国土交通省と消費者庁による悪質リフォームの注意喚起

省エネリフォームに関する法律の改正により、悪質リフォーム増加の懸念があり、国土交通省・消費者庁から注意喚起がなされている(悪質なリフォーム事業者にご注意ください!!/国交省・消費者庁)省エネリフォームに関する法律の改正により、悪質リフォーム増加の懸念があり、国土交通省・消費者庁から注意喚起がなされている(悪質なリフォーム事業者にご注意ください!!/国交省・消費者庁)

新たな住宅リフォームトラブルが懸念されている。

住宅に関する法律改正があり、それを悪用した悪質リフォーム事業者が増加する恐れがあるからだ。既にそういった相談が、住宅専門の相談窓口「住まいるダイヤル」に寄せられている。

国土交通省と消費者庁は共同で悪質リフォーム事業者に関するチラシを作製。消費者に向けて注意をするよう広く呼びかけている。

「住宅リフォームはトラブル業界」
筆者がこの業界に入った40年近く前に言われていた言葉である。

当時のリフォームはあくまでも修繕が中心で、業界そのものが未熟であった。また消費者側も知識が薄かったため初歩的なトラブルが多かった。現在はリフォームが高度化し、トラブル内容も以前とは変化をしている。

今回は、悪質リフォームの被害にあわないために、その手口や対策方法をご紹介。最近のトラブル事例や、困ったときに経験豊富な一級建築士が相談に乗ってくれる「住まいるダイヤル」の利用方法についてご紹介しよう。

省エネリフォームでのトラブル増加の懸念

2025年4月からすべての新築住宅に省エネ適合基準が義務付けられるようになった。現在、住宅リフォームでは義務化はされていない(省エネ基準適合義務化チラシ/国交省)2025年4月からすべての新築住宅に省エネ適合基準が義務付けられるようになった。現在、住宅リフォームでは義務化はされていない(省エネ基準適合義務化チラシ/国交省)

2022年、住宅に関する法律の改正が行われた。2025年度以降に建てられるすべての新築住宅や建築物に、一定の省エネ性能を義務付けるというものである。

これには住宅リフォームは含まれないのだが、この改正を悪用した悪質リフォーム事業者によるトラブルの増加が懸念されている。

現在、住宅にまつわる法律改正が進んでいる。特にカーボンニュートラルを実現するための住宅の省エネ化に関する新しい動きが活発で、これからの家づくりに大きな変化がもたらされると予測される。

東京都では2025年4月から、新築戸建て住宅に太陽光発電システムの設置を義務付ける条例を可決し話題になった。しかしこの対象はあくまでも一定の条件下にある大手建築事業者である。個人やリフォームに対してのものではない。

こういった状況やニュースを利用して跋扈(ばっこ)するのが悪質リフォーム事業者だ。「このままでは法律に違反する」などと嘘をつき不安をあおって契約を強要したり、たいして効果がない工事を高額で行ったりといった被害が予想される。

国土交通省、消費者庁の「悪質なリフォーム事業者にご注意ください!!」というチラシは、このタイミングでそういった被害にあわないよう消費者に向けて注意喚起を行ったものである。

チラシには悪質なリフォーム事業者の勧誘手口として
「国の制度改正で省エネリフォームが義務化されたので、リフォームが必要である」
「光熱費が安くなるので、すぐに最新の設備に交換したほうがいい」
「今なら近所で工事をしているので、すぐ契約すれば特別な割引をする」
などが紹介されている。

悪質リフォームのトラブル事例としては
「口頭のみで強引に工事をされ、高額な工事費用を請求された」
「工事中に不具合を見つけたと言って不要な工事をされ、追加費用を請求された」
「工事費用を支払ったが工事が始まらず、リフォーム事業者と連絡が取れなくなった」
「当初の予定と異なる設備に変更され、請求額が増えていた」
などが挙げられている。

既に起きている! 悪質な省エネリフォームの相談例

実は筆者の実家にも、太陽光発電システムが必要になるといったセールスの電話がかかってきたことがある。訪問だけでなく電話にも注意が必要だ実は筆者の実家にも、太陽光発電システムが必要になるといったセールスの電話がかかってきたことがある。訪問だけでなく電話にも注意が必要だ

「住まいるダイヤル」に寄せられた、悪質な省エネリフォームに関する相談事例(※)をご紹介しよう。

高齢の両親が暮らす築30年の木造住宅に、見ず知らずのリフォーム事業者が来訪。

「法律が改正され古い住宅では省エネリフォームが義務化された。この住宅も対象で、このままだと法律違反になり罰金を払うことになるので、すぐに工事しなければならない」、「今ならキャンペーン期間中なので、お得に工事が出来る」と契約を急がされているが本当か?というものである。

