北大阪急行が箕面萱野まで延伸してから、2年が過ぎた。開業前に立てられた1日乗降客数の予測は、約2万8,000人。開業から8ヶ月の調査では、1万9,985人。予測の7割にとどまっていた。ところが2年目の調査では、2万4,662人まで伸びた。予測の9割弱である。1年で4,677人、率にして23.4%の増加になる。開業直後の数字で街を測るのは、早かったということになる。一方で、同じ箕面市内でも、阪急箕面線沿いでは梅田への直通列車が2022年に姿を消している。1つの市の中で、東と西の動きが分かれている。

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2024年3月23日、千里中央が終端駅でなくなった日

千里中央駅の玄関せんちゅうパル千里中央駅の玄関せんちゅうパル

新大阪から北行きの御堂筋線に乗ると、以前は千里中央で線路が終わっていた。今は、そこから先に2駅が続く。

北大阪急行南北線の延伸区間、千里中央駅〜箕面萱野駅間の約2.5kmが開業したのは、2024年3月23日である。総事業費は874億円。長らく大阪府北摂の交通の"終着"だった千里中央駅は、中間駅に変わった。

そして生まれたのが箕面船場阪大前駅と、新たな終着駅である箕面萱野駅である。約2.5kmのうち1.7kmはトンネル、残る0.8kmは高架橋で、南半分は新御堂筋の地下を進み、北へ抜けたところで地上に出る。

箕面船場阪大前駅の8枚の膜屋根箕面船場阪大前駅の8枚の膜屋根

箕面船場阪大前駅は、新御堂筋南行側道の地下、新船場北橋と新船場南橋の間に位置する。地上部に立つSTATION棟は、8枚の膜屋根が並ぶ特徴的な造形だ。2021年4月にはすぐ隣に大阪大学の箕面キャンパスが移転してきた。外国語学部を核とする文化系のキャンパスである。大学が先に移り、その3年後に、足元へ駅が開いた。

箕面船場阪大前駅の8枚の膜屋根大阪大学箕面キャンパス

箕面萱野駅は、国道171号に接する高架駅である。駅の南側は複合商業施設「みのおキューズモール」と直結しており、駅とモールの間に信号を挟まない。開業から約1年後の2025年3月12日には南側交通広場とかやの第一駐輪場が加わり、交通結節点としての形が整った。

交通の重心が北へ動いたことは、確かである。街の重心そのものが同じ方向に動くかどうかは、これから決まる。

箕面船場阪大前駅の8枚の膜屋根

「予測2.8万人」と「現実1.9万人」のギャップ

開業から約8ヶ月後の2024年11月12日、北大阪急行電鉄が箕面萱野駅の交通調査を実施した。結果は、乗車1万258人、降車9,727人、合計1万9,985人。事業採算計画で示されていた予測は約2万8,000人だったから、7割の水準にとどまった。

このとき、数字は「予測に届かなかった」と読まれた。

1年後、同じ11月の火曜日に行われた調査で、景色が変わる。2025年11月11日の乗降客数は、乗車1万2,464人、降車1万2,198人、合計2万4,662人。前年比で4,677人、23.4%の増加である。予測2万8,000人に対して、9割弱まで届いた。

同じ調査で、箕面船場阪大前駅も1万4,095人から1万5,969人へ13.3%伸びている。一方、千里中央駅は6万9,342人から6万9,001人へ0.5%の微減、桃山台駅と緑地公園駅はほぼ横ばいだった。北大阪急行の全5駅の合計は3.6%増で、伸びの大半は延伸2駅が生んでいる。

キューズモール内通路キューズモール内通路

新しい駅は、開業した瞬間に完成するわけではない。定期券の切り替え、通勤ルートの見直し、沿線への転入。生活の側が駅に合わせて動くまでに、時間がかかる。1年目の7割という数字は、街の実力ではなく、街がまだ駅に慣れていない状態を映していた。

乗降客数が2年目に伸びる一方で、街の別の指標は、開業前から動いていた。地価と、物件価格である。

キューズモール内通路人々が行き交う箕面萱野駅改札口

自社既存記事「3年で1.5倍上昇」のその後

開業前から、この街の物件価格は動き始めていた。

キューズモールから望む箕面萱野駅周辺キューズモールから望む箕面萱野駅周辺

LIFULL HOME'S PRESSは、開業直前の2024年2月に調査記事(北大阪急行延伸の不動産市場への影響を調査。新駅周辺の物件価格は3年前の1.5倍に上昇)を出している。2024年1月時点のデータをまとめたもので、開業前の2021年2月からの約3年間で既に価格上昇が生じていた事実を報じた。同記事によれば、新駅(箕面萱野・箕面船場阪大前)を中心とした半径500m圏内の中古マンション・中古一戸建て価格は、2021年2月の3,838万円から2024年1月の5,685万円へ、3年間で約1.5倍(+48.1%)に上昇していた。賃料も、ボラティリティが大きいものの、同様の上昇傾向にあった。開業前の"期待"が、価格に先行して織り込まれていた形である。

開業から2年経った現時点で、その上昇はどこにあるのか。まず、国土交通省の不動産情報ライブラリで箕面市の2025年公示地価を確認すると、住宅地・商業地とも上昇基調が続いていた。集計手法によって数値の水準は変わるが、方向は共通する。

