建て替えだと狭くなってしまう物件を見事に再生

外装に施されたペイント。目立ちすぎず周辺の住環境に馴染んでいる外装に施されたペイント。目立ちすぎず周辺の住環境に馴染んでいる

古い物件を単に新築同様にするリフォームではなく、その古さを活かして新たな価値を吹き込むリノベーション。今でこそ市民権を得ている言葉だが、その立役者となったのが建築士事務所である株式会社ブルースタジオだ。
同社が手掛けた賃貸住宅が世田谷区上北沢に完成したのでその内覧会に行ってきた。

同物件は築40年の元下宿屋。1階にオーナーの両親が住み、2階の4部屋を賃貸していたが、4年前から空き家となっていた。
そこでオーナーが建て直しを検討したところ、現在の建築基準法では今までの面積よりもかなり小さい建物しか建てられないことが分かった。
このような経緯でリノベーションの相談を受けたブルースタジオは、上北沢という閑静な住宅街に調和しながらも、独自の働き方や趣味にこだわる人たちをターゲットとした賃貸住宅を提案した。それが「上北沢-BUFF」だ。

プロのアーティストによるグラフィックペイント。そして耐震・断熱性能もアップ

左:1階キッチン部分の壁。食を楽しみたい入居者の希望を反映したモチーフが描かれている。右:2階の内装。天井高は最大約4メートル。梁は耐震補強のため足されている左:1階キッチン部分の壁。食を楽しみたい入居者の希望を反映したモチーフが描かれている。右:2階の内装。天井高は最大約4メートル。梁は耐震補強のため足されている

2戸のメゾネットタイプの賃貸住宅として再生された同物件の内外装は、プロのアーティストによるグラフィックペイントが施されている。
外装にペイントと聞くと、落書きのような派手なイメージを持つ人もいるかもしれないが、決して奇をてらうものではなく、あくまで周りの住環境に配慮した建物の標識的なアートだ。
また内装は入居者の希望するモチーフが描かれ、入居者が入れ替わるたびに追加される予定だ。
建物の広さは43m2と40m2(各1LDK)。1階の天井高が約3メートル、2階が約4メートルと高さがあるので面積以上の広がりを感じる。
また、1階は「LIVE空間」と位置づけ、創造的な作業を促す土間床とし、2階は「Relax空間」として木造ならではの小屋組みの下、無垢材を多用し温かみのあるスペースとなっている。まさにオンとオフの真逆の印象を演出。
特長は、すぐれたデザインだけではない。天井の梁を足すといった耐震補強や断熱材の充填など性能面をアップさせているところも魅力だ。

築40年の木造物件でも家賃は新築マンション並に

このようにアピールポイント満載の物件だが、残念ながら入居者は2戸ともすでに決定済みだ。同社がホームページ上で告知した内覧会の参加者が、すぐに決めたそうだ。
両物件の入居者ともに契約時には土間の活用イメージをすでに持っていた。1組はクリエイティブ系の仕事場として、もう一組は趣味のアウトドアグッズの収納場所として活用するという。
大正時代からの格式を伝える落ち着いた街並み。そして木の温もりを感じながらも創造力を豊かにしてくれる内外装。リノベーションだからこそ実現できた賃貸住宅だ。
なお、家賃は月額12万円。これは周辺新築マンション(1LDK)の相場と同等だ。
空き家問題がクローズアップされる昨今だが、たとえ築40年の木造物件でも十分新築マンション並の価値まで再生できるということだろう。

【建築概要】
・交通:京王線「上北沢」駅徒歩7分
・事業主:個人オーナー
・企画・設計監理:株式会社ブルースタジオ
・施工:株式会社ROOVICE
・竣工:2014年3月
・用途・戸数:寄宿舎・2戸
・構造/規模:木造戸建2階建延床面積: 83m2
・間取り:1LDK(メゾネット)
・家賃:月額賃料12万円
・専有面積: 111号室43.08m2/ 222号室40.01m2(庭付)

1・2階が利用できるメゾネットタイプ。222号室は庭付き(資料提供:株式会社ブルースタジオ)1・2階が利用できるメゾネットタイプ。222号室は庭付き(資料提供:株式会社ブルースタジオ)

2014年 04月08日 09時52分