITYや佐倉市のまちおこしに関わるようになったのだろう?

鳥海氏は千葉県市川市に生まれて、3歳のときに佐倉市内に引っ越してきた。高校卒業後にニュージーランドのクライストチャーチの大学を卒業。離れていた時期もあったが、ずっと佐倉のまちを地元として過ごしてきた。

「ニュージーランドにいる時から、あまり地元のことを知らないなと思っていたんです。ニュージーランドから帰ってきたら、小さい時に通学路だったりよく遊んだ場所がシャッター街になったりさびれていて。」

帰国後、地元のタウン誌や佐倉市の広報紙を作成する仕事に携わるうちに、地元でまちおこし活動をするNPO法人など色々な人との出会いもあり、佐倉市のポテンシャルの高さに気づいた。そんな中、「おもてなしラボ」に生まれ変わる前の古民家が、取り壊されるかもしれないという話を聞いたそうだ。むかしの城下町では家の間口の広さで租税を決めていたために、古民家は間口が狭く奥行きが深くつくられている。歴史のある建物が、壊されてしまうなら…と、成田に近い立地と建物を活かしたゲストハウスの運営を決めた。
紆余曲折を経て、ゲストハウス、コワーキングスペース、レンタルスペースの3つのスペースが共存する「おもてなしラボ」としての場所ができてからは、より人が集まりやすくなり、ここから新しいものが生まれたり発信したりすることが多くなった、と鳥海氏。
「おもてなしラボが開業して1年たってやっと活用できるようになってきたと、人に言われることが多いですね。佐倉市の空き家を使って何かやろうという人が増えてきているという話も聞くし、市外から空き家を活用したくて佐倉に入ってきた人もいます。」

プレゼン+ブレーンストーミングでアイデアを具現化する「サクラビTALK」

鳥海氏を中心にはじまった、SAKURABILITY。その活動の要となっているのが、トークセッション型・地域活性化イベント「サクラビTALK(サクラビトーク)」だ。

2015年4月に第1回目がスタートし、はじめは毎月、現在は2ヶ月に1度開催。スタート時は50人くらいの人が集まっていたが、徐々に落ち着き今は毎回約20〜30名が集まる。しかし人数が少なくなってからの方が、参加者とのつながりが生まれてより深い会話になってきたという。
サクラビTALKでは、毎回3〜4組のスピーカーが、佐倉を元気にするアイデアをプレゼンテーションする。プレゼン後、参加者は自分が興味を持ったアイデアを、さらに魅力あるものにするブレーンストーミングに加わることができる。プレゼンテーションは時間で区切られており、2組のスピーカーのアイデアに参加することもできる。そして、それぞれのアイデアをプロジェクト化するかのジャッジの後に、プロジェクトリーダー&メンバーをその場で決定し、そのアイデアを具現化していくのだ。

参加資格は「佐倉市を元気にしたいと考えている人」。最近住み始めた人や昔住んでた人、いつか住んでみようと考えている人。佐倉に住んだことはないが移住したい、農家をはじめたいといって都内から参加する人も多いという。新しいことをはじめたいという人が多く、ここでしか出会えない人が多く訪れる。市内のイベントとなると、役割を兼任している人も多く、毎回同じ顔ぶれだったりするのだが、ここだけは特別だ。

その日参加した人が、気軽に「まちづくり」に関わりたくなる、アットホームな雰囲気で開催されるその日参加した人が、気軽に「まちづくり」に関わりたくなる、アットホームな雰囲気で開催される

プロジェクトから生まれた『佐倉城下町一箱古本市』

そして、サクラビTALKをきっかけに実現されたプロジェクトが、城下町の面影が残る佐倉市新町で開催された「佐倉城下町一箱古本市」だ。城下町である佐倉市ならではの古本市を開催したい!というプレゼンターのアイデアが実現した形だ。

千葉県で古本市は少なく、Facebookや東京の古本屋にチラシを張るなどして宣伝したところ、普段は東京の古本市にしか行かない出店者や参加者も多く訪れた。今まで佐倉でイベントがあっても参加してくれなかった人たちが来場され、佐倉を知ってもらう機会につながったという。既に第2回目まで開催され、佐倉城跡公園で行われるアート&クラフトフェア「にわのわ」、佐倉の「まち」と「人」とをつなげる「まちのわ」(佐倉市新町周辺)も同日開催された。実行委員同士横のつながりも深く、集客の面でも協力できたし、訪れた人は城下町散策を楽しみながら一箱古本市も楽しめるといったコラボレーションが生まれた。

佐倉城下町一箱古本は、2005年から東京の谷中・根津・千駄木で行われている「不忍ブックストリートの一箱古本市」を参考にしており、地域のさまざまなお店の軒先などをお借りして、それぞれの店主が自由に本を売る。一人一畳くらいの小さなスペースを活用できるため、これまで空き地や空き家だったところの一部も活用された。土地の形が悪いなどで今まで悲観的だったオーナーも新しい土地の活用方法に気づくことができ、実績を持つことで自信となり、イベントへの参加も積極的になったという。

佐倉城下町一箱古本市の様子。店主たちが思い思いに好きな本を売り、購入するひとたちでにぎわった
佐倉城下町一箱古本市の様子。店主たちが思い思いに好きな本を売り、購入するひとたちでにぎわった

広がるSAKURABILITYのアイデア。街それぞれの個性を活かしたまちおこしに

「おもてなしラボ」を運営する鳥海孝範氏「おもてなしラボ」を運営する鳥海孝範氏

イベント参加者のアイデアを形にすることで、参加者や協力者も徐々に増えてきた。今後の活動について、鳥海孝範氏に聞いてみた。

「サクラビTALK以外の展開も企画進行中です。例えば現在サクラビTALKは2ヶ月に1度の開催なので、その間の月には夕陽の絶景に加え、富士山、東京スカイツリーも拝める千葉眺望100景に選ばれたキャンプ場で「サクラビキャンプ」を行ったり、秋には佐倉城跡の佐倉城址公園で、下町風情の中で無音の映画祭などを開催予定したいと既に企画があがっています。」

SAKURABILITYの立ち上げメンバーは、Facebookの呼びかけで集まった佐倉を愛する有志たち7人だった。初めのころはイベントでディスカッションを行っても、良いアイデアは出るのだが、そのままで終わってしまっていた。そこで先駆けて鎌倉市で活動する、まちを熱くするIT企業の団体「カマコンバレー」に習い、参加者を募ってプレゼンテーションからプロジェクト化までを一本化して行う方法を取り入れ、現在の形になった。

まちおこしというと、行政的なものだったり規模の大きなものをイメージしがちだが、身近なところからアイデアひとつでできることも多そうだ。自分たちの暮らすまち、愛するまちを元気にするアイデアは、そこで暮らす人たちから生まれてくるのではないか。気軽にFacebookなどで情報を発信できるこの時代ならでは。そのまちそれぞれの個性を活かしたまちおこしに、地域の持つ無限の可能性を感じてならない。

SAKURABILITY
https://www.facebook.com/Sakurability/

千葉ゲストハウス おもてなしラボ
http://omotenashilab.com/

2016年 09月27日 11時07分