入浴中の事故死数は推計で年間1万9,000人

1年で最も気温が低くなる1月を迎えた。寒い日こそ、風呂にゆっくりと浸かって体を温めたいと思う人も多いだろう。入浴は体を清潔にするだけではなく、リラックスや疲れをとる効果もあるが、12月から2月の冬時期は特に注意が必要だ。

厚生労働省の人口動態統計によれば、2014年の自宅の浴槽での溺死者数は4,866人と、10年間で7割増加したという。そのうちの9割が65歳以上の高齢者であり、75歳以上は3,533人と7割を占める。「東京都23区における入浴中の事故死」によれば、事故が増えるのは12月から2月の冬。最も少ないのが8月の30人、最も多いのが1月の206人であることから、寒い脱衣所などと風呂との間の気温差によるヒートショックの影響を受けていると思われる。
なお、厚生労働省の調査によれば、救急車で運ばれた患者数から推計した入浴中の事故死の数は年間約1万9,000人とされている。(死因が溺水以外の疾病等と判断されたものを含む)2015年の交通事故での死亡者数が4,117人であるから、4倍以上の人が入浴中の事故により死亡していることになる。

東京都福祉保健局東京都監察医務院「東京都23 区における入浴中の事故死の推移より過去10年間(平成16 年~平成25 年) の月当たりの平均件数」より作成東京都福祉保健局東京都監察医務院「東京都23 区における入浴中の事故死の推移より過去10年間(平成16 年~平成25 年) の月当たりの平均件数」より作成

ヒートショックの詳細を理解していない人が4割

ヒートショックは、急激な温度差によって体に起こる影響のことで、血圧変動により脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす可能性がある。このヒートショックという言葉の認知率だが、リンナイの『「入浴習慣」と「入浴時のヒートショック」に関する意識調査』によれば、「ヒートショック」という言葉を聞いたことがある人は70%と、おおむねの人が名称は知っているようである。だが、ヒートショックの症状など、詳細について尋ねると、全てを理解できていない人が4割いるという結果となった。例えば、「急激な温度差がもたらす体への悪影響のことである」の認知率は96.6%に対し、「持病がなく、普段は元気な人にも起こる」は73.7%と、ヒートショックは高齢者や持病のある人などに発生するものだと認識している人がいるようである。
ヒートショックに繋がる可能性が高い飲酒後の入浴をしたことがある人は57%おり、特に多かったのが50代で18.3%、20代で17.8%であった。ヒートショックもそうだが、飲酒後の入浴は転倒の可能性もあり危険である。高齢者だけでなく、若年層も十分注意したい。

なお、冬の浴室環境が「寒い」、「やや寒い」と回答した人は69%おり、エリア別に見ると、意外にも寒いと答えた人の割合が北海道で66%と平均よりも低く、九州地方では75%と最も多かった。自宅の脱衣室に暖房設備を設置している人が北海道では32%と全国でも割合が多かったことから、寒いことを前提にしっかりと対処をしている人が多いことが窺える。

リンナイ 「入浴習慣」と「入浴時のヒートショック」に関する意識調査」より作成リンナイ 「入浴習慣」と「入浴時のヒートショック」に関する意識調査」より作成

高齢者の住宅の状況は?

では、高齢者の住宅や入浴環境はどうなっているのだろうか。
東京ガス都市生活研究所の「入浴とヒートショック~シニアの入浴環境の実態と意識~」によれば、入浴事故数の多い傾向にある70代は、築20年以上の戸建住宅居住が53.4%、築20年以上の集合住宅居住が20.4%であり、合せると7割以上が築20年以上の物件に住んでいるようである。
住宅設備については、戸建住宅・集合住宅ともに築年数が浅いほど浴室や脱衣室に暖房器具が設置されていると答えた人の割合が高かった。築10年未満では約7割が設置、築20年以上の住宅では約8割が設置されていない状況である。
この状況から、ヒートショックの影響を受けやすい高齢者は築年数の経過した住宅に居住している割合が多く、寒い環境で入浴をしている可能性が高いと推測される。

なお、脱衣室の暖房については、築年数による大きな差は見られず全体の75.8%が設置されていなかった。築年数が新しい物件でも、脱衣室の暖房設置はまだ進められていない状況にあるようだ。

東京ガス都市生活研究所「入浴とヒートショック~シニアの入浴環境の実態と意識~」より作成東京ガス都市生活研究所「入浴とヒートショック~シニアの入浴環境の実態と意識~」より作成

入浴中の事故を防ぐために

シャワーを浴びたりかけ湯をしてからお湯に浸かるようにすると、温度変化に適応しやすくなる。頭や肩からではなく、足下などからじょじょに温めようシャワーを浴びたりかけ湯をしてからお湯に浸かるようにすると、温度変化に適応しやすくなる。頭や肩からではなく、足下などからじょじょに温めよう

浴室のリフォームや暖房設備の追加など、根本的な対策で温度差を少なくすることは有効であるが、今すぐやるとなると難しい。まずは、今日からできる習慣を変えて入浴中の事故を防止したい。消防庁の「入浴事故の原因と入浴する際の注意事項」を見てみよう。

【1】入浴前に脱衣所や浴室を暖める
脱衣所に暖房器具を置き暖めておく。浴槽にお湯を入れる時にシャワーで給湯すると、蒸気により浴室の温度が上昇する。また、沸かし湯の場合は、お湯が沸いた後に十分にかき混ぜたり、蓋を外したりして蒸気を立てるとよい。

【2】湯温は41度以下、湯に漬かる時間は10分までを目安に
冬は冷えた体を早く温めたいと、熱いお湯に浸かりたくなるが、温度は41度以下が推奨されている。お湯に浸かる時間は10分までを目安にする。半身浴でも長時間の入浴は体温が上昇する可能性があるので、入浴時間にも気をつけたい。

【3】浴槽から急に立ち上がらない
浴槽から出るとき、体には負担がかかっている。体への水圧が無くなり、圧迫されていた血管が拡張。脳へ届く血液が減り貧血状態に陥り、一過性の意識障害が発生することがある。浴槽内に倒れてしまい、溺れる危険もあるので、手すりを利用してゆっくり立ち上がるようにする。

【4】アルコールが抜けるまで、また、食後すぐの入浴は控える
入浴中の事故死の一部で、アルコールの検出が認められたことが報告されている。事故発生に影響があることも考えられるので、飲酒後はアルコールが抜けるまで入浴を控えたい。また高齢者は食後に血圧が下がりすぎる食後低血圧により失神することもあるので、食後すぐも避けよう。深夜早朝は気温の低下もあるが、同居している人が気づきにくくなる可能性もあるので、控えたい。

【5】入浴する前に同居者に一声かける
同居している人がいる場合は、入浴前に声をかける。同居者は高齢者の入浴中は、こまめに様子を見に行くとよいだろう。銭湯などを利用すれば体調不良の際も発見が早いので、公衆浴場を利用するという方法もある。

消費者庁のレポートには、調査結果に加えて、「入浴者の異常を発見した場合の対処法」も記載されている。毎日安全に入浴できるよう、注意事項に当てはまるものがあった人は、入浴習慣を見直そう。消費者庁のレポートは「配信元ページを見る」より参照してほしい。

■リンナイ株式会社による『 【熱と暮らし通信】 「入浴習慣」と「入浴時のヒートショック」に関する意識調査』
http://www.rinnai.co.jp/releases/2016/1026/

■東京ガスによる都市生活レポート「入浴とヒートショック~シニアの入浴環境の実態と意識~」
http://www.tokyo-gas.co.jp/Press/20151030-03.html

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2017年 01月18日 11時06分