女性の単身増加で求められている住まいは?
住まいに大きく影響をもたらす社会的要因として、昨今では少子高齢化や空き家問題に注目が集まっているが、「晩婚化」も住まい形成に大きく関わる一つだ。総務省の平成22年国勢調査を見ると、平成2年の頃と比べて平成22年の未婚率は増加が著しい。
右のグラフは、その中でも平成2年、平成12年、平成22年における女性の未婚率の割合を出したものだ。同じ平成の時代でも、わずか20年で、特に20代後半からの未婚率はぐっと増加している。
こうして女性の単身世帯が増えている日本だが、女性が住まいに求めるポイントは何なのだろうか?
HOME'Sで以前調査した住まいに関する調査では「住まいを選定する際に重視するもの」の中で、「セキュリティ対策」という回答が多かった。ひとり暮らしをする女性にとっては、何かと“安心安全”について過敏になるもののようだ。
こうした背景がある中、今回、旭化成ホームズが都市で暮らす女性の単身世帯向けに、安心して住める共有賃貸住宅「ヘーベルメゾンNew Safole(ニューサフォレ)」を発表した。この住宅は、同社のくらしノベーション研究所が調査した結果、安心を感じるのに大切な「匿名コミュニティ」を大事にした物件だという。「匿名コミュニティ」とは何だろうか?これからの賃貸市場を考える上でも、カギとなるキーワードを探っていきたい。
ハード面の「安全」からソフト面での「安心」を得られる住宅へ
くらしノベーション研究所の調査結果によると、警視庁が発表している住宅対象侵入窃盗の認知件数は2002年をピークに全体的に減少傾向だが、住宅の種類別の分析結果でみると、戸建てや中高層マンションと比べれば低層集合住宅は被害件数の減り方が小さく、比較すると被害リスクが若干高いという。こうした被害リスクが比較的高い低層集合住宅の防犯に関して調査をしたところ、コミュニティに対する志向性の中で「匿名コミュニティ志向の特徴」が出てきた。
――匿名コミュニティとは一体何か?
端的に説明すると、例えばシェアハウスのように色々な直接的な交流はしたくないものの、居住者の顔が分からないのが不安。だからといって会話したことはないけれど知っている顔があった方が安心、という状態を志向する層ということだ。確かに顔を知っていれば、不審者がいてもすぐ分かり、何か災害があった時もそれまで話したことがなくても協力し合うことはできる。同研究所の調査だと、顔を知っている状態で隣室で悲鳴があがった場合、知らない状態よりも10%近く通報する割合が高くなるという。
今回、そうしたデータをもとに発表されたのが「ヘーベルメゾンNew Safole」だ。
「見える化」で安心・安全性を
「New Safole」は、匿名コミュニティの形成することができる賃貸物件。
入口には「おかえりラウンジ」を設けた。シェアできる本やメッセージボードなどを導入して、入居者同志が間接的に交流できる仕組みにする。また、このラウンジを設けることで、外部から不審者が入りにくい環境にし、防犯強化にもつなげる。
その他、入居者を女性に限定するとともに「マナー同意書」を作り、マナー意識が高い良好な入居者のみが住めるような仕組みにした。
ハード面以外にも、入居者の募集時に周辺環境の安全性に配慮した「見える化」を行っている。各物件のロケーション調査を行い、夜の帰路の写真掲載を行う。どんなルートで、夜に通る時、実際どんな様子なのか?駅からの帰り道も、事前に知ることができるので役に立つ。
「New Safole」は2014年10月に第1号棟が世田谷区豪徳寺に完成予定だ。コミュニティ賃貸としては第3弾の物件。単身女性を対象として、1K~1LDKの間取りプランがある。
“ゆるいつながり”のある住まい
東日本大震災以後、様々な“つながり”が提唱される中、今回の発表のように実は“ゆるいつながり”の方が本音としては求められているのかもしれない。日常はそんなに交流がなく、非常時にはつながれることができる共同体。それとも、震災から時間が経ち、風化してきたということだろうか。
購入物件では、地域のイベントや共用部の工夫などで周囲とのコミュニケーションが適度にできるような施策が今までも行われていたが、賃貸物件においては非交流型の賃貸住居あるいは最近人気を集める直接交流型のシェアハウスの2パターンが市場をしめていたと思う。その中で、現れた第3の間接交流型の匿名コミュニティによる賃貸住居。
このような“ゆるいつながり”の住居は増えていくのだろうか?今後も目が離せない。
2014年 06月06日 10時51分