まさに注意喚起がされている悪質事業者の手口そのものだ。

「住まいるダイヤル」では、
・既に建っている住宅で増改築を行わない場合は対象ではないこと。
・何をもって「お得」としているのかが不明であること。
・事業者の言うことを鵜呑みにして契約をしないこと。
・もし契約をしてしまった場合でも、訪問販売による契約は契約書面を受け取った日から8日以内であれば契約の解除ができるクーリング・オフ制度が利用できること。
・クーリング・オフができない場合でも、虚偽に基づいて契約を勧誘した場合は、不実告知として契約の取り消しができる場合もあること。
などをアドバイスしている。

(※「住まいるダイヤル」電話相談事例より

悪質リフォームの定番の4つの手口

悪質なリフォーム事業者は消費者の不安につけ込んでくる。今回は法律の改正を悪用して、法律違反になると脅して不安をあおることが予測される。

災害時にも注意が必要だ。大地震などの災害が起きると、お宅の家は危険だなどと言って不安をあおり、耐震リフォームを強要する手口が増える。

これらには共通する手口があるので、ここでいったん整理をしておこう。多いのは「不安商法」「点検商法」「見本工事商法」「あいさつ商法」である。

「不安商法」とは、消費者の不安につけ込んでくるもの。このままでは法律違反になる、地震で倒壊する、雨漏りがする、家がダメになるといったようなものである。

以前からよく使われている手口で、耐震、屋根や外壁、排水管など見ただけでは分かりにくく、消費者が不安を感じやすい箇所で使われる手法である。

「点検商法」とは、無料点検をきっかけに工事を勧めてくるもの。近所で工事をしているが、見たところ家に問題がある。診断だけなら無料なので見せてもらいたと言って上がり込み、ここが不足しているなどといって高額な工事を要求する。

「見本工事商法」とは、お宅は目立つ位置にあるので会社の宣伝になる。定価の半額で工事をさせてほしいなどと言って工事を勧めてくるもの。その工事はその値段相応、もしくはそれ以下であることが多いのは言うまでもない。

「あいさつ商法」とは、声をかけるきっかけとして近隣で工事をしているのであいさつに来た、ご迷惑をかけているお詫びに来たなどと言って声をかける手口である。

ほかには、格安で排水管洗浄を行った後に、配管がすべてダメだと言って高額な工事を強要するものや、トイレの詰まりなどの緊急時に駆けつけるレスキューサービスのマグネットチラシを配布、連絡をすると困っている足元を見て法外な費用を請求するといった手口もある。

悪質なリフォーム事業者はこういった手口を縦横無尽に組み合わせて強引に契約を迫ってくる。そして不必要な工事をしたり、高額な工事費用を請求したり、なかには費用を支払ったとたんに連絡がつかなくなってしまうケースもある。

トラブルに関する相談件数の推移。リフォームに関する相談件数が増加傾向にあることが分かる(住宅相談統計年報2022より/住宅リフォーム・紛争処理支援センター)https://www.chord.or.jp/トラブルに関する相談件数の推移。リフォームに関する相談件数が増加傾向にあることが分かる(住宅相談統計年報2022より/住宅リフォーム・紛争処理支援センター)https://www.chord.or.jp/

悪質リフォームの被害を防ぐには契約時が肝心

このようなトラブルを防ぐためには、とにかくその場では絶対に契約をしないことである。悪質リフォーム事業者は考える時間を与えないように急がせる。

何を言われても決して慌てず、その場で決断はしないこと。ひと晩考えて冷静になれば引っかからないで済むことも多い。必ず他のリフォーム事業者にも相談し、相見積もりを取り、複数の専門家の意見を聞いて判断をすることが被害を防ぐ大事なポイントになる。

「住まいるダイヤル」に寄せられた訪問販売に関するトラブル相談でも、その多くは契約に関することで、半数以上が契約解消を希望しているなど、被害を防ぐにはまずは契約を思いとどまることが肝心となる。

電話相談における訪問販売に関する相談内容では「契約に関するトラブル」が最も多く、半数以上が契約解消を希望している(住宅相談統計年報2022/(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター)
https://www.chord.or.jp/
電話相談における訪問販売に関する相談内容では「契約に関するトラブル」が最も多く、半数以上が契約解消を希望している(住宅相談統計年報2022/(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター) https://www.chord.or.jp/

