港として埋め立てられ、整備された天保山や築港地区

天保山や築港地区は、江戸時代末期から大正時代にかけて埋め立てられ、整備された地域。天保山は水族館や遊覧船、観覧車などもあり、家族連れやカップルはもちろん、海外からの観光客も人気のスポットだ。
築港地区は明治時代から昭和初期にかけて栄えた港。株式会社住友倉庫が倉庫群を整備し、大正12年には、その第一号施設となる赤レンガ倉庫が建造された。太平洋戦争で一部炎上する被害を受けただけでなく、昭和20年の枕崎台風や昭和25年のジェーン台風による浸水で一部が埋没しながらも、戦後の高度成長を支えてきた倉庫だ。
しかし、昭和40年代には海上コンテナによる物流が主体となり、南港エリアに配送拠点が移ると、築港エリアはさびれていく。
平成11年に株式会社住友倉庫が築港地区から撤退した後、赤レンガ倉庫は大阪市に委譲された。北側の旧200倉庫と、南側の旧300倉庫の二棟が残っており、旧200倉庫は延床面積4,500平方メートル、旧300倉庫は延床面積2,800平方メートル。大阪に現存する赤レンガ建築物は数多くなく、貴重な資料だ。

そして平成27年6月13日、クラシックカーミュージアムとしてよみがえったというので、運営会社であるジーライオン・ミュージアムに話を聞いてきた。

築港地区に残る赤レンガ倉庫は1923年に住友倉庫により建造されたものだ築港地区に残る赤レンガ倉庫は1923年に住友倉庫により建造されたものだ

往時の面影を極力残した耐震補強

自動車整備工場から出発したジーライオン・グループは、自動車だけでなく、持ち主の自動車への愛着をも見つめてきたから、古くから大切にされてきたものに惹かれる風土があるようだ。10年以上前、社内旅行で湯布院へ行った際、古民家にクラシックカーが停められているのを見かけた代表は、「こんな雰囲気のミュージアムをしたい」という思いを温め続けてきたという。だから、数年前に大阪の赤レンガ倉庫が貸し出されていることを知ってからは、スピード展開だったとか。

往時は赤レンガ倉庫の近くまで海が迫り、次々と船から荷物が揚げられていたそうで、倉庫に挟まれたメインストリートの線路上を、汽車に載ったパレットが行き来していたとか。倉庫は二階立てで、壁に残る白い線は、二階床の名残り。二階部分にある鉄扉は、外から直接荷物を出し入れするための出入り口だ。パレットで壁を傷つけないように設置されていた、木の緩衝材も残っており、外壁には荷物を釣り上げるクレーンを見ることもできる。
「強度を確保するため、鉄の梁を数多く入れていますが、内部も当時のままの様子を残しており、赤煉瓦の壁を楽しめます。また、ひびの入ったレンガも入れ替えず、コンクリートパテで補強しています」と、往時の面影を極力残す努力がなされているのだ。

両側に倉庫が立ち並ぶメインストリート(左上)、うっすら残る白い線は二階の床があった場所で鉄扉から荷物を搬入・搬出していた(左下)、荷物を吊り下げたユニックも往時の姿で見ることができる(右上)、荷物を入れたパレットを傷つけないよう、壁に木の緩衝材が設置されていた(右下)両側に倉庫が立ち並ぶメインストリート(左上)、うっすら残る白い線は二階の床があった場所で鉄扉から荷物を搬入・搬出していた(左下)、荷物を吊り下げたユニックも往時の姿で見ることができる(右上)、荷物を入れたパレットを傷つけないよう、壁に木の緩衝材が設置されていた(右下)

クラシックカーと赤レンガ倉庫の共通項

プリンセスマリナ公が公務に使ったロールスロイスのシルバーレイスも展示されているプリンセスマリナ公が公務に使ったロールスロイスのシルバーレイスも展示されている

現在はジーライオン・ミュージアムとなり、ヨーロッパ、アメリカ、日本と世界のクラシックカーがそろっている。
自動車の発祥はヨーロッパで、日本が力を入れ始めたのは昭和になってから。しかし当時はまだ、イギリスやアメリカの車を模倣するのが精一杯だった。しかし昭和40年代ごろから、故障の少なさで、日本車が評価されるようになってくる。ミュージアムの展示は、まだ粗削りな草創期の自動車から、富裕層の乗り物であった時代のもの、大衆に普及し始めた時代のもの、日本の旧車といったように、テーマ別に展示されているので、自動車作りの歴史が理解できるのがうれしい。
エディンバラ公のいとこにあたる、プリンセスマリナが公務に使ったシルバーレイスも展示されており、結婚式へのレンタルもしているという。

クラシックカーはただ見るだけでなく、すべて整備されており、一日に2~3回開催されるガイドツアーに参加すれば、乗って写真も撮影できる。さらにクイズに勝ち抜けば、助手席に乗車してメインストリートをドライブできるのだとか。
また、併設されたショールームではクラシックカーの販売もしており、約300台がここから旅立っている。
「赤レンガ倉庫もクラシックカーも、長く使うほど価値が増していきます。その価値をお客様からお客様へと継承していきたい。また、若いころに憧れていた車を、年を経てやっと買えるようになった年配のお客様が、『おじいちゃんが若いころはこの車がみんなの憧れの的だった』とお孫さんに昔話をするなど、家族で思い出を共有できる場所にしたいと考えています」
クラッシクカーの資料もそろっており、ドライビングシミュレーターもあるから、自動車好きなら、何時間でも過ごせそうだ。

家族が楽しめるイベントも企画中

ショールームは、明治から大正ごろの衣装ででダンスを楽しむオールドファッションパーティなど、パーティやコンサート会場として使用されることもある。また、メインストリートでファッションショーが開催されたりして、ノスタルジックな景色は多くの人に楽しまれているようだ。
また、毎月第三日曜日に開催されるモーニング・クルーズは、オープン当初から続けている。朝8時にクラシックカーオーナーが集まって、ツアーリングをするのだが、徐々に認知度があがり、見物にくるファンもいるそうだ。

地域住人との連携も大切にしている。
「天保山まつりでは、中学生ブラスバンド隊を海遊館からクラッシクカーで先導し、ショールームで演奏を開催しました。また、地元の祭りでは、お神輿の給水ポイントを置いたり、スタンプラリーのスタンプを設置したりと、今後も地域の住人に還元できるイベントを考えていきたいです」
さらに、車が好きな男性だけでなく、家族全員で楽しめるような工夫も考えている。たとえば、子供向けの無料のガイドツアーや自動車のペーパークラフト体験、女性向けのパッチワークのワークショップなどだ。また、赤レンガ倉庫やクラシックカーが現役だった当時の衣装をレンタルできるようにし、写真撮影会を開くアイデアもあるそうだ。

現在赤レンガ倉庫の敷地内には、ミュージアムとショールームのほか、予約制のステーキハウスやカフェもあるから、古い建物やクラシックカーが好きな人は、家族で訪れてみてはいかがだろう。

ショールームでは、懐かしい衣装でダンスを楽しむオールドファッションパーティも開催されたショールームでは、懐かしい衣装でダンスを楽しむオールドファッションパーティも開催された

2017年 05月14日 11時00分