さらに2026年に入っても、上昇は続いている。大阪府全域の公示地価では、住宅地の変動率が+2.8%。北摂エリアは、その中でも延伸の恩恵を受ける形で上昇を続けている。
数字だけを追えば、開業前からの上昇が継続している。ただし、上昇の本質を見ると、絵柄は単純ではない。

上昇を牽引しているのは、大阪市内のマンション価格高騰が北摂への需要を押し上げている構図である。延伸そのものによる新規需要よりも、大阪市内からあふれた需要の受け皿となっている部分が大きい。上昇は続いているが、続き方が開業前の期待とは少しずれている。

キューズモールから望む箕面萱野駅周辺箕面船場阪大前駅と箕面萱野駅をつなぐ線路と国道

2031(令和13)年度には、箕面市立病院が箕面船場阪大前駅前地区(箕面市船場東1丁目)に移転する予定である。医療という新しい機能が加わることで、街の需要構造がもう一段動く可能性が高い。

東が伸びる間、西で起きていたこと

阪急箕面駅前風景阪急箕面駅前風景

街の東側が動くのと同じ時期、西側では反対の動きが起きていた。

阪急箕面線の終着駅、阪急箕面駅である。2022年12月、阪急電鉄はこの駅に発着する梅田直通列車を廃止した。以降、大阪梅田へ出るには石橋阪大前駅で乗り換える必要がある。駅前ロータリーは、平日昼間に立ち寄ると閑散としている。阪急箕面駅は、住宅街の駅としての性格を強めた。

箕面駅から箕面公園へ向かう道箕面駅から箕面公園へ向かう道

駅から徒歩数分に広がる箕面公園は、別の動き方をしている。大阪府の集計によれば、近年の推移において府営箕面公園の来園者数は2018年度に145万9,100人でピークを迎え、2019年度も144万9,900人だった。2020年度は105万9,700人まで落ち込む。翌2021年度は119万8,800人、2022年度は132万6,900人と戻し、ピーク時の9割程度まで回復している。

減ってはいるが、失われてはいない。箕面大滝を核にした観光地としての基盤は、なお残っている。

箕面駅から箕面公園へ向かう道長期休館中の箕面温泉スパーガーデン

追い打ちをかけたのが、「大江戸温泉物語 箕面温泉スパーガーデン」の長期休館である。阪急箕面駅から徒歩5分の距離にある、1965年開湯の温泉レジャー施設だが、2025年3月31日から、施設メンテナンス工事のため休館に入った。ただし、運営会社のプレスリリースによれば、2026年10月1日にリニューアルオープンする予定である。

梅田直通の消失、来園者数の伸び悩み、温泉施設の長期休館。西側で起きているのは、劇的な衰退ではない。ただし、東側のような明確な伸びも、今のところ見えていない。
新しい鉄道の東側と、古い鉄道の西側。同じ「箕面」という1つの街の中で、動きの速さが違っている。

沿線の成長はまだ続く

画像13

それでも、街の物語が閉じたわけではない。

2031(令和13)年度中の開院を目指し、箕面市立病院は箕面船場阪大前駅前地区(箕面市船場東1丁目)へ移転する予定である。現病院は1981(昭和56)年7月開院で、2026年時点で開院から45年が経過している。移転後の病床数は現在の317床から390床に拡大され、医療法人協和会「協和会病院」との再編統合も含まれている。医療という機能が駅前に加わることになる。

沿線の成長はまだ続く

2021年4月に移転してきた大阪大学箕面キャンパスは、外国語学部を中心とした学生・教職員の日常動線を街に加えた。留学生会館も含まれるため、駅前は多言語が飛び交う空間になっている。乗降客数の統計として直接には現れづらいが、街の空気を確実に変えている。

大学が去った跡地も、動き始めている。粟生間谷東八丁目の旧箕面キャンパス跡地は、箕面市が保有したうえで、公募型プロポーザルで選ばれたESR株式会社の関連会社と、2023年12月に停止条件付きの一般定期借地権設定契約を結んだ。条件がすべて成就したのは2024年12月、土地建物の引き渡しは2025年4月である。同年10月から既存建物の解体工事が始まった。

跡地に整備されるのは、データセンター2棟、学校施設、交流施設、店舗、公園・緑地である。市の想定では、2028年度に商業施設と交流館、2029年度に学校施設とデータセンター1棟目、2031年度に2棟目が開く。

大学の移転で人が減った東部に、別の機能が入る。ただし、データセンターは人が集まる施設ではない。街の東部にどれだけの人の流れが戻るかは、併設される学校施設と商業施設の規模次第になる。

住宅市場の視点からは、大阪市内のマンション価格が高水準で推移する限り、北摂への需要流入は当面続くと見られる。箕面萱野駅周辺の物件価格は、2031年度の病院移転までは上昇基調が維持される可能性が高い。

延伸開業から2年で見えたのは、乗降客数が1年目の7割から2年目の9割弱まで伸びたこと、地価と物件価格が上昇を続けていること、そして東西で動きの速さが分かれていることである。次の2年で見えてくるのは、東側の伸びがどこで頭打ちになるのか、そして西側が独自の役割を見つけられるのかどうかである。2031年度の病院移転が、その分岐の目印となる。