自身でわが家の状況を把握しておくことも必要だ。知らないからこそ不安になる。

そのためにも10年程度おきに信頼できる工務店やリフォーム会社に家の定期点検をしてもらっておくといいだろう。

いつごろメンテナンスをしたのか、次にリフォームが必要となるのはいつごろか、わが家の耐震や省エネ性能はどの程度かを知っていれば、この家は危ないなどと言われても、自信を持って撃退できる。何かあったときにも相談がしやすいので、慌てないで済むことだろう。

リフォームの高度化でトラブル範囲や内容が複雑に

リフォームが高度化したことでトラブルも複雑化。訪問販売だけでなく契約書や工事品質やプランの是非に関するトラブルも増えているリフォームが高度化したことでトラブルも複雑化。訪問販売だけでなく契約書や工事品質やプランの是非に関するトラブルも増えている

このような訪問販売や強引なセールスによるリフォームトラブルは、何十年も前から存在したものである。最近はこういったものに加えて、リフォームが高度化したことでトラブル範囲や内容が複雑化している。

国民生活センターでは、既に10年ほど前に「トラブルは悪質な訪販リフォームだけじゃない!」として、見積もりや契約書面、工事内容に関する相談が増加していると警告をしている。

昨今、「住まいるダイヤル」に寄せられている相談事例には、「中古マンション購入リフォームで保証についての記載がないので不安がある」「見積書と図面もない状態で工事契約を結んでも問題はないか」「マンションの間取り変更で排水勾配が不足し詰まりの不安がある」といったような、見積もりの詳細や施工技術、プランの是非に関するものも多く見られる。

こういった高度な内容にも相談に乗ってくれるのが、先ほどから何度も登場している住宅専門の相談窓口「住まいるダイヤル」だ。

被害にあう前や見積もりの相談も可能、「住まいるダイヤル」の利用方法

リフォームのトラブルに巻き込まれたとき、不安に感じたとき、気軽に相談できる相手が欲しいと思う人も多いことだろう。

「住まいるダイヤル」は、国土交通大臣から指定を受けた(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターによる住宅専門の相談窓口で、経験豊富な一級建築士が相談に応じてくれる。

電話相談においては年間3万件以上、2022年3月末で累積相談受付件数は42万件を超える実績を持つ機関である。

経験豊富な一級建築士が相談に乗ってくれる「住まいるダイヤル」は、国土交通大臣から指定を受けた(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターによる住宅専門の相談窓口だ経験豊富な一級建築士が相談に乗ってくれる「住まいるダイヤル」は、国土交通大臣から指定を受けた(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターによる住宅専門の相談窓口だ

「住まいるダイヤル」の基本のサービスは電話相談となる。消費者も事業者もどちらの立場の人でも相談ができ、「公正中立」を是としている。

見積もりが適正かどうか不安がある場合は、無料の見積もりチェックサービスもある。これから住宅のリフォーム工事の契約を予定している消費者が契約前の見積書等を送ることで、内容をチェックしてもらえる。

これらはすべて電話相談からスタートする。受付の詳細はこちらにあるので事前に確認をしておこう。
⇒住まいるダイヤル 相談サービスのご案内
https://www.chord.or.jp/consult/index.html

「住まいるダイヤル」では電話相談の先に、弁護士や建築士との面談による「専門家相談」や、住宅紛争審査会が裁判外の紛争処理手続き(あっせん・調停・仲裁)を行ってくれる「紛争処理」も準備されている。ただしリフォーム瑕疵保険に加入しているなどの利用条件がある。

費用は「専門家相談」は相談時間1時間で原則無料、「紛争処理」は申請手数料1万円(消費税非課税)のみである(※ただし、2022年9月30日以前に保険申込みがされた2号保険付き住宅に係る申請手数料の額は、1万4,000円)。
こちらも詳細は「住まいるダイヤル」のWebサイトで確認をしていただければと思う。

リフォームでの被害やトラブルを事前に防ぐためにも、不安を感じたら電話相談で状況を説明、相談に乗ってもらうところから始めるといいだろう。

トラブルを回避するためには、まずは知らない人の甘言に乗らないこと。何か言われても慌てないこと。複数の意見を聞くことが大切だ。1社だけでなく2~3社から意見を聞き、見積もりをとって比較してみよう。打合せ時の記録をしっかり残しておくことも大切だ。

もし不安を感じたり、不要なリフォームを契約したりしてしまったら1人で悩まず、こういった相談窓口を上手に利用しながら慎重に進めていただければと思う。

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