冬場に特に注意したいヒートショック

寒い季節になると話題になるのがヒートショック。社会問題のひとつともなっている。
ヒートショックとは、暖かい部屋と寒い部屋との温度差によって血圧が乱高下し、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす危険のこと。家の中において、ヒートショックが要因のひとつで入浴中に亡くなられる方は、交通事故死亡者数よりも多いというデータもある。

このヒートショックのリスクを軽減するためには、浴室や脱衣所、廊下やトイレなど、寒くなりがちな空間を十分に断熱し、リビングなどの暖かい部屋との温度差を少なくすることがポイントだ。

住まいの「高断熱化」が重要なポイント

住まい全体の暖かさを確保するためには、熱の出入りを最小限に抑えることが基本。住宅において熱の出入りが最も多いのが窓などの開口部だ。冬場、暖房をしていても、約6割の熱が開口部から逃げていってしまうというデータもある。また、外壁や床などからも熱は流失する。暖かい家とするためには、窓や外壁、屋根や床をしっかり断熱することが重要なのは言うまでもない。

環境に適した断熱がなされた住まいは、暖房効率も高まり、朝の冷え込みや足元のヒンヤリ感を軽減することも可能。部屋の上下温度差なども解消され、健康で快適な室内空間を実現できるとともに、省エネルギーにも貢献できる。

古い窓を新しい窓に取り替えて見た目も機能もリフレッシュ。ガタガタしていた窓の開閉もスムーズに。大掛かりな工事が必要ないので、約半日~1日で窓リフォーム完了。取替窓[リプラス] 古い窓を新しい窓に取り替えて見た目も機能もリフレッシュ。ガタガタしていた窓の開閉もスムーズに。大掛かりな工事が必要ないので、約半日~1日で窓リフォーム完了。取替窓[リプラス] 

断熱性能が血圧・心拍・皮膚温に及ぼす影響とは

断熱性能が高い暖かい住まいは快適さを感じることができるが、具体的に住まいの断熱は、どのような身体への影響があるのだろうか。LIXILでは、慶應義塾大学伊香賀研究室と共同で、「住宅の断熱性能が血圧・心拍・皮膚温に及ぼす影響に関する被験者実験」を2020年2月より実施している。

寒冷環境下では、深部体温を保とうとするため、血管を収縮し、血液量を減少させて、深部に戻る冷たくなった血液量を減らす。特に四肢では放熱の調節を行うため、寒冷曝露の影響を受けやすく血管収縮が進行するという。これにより血圧が急上昇し、さらに血圧上昇を抑えようと心拍数が低下する事で、ヒートショックなど循環器疾患(脳梗塞・くも膜下出血・心筋症等)発症のリスクが高まるとか。

(上) 「住まいStudio」 (下)「住まいStudio」3つの部屋における断熱性能比較
   UA(外皮平均熱還流率)値による比較

(上) 「住まいStudio」 (下)「住まいStudio」3つの部屋における断熱性能比較 UA(外皮平均熱還流率)値による比較

今回の実験では、寒冷環境への短時間の曝露が皮膚温や血圧、心拍に及ぼす影響を検討するため、LIXILショールーム内「住まいStudio」を活用。断熱性能の異なる3つの部屋、「昔の家(省エネルギー基準:昭和55年基準)」、「今の家(省エネルギー基準:平成28年基準)」、「これからの家(HEAT 20 G2)」を用いて、40~60代男性3名(2020年3月時点)を対象に被験者実験を実施。実験前に控室で心拍計、皮膚温計の装着、血圧測定を行い、安静時間を設けた後、断熱性能の異なる各部屋に50分間入室し、居間、廊下及びトイレにて血圧測定が行われた。

これらの実験からは、住宅の断熱性能の違いが、血圧、心拍数、皮膚温に影響を及ぼし、前記に説明した身体メカニズムの通りという結果が得られたという。今後は、サンプル数の拡充や測定項目の追加を行い、さらに研究を進めていく予定という。

(上) 「住まいStudio」 (下)「住まいStudio」3つの部屋における断熱性能比較
   UA(外皮平均熱還流率)値による比較

(上)各家のサーモ写真 (中)各家の上下温度差 各家の部屋間温度差 (下)皮膚温(足の甲、血圧(収縮期)、心拍数

高断熱化は医療費や光熱費の削減にも

また、以前よりも断熱性能の高い住宅に転居した居住者450人を対象に、健康効果の経済価値換算を試行的に実施している。

「暖かさ・涼しさ」の改善による健康症状への影響は、「心疾患」「脳血管疾患」などの循環器疾患の抑制だけでなく、「アレルギー性鼻炎」「アトピー性皮膚炎」の緩和、睡眠の質の向上などにもつながるという。諸条件によって異なるが、断熱性能の優れた住宅に暮らすことにより、これらの疾病改善に伴う医療費削減だけでなく所得損失を回避することも可能だ。もちろん、住宅を高断熱化することは、冷暖房や給湯温度などにも関わり、光熱費の削減効果が期待できる。

快適な暮らしを実現するためリフォームも

快適さはもちろん、健康面でも光熱費削減の面でも住宅の高断熱化は重要なポイントということが実験を通して改めて理解することができる。

生活のスタイルが変わり、家で過ごす時間が長くなることで、今まで気がつかなかった不満や不具合が表面化し、リフォームを検討する方も増えていると聞く。最近では、リフォームに適したさまざまな商品も充実し、プランニングしやすくなってきている。

たとえば、断熱性を左右する開口部である窓のリフォーム。マンションだけでなく一戸建てでも内窓は注目されている建材のひとつだ。内窓を設置することで「空気層」により断熱効果や防音効果が高まることがメリット。また、古い窓からの取り替えが簡単なリフォーム向けの窓サッシ商品もみられる。玄関ドアの断熱性能も高まっており、窓サッシと同様に短時間で取り替えることが可能な商品も揃っている。

樹脂の熱伝導率はアルミに比べて約1/1000。外気の温度に左右されにくく、断熱効果、防露効果を発揮。工事は最短1時間で完了。樹脂製内窓 [インプラス] 樹脂の熱伝導率はアルミに比べて約1/1000。外気の温度に左右されにくく、断熱効果、防露効果を発揮。工事は最短1時間で完了。樹脂製内窓 [インプラス] 

その他、リフォームのきっかけとなるケースも多い浴室では、システムバスを取り入れることで浴室内の保温性能は高まる。床・壁・天井の保温材だけでなく、保温浴槽も一般的になってきており、居心地と省エネルギーを実現できるだろう。

建材や機器だけでなく、住まい全体の断熱性を高めることに特化したリフォーム商品の提案もみられる。住みながらでも家一棟まるごと改修できるもので、既存住宅の外側に、高性能な付加断熱パネルと金属サイディングを取り付け、断熱性能と外観の美しさを両立しているものなどがある。

家での時間をより快適とするためにも、断熱性能は重要だ。寒さを感じるこの時季、間取りや空間のつくりだけでなく、性能に関しても見直してみてはいかがだろうか。

取材協力:LIXIL

樹脂の熱伝導率はアルミに比べて約1/1000。外気の温度に左右されにくく、断熱効果、防露効果を発揮。工事は最短1時間で完了。樹脂製内窓 [インプラス] 保温材入りのシステムバスルームで、浴室の温度環境を改善。システムバスルームにリフォームすることで、壁の中に断熱材を入れることができるので浴室の冷え込みも軽減。システムバスルーム[スパージュ]

公開日: